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162 宙を舞う言葉

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《レリトニール公子視点》


「公子様。どうか政務を全うしてください」


「やだよ。僕はまだ学生なんだから好きにさせてよ。そんなに大事ならリールセラートなんていらないから返してよ」


「何を仰っておられるのです。公子様は、リールセラートの太公になられたんですからそんな無理が効くわけないでしょ!」


「じゃあ、今度は何?」


「はい。ディーガのメラーシア王女が即位して女王になられます。公子様も参加してくださいと招待状が届いておりますよ」


「メラーシア嬢におめでとうって手紙出しておいてよ。せっかくアルテミス様から限界突破のスキルを貰ったのに全然修行できないなんて僕に死ねって言ってるようなもんだよ」


「はあ。そんな冷たい言葉。メラーシア様はさぞ悲しまれるでしょうね」


「ああ! もう。そんなこと言って。メラーシアも女王なんてもんになったら会いにくくなるよね」


「はあ。もしそんなことをメラーシア様に聞かれたら彼女のことだから国を捨てて公子様のところに駆けつけてしまいますよ」


「俺は、学園生活がしたいの!」


「俺なんて下品な言葉をいつから使うようになられたのです!」


 はい。生まれたとき? いや生まれる前からだよ!


「それよりリビエラ嬢。あの行列は何?」


「ああ。あれは龍帝の行列ですよ」


「龍帝? なにそれかっこいいね」


「また、冗談ばかり。リールセラートの西南にあるケーセシャリー帝国の皇帝ではありませんか。親善のために公子様の就任祝いに来られたのですよ」


「なんでそんな偉い人がわざわざやってくるの?」


「それは公子様の名声を聞いて思うところがあるのか、何でも守護龍様が不調だとか噂ですね。それとも龍帝はお綺麗な女帝様だそうですから。何か考えがあるのではと」


「あ! またママ様の差し金か? もう嫁候補は増やさないからね。マリーシア女王も母上と仲が良いって聞いたよ。彼女はラッシートの女王様だよ。どうして僕のお嫁さんになるなんて話があるのか。おかしいだろ?」


「どこがですか? 公子様はテンシラーオン大公爵家の所領を継承されるのですし、メラーシア様と婚姻されたらディーガも併呑されるわけですよね。

 そして公子様はリールセラートの3分の2を領する大公となられたのですよ。それだけ公子様の功績が大きかったのです。

 公子様が将来確実に領する土地は全てを合わせたら他のラッシート王国の領主達全てを合わせたよりも遥かに大きいじゃないですか。

 ラッシート王家がマリーシア陛下を王位に据えられたのも今日を想定されていたからなのでないですか」


「ああ。それだよ。マリーシアのことはリビエラのお父様とママ様が一緒になって絵を書いてたそうじゃないか。リューペンス伯も酷いよ」


「いえいえ。マリーシア陛下がまだ八つの子供だった時に今日を予測して公子様が唾をつけたって皆様仰っていますよ?」


「な訳ねぇよ!」


「本当ですか? わたくしは昔からリールセラートと言う名前はレリトニール公子様と響きが似ていると思っておりました。昔からリールセラートを狙ってらしたんじゃないですか?」


「名前の響きが似ているだけで征服したりしないよ」


「信じられません。神々の森から一度も迷わずに首都を目指してらしたじゃないですか。あれって道も知らずに夜通し走れるはずありませんし。

 下調べしておられたんじゃないですか?」


「いやしてないって!」


「でも月も出ていない夜道を走り切って朝日が差してきたと思ったら首都の王城の真ん前に陣取っていたとか出来過ぎですよ。

 そんなの作為があるに決まってますよね」


「たまたま。うまく行っただけだよ」


「事前にご自身の聖剣を鍛え直して神と戦えるほどの代物に変え、剣王アイリス嬢にもあの剣を持たせた上になぜか突然剣王を鍛えてガーディサマルと戦える戦力に変えた直後、守護者ガーディーサマルとの戦いが起こりました。

 我々にマジックバックを持たせて物資を運ばせ、攻城用の兵器まで陛下に作らせたうえに、今回それを持って来させましたよね。

 途中で思いついたかのような言い訳をしつつ結構な規模の城を調達しましたよね。

 さすがにわたくしもこの時点で禁忌の森の存在を思い出しましたが、しかしまさか神々を悪用する可能性なんて万分の1の確率ですよ。後になってそこまで事前に考えていらしたのだと感動いたしました。

 アクシデントで気を失ったにもかかわらず禁忌の森にとんでもない速度でギリギリ間に合い。相手の罠にハマったフリをしつつそれを利用して無血で相手国に侵入してそのまま敵国深くまで侵攻。相手の王城を一夜にして落とす。こんな離れ技を誰が成し遂げられるって言うのでしょうか?」


「よく舌が回るね。でもそんなことを意図的にやっちゃう人がいたら天才を超えて全知全能の神様だね」


「え? 全知全能の神? そんな凄い神様がいらっしゃるのですか?

 神様って間違いをしでかしたり、とても人間臭くって問題児ばかりだと思っていましたが? 

 そんなことよりこんな予測不可能なこと全てに最善の手をいつも事前に用意されておられる。

 わたくしには全て未来を見通して事前に手を打たれているようにしか見えませんよ」


「そうなの? でもそんな奴がいるわけないよねー。全部偶然だって」


「しかし、スタンピードと言い、剣神ユーリプス様の降臨と言い、とても予測なんてできようはずもありませんのに、公子様は全て予見されていましたよね」


「な訳ねぇよ」


「わたくしも公子様の行動をトレースして少しでもサポートできるように精進します」


「リビエラ嬢は充分天才だって。だって今の話じゃ、禁忌の森のことは事前に察知してたんだよね。そんなの凄いじゃない。さすが賢王だよ」


 俺の言葉は虚しく宙を舞うのだった。

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