179 過大評価だよ
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《レリトニール公子視点》
剣聖ノイツ君と風聖アドリュー君に一言。
「暗殺王エーメラルダ嬢は、今一人の魔族を尾行中なんだよ。
そんなところに二人がのこのこ近づいて行ったら尾行が台無しになると思うんだ。
二人はエーメラルダ嬢に気付かれないほど細心の注意を払ってエーメラルダ嬢を尾行したら良いんじゃないかなぁ。恐らくエーメラルダ嬢は、君たちが尾行していることに直ぐに気付くだろうし、エーメラルダ嬢の邪魔をしない為だとも分かるだろうからね。
エーメラルダ嬢との接触は彼女の方から接触してくるのを待つ方が良いかもね。でももしエーメラルダ嬢が危険に巻き込まれたら頼むね」
「「分かりました。命に変えて守ります」」
「ふふふ。命に変えなくても良いけど、エーメラルダ嬢を守れなかったらリビエラ嬢からどんな仕打ちがあるか、考えるのも怖いよねー」
俺がそう言うと二人は蒼白になってコクコクと何度も頭を上下に振った。
「じゃあ。あっちの方角だよ。二人が全速力で走ったら二時間足らずでエーメラルダ嬢に追いつくはずだよ。
いいかい? この気配を探していけばエーメラルダ嬢の位置は分かるはずだよ」
俺はエーメラルダ嬢が発している微かな気配を指先に発生させて、二人に感じさせるようにした。微かな気配が分かるだろうか?
「はい。分かりました」
剣聖ノイツが言った。
「さすがに剣聖だね。気配の察知能力はピカイチだね」
「いえいえ。こんなに離れているエーメラルダ嬢をずっと感知されている公子様に言われても実感が持てませんよ」
「それもそうだね。意外に僕は気配の察知が得意なのかな?」
「またご冗談を。公子様に不得意なことなどあるはずがないでしょう」
そう言うと、二人は笑いながらエーメラルダ嬢を追って去って行った。
俺に不得意がないだと? そんなことはない。レベルも上がらないしね。モブだし。
どうしてみんなこんなに俺を過大評価するのか疑問だ。
あ。
先頭を飛んでいた騎龍が俺の横に着陸? してきた。
旋回しながらゆっくり降りて来るので時間がかかるようだ。あまり角度をつけて降りてきたら背中の人達は落っこちてしまうのだろうな。
「レリトニール公子様。どうして私たちよりも先に降りておられるのです?」
キョトンとした顔で龍帝リリーシュが尋ねてきた。
何しろ先頭を飛んでいたのは彼女の騎龍だ。前しか見えないので俺が2回も地上に飛び降りたことを知らないのだろう。
「途中で降ろしてもらったんで先回りしていたんだよ」
俺がそう説明したが、まだキョトンとしている。
「龍帝陛下。公子様の為さることにいちいち反応していたら身が持ちませんよ」
龍帝と一緒に乗っていた始商王サスティナが言った。
あれ? なんかさっきも聞いたような言葉だけど?
「もしかしたら公子様は、世界一早いと言われる龍よりも早く移動できるのですか?」
目をキラキラさせながら龍帝リリーシュが尋ねた。
またまた、おかしなことを言っている。
「あんなに大勢背中に乗せて飛んでいるから速度が出せないのでしょう?」
「それには違いないですが、人を乗せていても龍の速度は尋常でないはずですが」
龍帝リリーシュが口の中で何か呟いていたが聞こえ無かった。
正直、期待外れだった騎龍の速度。馬よりも早いが俺が走った方がよほど早い。それか感想である。
ゲームでは龍が出てくるのは中盤以降で、乗り物扱いとしてだ。急にフィールが広がり1番楽しい時でもある。ワクワクするよね。
しかし、この世界の騎龍。遅い。
なんか小さく馬鹿になってきたとか、どこかの祟り神のセリフみたいなことを言っていたからドラゴンも神様から獣に成り下がってしまって飛ぶのもノロノロになってしまったのかもしれない。
残念だ。
(自分が人間を辞めるほどの能力になってしまっているだけなのに、気づいていないレリトニールでした)
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