143 変なスイッチが入ってしまった
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《剣王アイリスの視点》
公子様は、何を考えてらっしゃるのか。いつも謎だらけだ。
「アイリス嬢。ちょっとアレの具合を見せてよ」
アレとは公子様から頂いた魔剣のことだよ。
柄頭しかなく。刃は、マジックバック化された鞘に収まっている。
逆に刀身は普通なら鞘から抜くこともできないような長さと重さを持っている。
「はい。使い方を教えてくださるのですね」
「またまた。僕如きが剣王様に教えることなんて何にもないよ」
公子様のこれは天然だ。謙遜ではないのだ。ご自身よりもわたくしの方が剣が上手だと本気で思っておられるのだ。
そして事実は全く違う。
公子様が本気になればわたくしなど瞬きもできずに目を開けたまま、自分が死んだことも理解できないままあの世行きにされていると思う。
「公子様の剣の扱い方を参考にさせて欲しいのです」
こう言うと優しい公子様は否定することはない。
「そうなの。僕のは、剣王の役に立つかな?」
しきりに首を左右に振って仰った。
周りの皆さんがわたくしたちの話を聞いて苦笑いしてらっしゃる。
「ねぇ。本当のところ公子様と剣王様とか戦ったらどっちが勝つかな?」
興味津々と言う感じで尋ねたのは風聖のドリューだ。
大きな身体だけを見ると武闘派に見えるが彼は風魔法の達人だ。風魔法では恐らく国の中でも一二を争う実力者である。
「アドリュー様。わたくしなど公子様と戦う資格も無い未熟者です」
わたくしは、風聖ドリューに本心で答えた。
「アドリュー様は、風魔法の達人でらっしゃいますが、仮に風魔法だけで公子様と勝負なさって勝算はおありですか?」
そう追加して聞いた。
その瞬間風聖様は、何か納得された様子でうんうんと頷いておられた。
風特化の魔法使いでらっしゃる風聖様は、王級の賢者、リビエラ様と風魔法だけで戦われたらお勝ちになられると思う。
しかし公子様にはそんな常識は通用しない。
本来、アイテムボックスの専門家である始商王サスティナ嬢が公子様のアイテムボックスの容量にあれほど驚愕しておられたがごとくなのだ。
それはわたくしでも同じだ。
わたくしの場合、皆よりも公子様と修行していた時間が長かった分、皆より多少レベルが高いだけだ。
「あはは。アイリス嬢の冗談を本気にしたらだめだよ。アドリュー君がそんなに興味があるならいっちょ胸借りようか。アイリス嬢、剣の勝負と行こうか」
あ。また公子様の変なスイッチが入ってしまった。
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