151 獄衞鬼神。守護聖獣神ガーディー・サマル・ウンツ降臨す
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《剣王アイリスの視点》
わたくし達は、村人達の足跡を頼りに追い駆けて行った。
「ケーレン隊長。ここから禁忌の森です」
見たことのない、赤い光の帯がずっと続いている。
「この赤い帯の中側が禁忌の森なのですね」
わたくしが尋ねると。
「神々がこの場所に入らないように忠告なさってると言われています」
ケーレン隊長が答えた。
「それを破ったらどうなるのです?」
「神々の森を荒らす者が現れたら守護者ガーディーサマル様が降臨すると言われております」
「ガーディーサマル様?」
「地獄の門を守護する獣神の1柱とか。三つの頭、保守の頭、再生の頭、霊化の頭を持ち、尻尾は竜、背中に大蛇が何匹か生えているそうです。多くの頭には全て知能が宿り、あらゆる方向を監視するために存在するそうです。
鋼の剛毛に覆われどのような剣も跳ね返すそうです」
そんな化け物が降臨しては敵うはずがない。
「ケーレン隊長。その化け物が現れたらわたくしが足止めをします。敵の軍は槍聖シュレディ様と風聖様、剣聖ノイツ様イールド様の四人で足止めをお願いします。
ケーレン隊長は村人の保護をお願いします」
「承知しました。剣王アイリス様」
(アイリスは大司令官と言う職業を持ちます。常時発動型スキルである『司令』が発動しているため、部隊とクラスメートは彼女の命令に従っています)
では行きます。
神々の森に入ると人の気配が伝わってきた。
そちらに向かって走った。
少し視界が開けた広場があり、そこに数百の兵が軍列を作っていた。
「止まれ! こいつらが見えねぇの?」
なっ!
「多勢な上に人質までとはどこまでも臆病なのですね。わたくしは、ラッシート王国のテンシラーオン大公爵様の寄子マーキュラス子爵の長女アイリス。あなたは?」
名乗りした。戦場の作法でもあり、相手の不法を咎める意味もある。
「あれ? テンシラーオンの小せがれはいないのですね。とは言え高名な剣王アイリス殿が釣れたのですな。少しばかり小ぶりな魚でしたがまぁ、良いでしょう。
剣王を始末できれば上司様も喜んでくださることでしょう。ふふふふ」
「お前ら如きが剣王たるわたくしを本気で倒せるとお思いですか?」
わたくしは嫌な予感を覚えつつ答えた。
「いえね。この下民どもなんて魚が釣れるまでの餌に過ぎないんですよ。
剣王を来てくれたことには礼を言いますがテンシラーオンの小せがれか女王陛下のどちらかだったら良かったですがね。せめてレーベン辺境伯ぐらいは来てくれたら良かったのですがね。しかもたった三百でくるとはね。これでは戦局の改変とまではいかぬようで残念です。
切り札はこんな下民どもの軽い命ではありませんよ」
人の命をなんと思っているんだ。怒りがふつふつと湧き上がってきた。
「貴方達は先の迷宮への悪辣な企みと言い、今回のこの人質作戦と言い、恥を知りなさい」
「はあ? 悪辣な破壊工作を仕掛けてきたのはラッシートとテンシラーオンでしょうに。麻薬を販売して国力と経済力を貶めようなどと。よくもそこまで非道になれますな」
ああ。やはり公子様の罠にがんじがらめになっているのね。
「ふふふ。ありもしない幻想に怯えて暴走なんてお可哀想に。
公子様は陰謀や暗殺など実行するのは恥。戦争は戦っていることを悟らせずに降伏させるのが吉だと仰っておられましたわ。その思想の中のどこに貴方が仰った陰湿な攻撃などが有りえると思うのでしょう?」
「何を言っているのだ。我国は現にこのようにお前たちから侵略を受けている」
「わたくしたちは、同胞を拉致した盗賊から同胞を救いに来ただけでこれは戦争などと言う次元の行いではありませんよ。恥知らずさん。
見境なくめちゃくちゃして後世に悪名を届かせる天才さん。でもこのままでは無名の馬鹿って表記になってしまうかもですわ。戦場で名乗りもしないのは盗賊の証とお思いになりませんか?」
「くっ。剣王は口で攻撃してくるしか能はないのか?」
「ふふふ。わたくしがその気になったら貴方の首なんて直ぐに落とせるのですよ」
わたくしは、そう言いつつその男の頭髪を切り落とした。
「ギャー」
男はみっともなくも後ろにお尻をついて倒れた。
なぜ首を切らなかったかと言うと人質の村民達に斬撃が当たるためだ。
しかし、この子供じみた意趣返しは失敗だった。
「くそ! やはり剣王ともなると化け物か。剣を抜くのも見えなかったぞ。爆発させろ! 守護者を降臨させろ!」
その言葉に、思わず身体が凍りにいた。
次の瞬間、森の奥で爆発音がした。
む!
強い衝撃波に身体が振りえた。
どれだけの場発をさせたのか?
「爆発の魔法具ですか? 神聖な場所で何てことを」
「ははは。思いしれ、ラッシートの陰謀家ども」
なにを言っている。陰謀などと。でも公子様は何やら色々されているのだろうか?
わたくしがそんなことを考えている時だ。
天空がにわかに曇ったかと思い、空を見上げて驚愕した。
何か巨大な物が降りてくるのだ。
「守護者が降臨してきます。手筈の通り動きなさい!」
わたくしは皆に命じた。
「はい。行くぞ! 剣聖ノイツ、イールド。付いてこい。風聖デュークは後方支援を頼むぞ。ケーレン隊長は人質を」
槍聖シュレディがわたくしの命令を受けて先頭を走って行った。
わたくしは、安心して頭上を見上げた。
今まで見たこともない巨大な獣神ガーディーマサル。その異形が緩やかに空から降りて来るのが見えた。
大きさは、もやは山と見紛うほどだ。獣神ガーディーサマルは、魔物と同じような外見だが、確かな知性を感じさせる鋭い視線を我々に投げかけてきている。
神聖なる土地を汚す汚物とでも思っているのか?
あんな化け物と対峙して人質が助かるまでなんとかなるのか?
いや!
ここでわたくしがどれだけ頑張るかによってここにいる人達の命を左右する事になるのだ。
わたくしは、たった今受けた公子様の教えを忠実に守り、魔力を捨てて魔力を最大に操らねばあの化け物に全く太刀打ちできないだろうと決意を新たにしたのだった。
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