019 嫌な予感
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《従者アイリス視点》
ようやく長く苦しい修行が終わる。
貴族は13歳で皆、貴族学園に入学し、5年後に卒業する。その時点で一人前とみなされる。
成人されるとレリトニール公子様は、公子様《プリンス》からラーオン子爵と成られ、テンシラーオン公爵様になられるまでは、ラーオン子爵様として領地に赴任される。身も心も捧げているわたくしはもちろん公子様の騎士として公子様のお側近くでお仕えるつもりだ。
成人しても正式な貴族の跡を継ぐまでは準貴族であるため、普通の貴族の子は、成人すると騎士爵などの下級貴族に就くのが一般的である中、さすがにテンシラーオン公爵家は別格である。
光の公子様は、光の子爵様に成られる。光の公子様とはまさにピッタリだったので、少し惜しいと思うのはわたくしのわがまま。そんな不敬は決して口にはできない。
たくさんの兄や姉がいる我が家の事を考えるとレルトニール公子様の価値がいかに高いかよくわかると言うものだ。
噂によるとレルトニール公子様は、功績を讃えられて公爵になるまでは正式な伯爵位が授けれるとの話なので恐らく成人後は、上級貴族として国政に参加されるはずだ。
三位参議などの階位を授かれるのではとの噂である。
功績とは、もちろん『嘆きの壁』の初踏破に始まり、魔物を狩り続けたおかげで随分と大人しいダンジョンになりつつあるところだ。
最近ではSランク冒険者が踏破することができる程度にまでダンジョンの難易度が下がり、スタンピード寸前と言われていた最も危険と言われていたダンジョンである。その功績は余りにも高い。
さらには『暗き魔物の森』までも踏破されると言う前代未聞の成果を上げられた。十年前の未曾有の大禍を引き起こした超危険な大森林である。どうやらレリトニール公子様は、自己のレベリングだなどと言われていたが、実際は危険なダンジョンを手懐けるおつもりだったに違いない。
これらの功績が重なっているのだ、なんらかの褒章があって然るべきである。
ところで、わたくしはとっくに成長限界に達していた。たったのレベル560だ。公子様には500を超えた事はお伝えしたが、恥ずかしくて黙っている。レルトニール公子様は、その後も順調にレベルアップを重ねられているご様子である。
公子様のレベルは伝説の勇者ですら霞むほどの高レベルになられているはずだ。恐らく800は軽く超えられているのではないかと推察している。
もはや公子様のステータスは、秘中の秘なのだろう。まともにレベルすら開示していただけないので、実際のレベルは不明だ。
ところで学園に入学する際に、能力測定器にて実力を測定される。この測定器は、古代のアーティファクトであり、あらゆる実力を総合勘案してとても分かりやすく実力を示してくれると言う。
とは言え、発表される能力は、貴族に対しては忖度により下駄を履かせて発表されるのが通例である。しかし公子様に限れば下駄など不要であろう。
もちろん貴族たるもの職天祭の後は入学試験までひたすらレベリングするのが義務であるが、平時の長く続いたこの世界において、必死にレベリングするのは流行りでは無い。
少なくとも公子様のように筆舌に尽くし難い修行をされる者は皆無である。
中級ダンジョンに二月も通えば相当な修行をしたと賞賛される。
レルトニール公子様のように、僅か12歳の子供がSランクダンジョンでS級超えの魔物を狩るなんて事は実際にこの目で見てきたわたくしですら未だに信じられないことだ。
最後の方など、聖剣で切ると返り血で汚れるのが嫌だとか理解不能な理由で、S級魔物の頭を千切って倒されていた姿は、シュール過ぎだった。
年齢的には、一昨年に入学すべきだったわたくしだが、レルトニール公子様の従者として晴れて一緒に入学する予定である。レルトニール公子様と一緒に学園生活を送れることに感謝なわけだけど、時に常識を逸脱されている公子様の言動に、ほんの少しだが、とても心配である。
何かしでかさ、、されてしまわれないか、、、あぁ、なんだか嫌な予感しかしない、、、、
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