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194 どんどん行くわよ

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《剣王アイリス嬢の視点》



「剣王様。敵が、敵が攻めてきました」


 一人の兵士が叫びながら慌ただしく塹壕に飛び込んできた。


 わたくしはその兵士に礼を言い、落ち着くようにいってから塹壕から出た。


「ほう。随分と派手に攻めてきた」


 わたくしは、直ぐに遠見のスキルを発動し敵軍をざっと見回した。その数は数万は下らないだろう。


 数は大したものだ。内容も悪くはない。達人級、豪級の猛者も多数いるようだ。しかし


 暗殺王サスティナ様の報告で既に知っていたが、本当の主力である大魔王以下の王級はおらず、聖級が数人いる程度だ。しかも聖級と言っても仲間たちの聖級達とは雲泥の実力で、ギリギリ聖級になったばかりのまだまだ未熟な聖級に過ぎないようだ。


 よくもこんなので戦いに来たものだ。


 聖級の戦士は一人一万人と数えるが、この聖級達はあまりにもお粗末だと思う。


 わたくしが剣聖になったばかりでも彼らには負けないだろう。


(六大塔の聖級魔導師には天賦の才能だけで聖級の称号を得た人達が多い)


 こちらには王級のわたくし。それに王級一歩手前まで実力を上げた槍聖シュレディ卿もいる。


 これではあまりなも楽勝か。


 敵の軍は、六つの軍に分かれていた。恐らく六大塔の軍勢の連合軍だ。それぞれの塔の特色が現れている。


 敵のトップが六人の大魔王と呼ばれるだけあり、軍勢のほとんどは魔法生物のようだ。


 しかし少し期待はずれのようだ。面白そうな敵はいない。雑魚ばかりで、これではダンジョンの方がよほど面白いだろう。


 いやいや。これは公子様の趣味に影響され過ぎだな。反省。相手は魔物ではない。少なくとも亜人、人である。


 修行ではないと気を引き締めないと。


「剣王アイリス嬢。サスティナ嬢の報告の通りですね。数は多いようですが雑魚ばかりですね」


 槍聖シュレディ卿も少し残念そうに言った。


 ふふふ。シュレディ卿も公子様に影響を受けているな。


「槍聖の仰るとおりですね」


「あれでは戦いにもなりませんね」


 槍聖シュレディは、相手の微妙な戦力に呆れているようだ。


「私も同行させてもらっても良いですか?」


 拳聖レオン殿下がわたくし達の話に割って入った。殿下はとにかく戦えることを喜んでいるようだ。


「や。拳聖レオン殿下は、範囲攻撃が不得意ですよね。ここは範囲攻撃が得意な私に任せてください」


 剣聖イールドがさらに割って入った。やる気満々だ。


「敵はあれだけいるんです。皆で行って思う存分暴れましょう」


 わたくしも腕まくりをしつつ言った。


「皆さん全員が行かれたらここの守りが」


 前線の司令官がオロオロしつつ言った。


「大丈夫。魔王がせめてきても多分我々で何とかできるから」


 わたくしは司令官にそう言うとにっこり笑って走り始めた。


「みな。付いてきて」


「「「はい」」」


 三人の心強い声が耳に心地よい。


 この三人も強くなったものだ。この人たちもわたくしと同様に公子様の絶え間ぬ修行の姿に感化されたもの達なのだ。皆、血を吐くような努力を惜しまない。


 そうしなければ、ひたむきに修行し続ける公子様に見捨てられると思っているのだ。


 わたくしはこんな戦場であるにもかかわらず、皆の頼もしい顔を順番に思い浮かべながら感慨に浸った。


 一人一人が押しも押されもせぬ実力を付けた。本物の強豪となった。彼らは学園に来た当初は、才能だけに頼って努力が全然のお坊ちゃん達だった。


 そんな彼らにも、公子様は優しく尊敬の念を持って接し、普段は努力する背中を見せ、時には叱咤激励され、時には鬼の教官となって彼らを育てた。そして遂にはこれほどの実力者に育てあげられたのだ。


 いやいやわたくしこそ最も手のかかる問題児だった。それをここまでにして頂いたのだ。


 あのダンジョンの攻略の日々は苦しくもあったがわたくしの人生の宝物のような日々だ。神のように美しい公子様とずっと一緒だったのだから。


 さて、戦場に意識を集中するわよ。


「槍聖シュレディ卿は左の二軍を相手にしてください。剣聖イールド卿、あなたはあちらの軍を、拳聖レオン殿下はわたくしと」


 走りながら指示を出した。


 この四人は物理攻撃特化の戦闘集団だが、彼らほどの実力者の聖級にもなると超長距離大範囲攻撃が可能となるので、もし部隊に組み込むなら遠距離攻撃の部隊に所属することになるだろう。


 前衛系の戦士は、魔導師と比べると遠距離範囲攻撃の種類が少なく属性攻撃ができないなどのデメリットはある。


 しかし魔力消費が圧倒的に少なく速射力がある。更には防御力、耐久力も圧倒的に高いなど有利な面をたくさん持っている。


 これほどの実力を持つ王級聖級の戦力など贅沢極まりないのだ。


 普通の戦術家なら四人はバラバラにして、別の拠点の防衛を任せるはずだが、賢王リビエラ様の考えは違うようだ。


 最前線に一番の戦力を集中させる。それが賢王様の作戦だ。


 とにかく、わたくしは暴れ回れればそれでいいのだが。


 結構敵の近くまできた。そろそろ良いだろう。


 わたくしは、剣を鞘から抜くと同時に超範囲、超連続攻撃『大爆連斬』を放った。


 一振りで何百もの爆発を広範囲にばら撒く攻撃で、理不尽にもほどがある王級剣士の奥義の一つだ。


「剣王アイリス嬢。こんな距離から攻撃を当てるなんてさすがですね」


 拳聖レオン殿下が興奮したように言った。彼は強い者が何よりも大好きなのだ。


「殿下も無理されず。わたくしはあちらの二軍を攻撃します。殿下はあちらを攻撃してください」


「承知した。検討を祈る」


 拳聖レオン殿下は獣人特有の身体能力の高さを示し、わたくしの走る速度にも負けない速度でわたくしと距離を取った。


 暫くして拳聖レオン殿下の遠距離範囲攻撃『絶断砲』が繰り出された。


 拳聖の攻撃は敵に大きな損害を与えたようだ。


 どんどんいくわよ。

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