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137 光の公子様。あなたは何をなさっておいでなのでしょう?

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《賢王リビエラストの視点》


 なんともこれほどの速度で走り通したのは初めてだ。


 公子様の過酷な修行の成果だろう。なんとか走り切った。しかしこの距離をたったの一日中で走り切るなんて信じられない。


 わたくしのような後衛職には少々骨が折れる運動量だったが、わたくしには魔法があるのでなんとかもったよ。


 自分に色んなバフを掛けまくって走ったのだ。


 公子様も時々わたくし達にバフを掛けてくださるし、公子様がお姫様抱っこしている大聖女様からの癒しの魔法もあるのでギリギリ走り切ることが叶った。


 ちなみに剣王は筋肉だるまなのか? 楽しそうに公子様と談笑しちゃって。少しだけイラッと来た。


 キュレシュの遺跡は、元ディーガ王国との国境に間近な農村にあった。


「この城はディーガ王国から我がレイバーン辺境伯領を守る為に作られた古城砦でした。

 しかし今ではリールセラート王国が国境にセバートスの大要塞メドジールを作りましたから。我々もそれに対抗するために城砦機能をディーガとの国境付近に作り直したのです」


 槍聖シュレディが皆に説明してくれた。


「これだけの城が無用になったんだね。勿体無いね」


 公子様が古城砦を見上げながら言った。


「はい。しかしここは友好国だったディーガとの交易の中継拠点として機能していた砦でしたから。昨今の情勢では少しばかり中途半端な場所と言わざるを得なかったので」


「そう。まぁ、今の僕には好都合だったけどね」


 槍聖シュレディ様の説明に公子様は、そんな風にお応えなると、皆に離れていてと忠告してからトコトコと城砦に歩いていかれた。


 またまた何をされるのかと見ていると。


 今でもそれなりに手入れがされている様子の古城砦は、石造の頑丈そうな佇まいだった。


 レイバーン辺境伯家が古くから力を注いで作った立派な古城砦なのだろう。


 レイバーン辺境伯家の防衛の努力が伺えるお城だ。


 レイバーン辺境伯は、野心豊かな外征国家であるリールセラート王国がディーガ王国を併呑すると言う一大事が起こった時、少しも慌てずに国境線を固く維持し続けた。


 そしていち早く国境付近に砦を作ってディーガ王国領への不可侵とリールセラート王国からの余計な侵攻をさせなかったのである。


 ディーガ王国の救済を理由に攻め込む事を主張した貴族も多かったと聞く。


 それを止めたのがテンシラーオン大公爵様だったと聞いている。


 拡張路線は短期的に国力を疲弊させる上に国際関係を悪化し軍事費が急騰するなど経済的デメリットが多すぎる。


 それがテンシラーオン大公爵様が我国に戦端を切らせなかった理由だったと聞く。


 父上はそれを聞いてテンシラーオン大公爵様はさすがだと褒めていた。


 まさに公子様の外征論にも通じる経済を中心とする富国論であり、傾注に値する意見だ。


 さすがに公子様のお父様だ。あるいは公子様が裏から糸を引いていたとしてもわたくしは少しも驚かないが。


 わたくしがそんな事を考えているうちに、レリトニール公子様は、古城砦の土台まで歩み寄られた。ぱんぱんと土台を手で叩かれている。


 何をされているのか想像もできない。あんなに強く叩いて城砦が大丈夫なのかと思った。


 城砦を壊されるお積もりなのか?


 リールセラート王国がここまで攻めてくるとお考えなのか?


 一瞬、そう思い。そしてヒヤリとした。


 そんな事が。


 わたくしの頭脳がオーバーヒートしそうになるくらいにその未来をシュミレートする。


 もしや禁忌の土井を悪用して、、、


 そんな万分の1の可能性に気づいて、はっとした。


 それは限りなくゼロに近い愚行だ。神の力を利用するなど愚の骨頂である。


 まさか。


 わたくしが自分の考えに没頭していたその時、突然古城砦が跡形もなく消えたのだ。


 ん?


 暫くして古城砦をアイテムボックスにお入れになったのだと気がついた。


 そんなことが可能なの?


 あゝ。わたくしの光の公子様。あなたは何をなさっておいでなのでしょう?


 驚きを通り越した時、人は神々への畏怖を感じると言う。わたくしはあまりの出来事に震えが止まらなかった。


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