192 モーフ様
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《賢王リビエラストの視点》
「え? 公子様が消えた? そもそも公子様はなんでそんな方向に行かれたの?」
わたくしは報告に来た武聖スギルガ・ヘッジス陸軍大臣に尋ねた。
「それが、火聖リージィー公女様によると突然気配が掻き消えるように無くなったそうなのです」
武聖スギルガ・ヘッジスも腑に落ちないようで首を左右に振っていた。
☆
「火聖リージィー公女様。公子様がまた行方不明に?」
わたくしの質問に、火聖リージィー公女様が頷いた。
「そうなのです。いつものこととはいえ、今回わたくしはずっと空から公子様を追っていたのですから、見逃すはずがないのです。ところが公子様はあるところで突然消えてしまったのです」
「では、何かと戦っていたとかではないのですね?」
わたくしはほっと胸を撫で下ろして言った。
「はい。突然消えたのです」
それは謎だ。確かめるためにその場所に行かなければならないだろう。
「では、そこに皆を連れて行ってください」
「大丈夫です。消えた場所に目印をつけてきましたから」
☆
なるほど、目印だ。
黒い大きな目印
「燃やしたのですか?」
わたくしの質問に火聖リージィー公女様は、顔を俯かせて
「すみません。咄嗟のことでしたので、威力の調整ができず」
これは公子様の従者あるあるだ。
急激なレベルアップによる調整不良といったところだ。火炎魔法の威力が増したことに本人が付いていけてないのだ。
「リージィー様も恩恵が?」
恐らく火神イーディン様の恩恵が上がったのだろう。
「はい。火神様の恩恵が3に」
これもレリトニール公子様の従者あるあるだ。
わたくしも魔法神カーラー様から恩恵3を授かっている。公子様をお助けする者には不思議なことに何故か手厚い神々の恩恵が授けられるのだ。
剣王は、守護者ガーディーサマルウンツ様を倒して剣神ユーリプス様の恩恵が4になったと言う。
もしかしたら公子様が冗談のようにアルテミス神様の恩恵が5だと言っていたのが本当なのではと思う出来事だった。
(恩恵10です)
それはともかく
わたくしたちは、火聖リージィー公女様がお付けになった目印に降り立った。
これも騎龍があってこその移動だ。この移動速度に匹敵する公子様の走力と言うのはもはや人間をやめている。
わたくしは、火聖リージィー公女様に公子様がどちらに進んでいたのかを聞き、そっちの方に歩いて行った。
こんな山奥の道なき道をよくも走れたものだ。
我々は四苦八苦しながら山奥に向かって進んだ。
「やあ。みんなどうしたの?」
公子様の声だ。
わたくしたちは、そこで地神ガイア様と出会ったのだった。
☆
「ガイア様ですよね。龍人の住む国の守護神として丸い黒色の毛並みの姿にて降臨すると伝説で語られています。黒い毛並みではなく白いのですね。ガイア様では無いのですか?」
わたくしは公子様の連れてらっしゃるガイア様に尋ねた。
「ん? 我はガイアなどと言う名前ではないのじゃ。それは誰か勝手に付けた名前なのじゃ。我はモーフと言う。このレリトニール公子様が我の名付けをしてくださったのじゃし。我は大地と共にある土地神だったが、レリトニール公子様のおかげで個体としての身体を得たので、こうして歩けるようになったのじゃし」
ガイア様、いや今はモーフ様に改まったのか、モーフ様はそのように言った。
どうやらこの形容し難い可愛らしい神様はたった今、ガイア様から分離し新たな神様になったと言う事なのだろうか? しかもその名付けを公子様が行われたらしい。
どうして公子様が名付けなどができるのかわたくしには不思議だった。でも公子様ですものね。
名付けをした相手は眷属みたいなものになると聞く。つまり公子様は神を眷属にしてしまったのだろうか?
それはともかくわたくしもモフモフさせて!
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