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189 馬鹿な奴ら

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《暗殺王エーメラルダ嬢の視点》


「大魔王ドジャーサス殿、剣聖タイヒル殿の事聞きましたぞ」


 発言したのは第一の塔の主、大魔王エグゼランスだ。三つの顔を一つの頭に乗せている。喋るのは真ん中の馬顔だ。高位の悪魔族だと言う。


 左の顔が美女。右の顔が醜い老婆だった。


「我ら魔導の徒の中にいて剣を学ぶ貴重なタイヒル殿。まさかトカゲの国との戦いで亡くなるとは」


 微妙に相手を貶める物言いが大魔王エグゼランスの性格の悪さを表している。


 言われた相手は第三の塔の主、ドジャーサスだった。どうやら第三の塔の側近である剣聖タイヒルが破れたらしい。誰が倒したか不明だが、恐らく我々の仲間の誰かだと直感で分かった。


「剣聖タイヒルは、この国には珍しい剣の使い手でしたが所詮剣士などたかが知れておったと言うことでしょうか」


 大魔王ドジャーサスは、大魔王エグゼランスの揶揄など意にも介していない風を装って事も無げに答えた。


 ドジャーサスは灰色の頭髪のダークエルフだった。相当なイケメンである。しかし我らのレリトニール公子様と比べたらガラスにしか見えない。


「おや。第三の塔は剣聖を失っても痛手ではないのか?」


 ドジャーサスの物言いに違和感を覚えたのか問い詰めるような雰囲気を出して尋ねたのは、第二の塔の主、大魔王ゼクスカリバーだった。彼はドワーフだ。


「大魔王ゼクスカリバー殿。剣聖タイヒルに良き剣を与えてくださっていたことには常々感謝しておりました。第四の塔は常に亡き剣聖の良き友でした」


 ダークエルフのドジャーサスが優雅に頭を下げて言った。なんとも心の底を掴めぬ男だ。仲間が亡くなった時ぐらい怒りを表すべきだろうに。嫌な奴。


「我が国では貴重な剣聖を失ったのは大きな痛手。我が魔剣を真に操るのは剣の名手であるからな」


 魔王ゼクスカリバーが吠えるように言った。


「大魔王ゼクスカリバー殿のそのお言葉にタイヒルもあの世で喜んでおるでしょう」


 大魔王ドジャーサスはどこまでも冷静だ。


「大魔王ゼクスカリバー殿。魔剣の実験は余に任せて頂いても良いのだぞ」


 二人の話に割って入ったのは第四の塔の主、いにしえの勇者ギュディーゲルだった。


「ふん。冗談を言うな。勇者に魔剣など似合わぬ」


 大魔王ゼクスカリバーは軽くいなした。お前には渡さないって気持ちが顔に表れている。


「大魔王ゼクスカリバー殿も大魔王デュキーゲル殿もお話中済まない。本日大魔王の皆に集まって頂いたのは他でもない、剣聖タイヒル殿がケーセシャリー帝国で亡くなったのも合わ、戦況が大きく変わったことを知らせ、今後の方針を話し合うためだ。

 ケーセシャリー帝国に派遣していた先遣隊の隊長が戻った。戦況を皆に知らせる必要があると判断した。

 ケセラーズ話せ」


 第一の塔大魔王エグゼランスが皆の話を遮って言った。彼に促されてわたくしが追跡してきてここまで来た男、ケセラーズと言うらしい。が立ち上がった。


「六大魔王陛下の御前を汚しますことお許しください。私はケセラーズ。第一の塔大魔王エグゼランス様の第三席将軍です。聖級魔導師の魔聖を頂戴しております。

 私は、飛大蛇六百の軍勢を率いる将軍ですが、何者かに壊滅されてしまいました。恐らくその張本人と思われる者と偶然接遇する機会を得たため遠距離から狙撃を試みましたが失敗し、一瞬で意識を刈り取られました。あれは相当な手練、いや化け物と申してもよろしいでしょう」


「ケセラーズよ。お主の話では六百もの飛大蛇をたった一人で倒したように聞こえるぞ。

 さすがにそれは不自然ではないか?」


 第六の塔大魔王スシャーザンが問いただした。


 何しろそんなことはさすがの大魔王でもかなり骨の折れる仕事だからだ。


「お前の報告は偏重が見られるぞ。もっと正確に説明して欲しいものだが」


 第四の塔ドジャーサスだ。


「大魔王スシャーザン陛下。大魔王ドジャーサス陛下。お疑いも最もですが、我が飛大蛇群が最初に攻撃されたのが午後14時13分。全滅したのが午後14時18分でした。私は全飛大蛇とリンクを結んでおりましたから間違いないと考えています。

 ほとんどの飛大蛇は、同時に瞬殺されたと考えております。

 これほどの大規模攻撃ですから複数の者による広域魔法攻撃ならかなりのタイムラグが発生していたはずです。

 残念ながら、このような攻撃ができるのは神々しか考えられません」


 しばしの沈黙が部屋を支配した。


「何を馬鹿な。神々のどなたかが介入されたとでも言いたいのか?」


「私は、私の意識を刈り取ったあの者は、下級神のどなたかではなかったかと」


「神々が我々の争いなどに興味を持つわけがない。お前は、子供が喧嘩しているのを面白おかしく見ることがあってもどちらかを本気で倒す気になどならないだろう?」


 第二の塔大魔王ゼクスカリバーが吠えた。


「もちろんです。たまたまお通りの時に私が道を遮ったとかそんなことではと思っております」


「すると、今回は不運であったと?」


「まて、その結論は。なぜなら剣聖タイヒルが敗れているからだ。それも神々の気まぐれだったと結論付けるのか?」


 そう、話を遮ったのは第一の塔エグゼランスだった。


「前線が停滞していたために送った剣聖ではないか。敗れるなど誰が考えた?

 何かが起ころうとしているのでは?」


「いや。剣聖タイヒルを敗る程度の奴はケーセシャリー帝国でもいるだろう。

 六百もの飛大蛇を敗れる奴などそうそういるものではない。なら二つを重ねて考察するなはおかしなことだと思わないか?」


 そう言ったのは剣聖を殺された第三の塔の主、ドジャーサスだった。


「考えすぎなのでは? それでももし不安なら我々が出張ってさっさとケーセシャリーの奴らを滅ぼせば良い」


 馬鹿な奴ら。そんな結論になったら後で痛い目にあうわよ。さて、わたくしはケーセシャリーに戻ってこの話を報告しないと。

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