121 周りが見えてませんでした。いえ。あなたが見えません。
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《レリトニール公子視点》
剣の試し振りが終わった。
「ヤード商会長さん。なかなかトリッーキーな剣だね。面白くってついつい振り回しちゃったよ」
テヘペロ。
「はあ。しかしトリッーキーとはどんな意味なのでしょうか?」
そうか。トリッーキーって言わないの?
うちでは普通に言うけど?
「なんか、重さや長さが急に変わるんだよね。振り上げるときは5分の1の重さ、振り下ろすときは十倍になる感じ? 長さは届けって感じで振ると長くなってこっち来いってやると縮むんだよね。面白い。
そんな感じの色んな補正が掛かっててとにかく振りにくいけど面白いんだよね。
でもコンセプトは理解したよ。よくよく考えて作られた几帳面さと独特の剣へのこだわりが感じられて、なんか二人の別人が喧嘩しながら作った感じがするよ。でも良い剣だね。刃先のエンチャントが空間魔法と重力魔法だなんて魔剣の理想なんじゃ無いの?」
「今の素振りだけでそこまで分かるものなのですか?」
ヤードおじさん。冗談がうまい。俺は剣を三千八百五十回も振るったのに。そんだけ降りゃ特性くらい理解できるって。
(攻撃時、レリトニール公子は素早さの効果で普通の人の千倍の素早さになるが本人はそれに気付いていない)
「まぁ、いくらモブでもあれだけ振れば分かるよ。
つい夢中になって周りが見えて無かったね。ごめんなさい」
「いえいえ。私どもには公子様の動きが早すぎて見えませんでしたよ」
第一騎士団長の息子イールドが呆れたように言った。
「ははは。大剣士職にして剣聖様のイールド君が謙遜しちゃって」
俺は大剣士イールド君の冗談を鼻で笑って相手にしなかった。
ん? なんで呆れたような顔をしてため息なんかついてるんだ?
まぁ、能力の事は隠したがるからね。仕方がないか。
俺はそう解釈して、ヤードおじさんに視線を向けた。
「いい剣だね。金貨30万枚だったよね。お店で渡すからお店に戻ろうか?」
「「「「持ってんのかよ!」」」」
なぜか皆がそう突っ込んできた。
「え? 皆100万枚くらい持ってるよね?」
「「「「持ってねぇよ!」」」」
皆の大合唱が響いた。なぜ?
「え? 豪商サスティナ嬢がいつも持っとけって。お小遣いって言ってたけど?」
「「「「そんなお小遣いあるかい!」」」」
なぜか皆が一緒になって合唱する。
え? 百万円でしょ?
少し多いけど、公爵様の御曹司なんだかそんなもんじゃ?
(この世界の金貨1枚は、現代の貨幣価値に直すと約五十万円ぐらいの価値です。たった一枚の金貨ですら一生見ることもできずに過す人がいるほどの価値があります。レリトニール公子の勘違いです)
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