114 あ。この声は
本日3話目です。
よろしくお願いします。
《鍛治っ公女エカテーリナの視点》
今日わたくしは南街区の我が家の商会にきていた。
わたくしの作品が一番奥に飾られいて気分がいいわ。
「お嬢様。この剣はお国で打たれたのですね」
代表のヤードおじ様が揉み手をしながら言ってきた。この方は少し肉付きの良いお姿で、いかにもやり手の商人さんって感じのおじ様だ。
我が家へーベンダールの遠縁の方なのでもちろんドワーフだ。
「ええ。頑張って打ったんですけど」
最近、自分の剣に自信が持てなくなっているのだ。
「おや? どうされたのです?」
「ええ。実は」
お父様がこの方には絶対的な信頼を置かれているので世界でも有数の都市エベンガルトの商会を任せていらっしゃるのだ。
悩みを打ち明けても大丈夫だろう。
わたくしが打った剣王様の剣の状態を説明した。かなり痛んでいて打ち直しでもしないと修復は不可能だろう。また見た感じ剣王様の力にわたくしの剣が負けているようだ。
もっと強い剣を打たないと役に立たないようだ。そんな話をヤードおじ様に伝えた。
「それはそれは。さすがにお噂に高い剣王様ですね」
ヤードおじ様が感心なさっているけど、本当に凄いのはレリトニール公子様だ。わたくしはレリトニール公子様にわたくしの存在価値を示したいだけだ。でも腰に刺していらっしゃるのは聖剣グランファードだし、でもあれを超えるものを作ったら。あるいはレリトニール公子様の職業が勇者ではないので、可能性がある。聖剣は勇者でないと完全に扱えないかもしれないのだ。わたくしの作った魔剣の方が公子様に最高のパフォーマンスを出して頂けるかもしれないのだ。
「お嬢様。全力で我が商会が援助させて頂きますので良い剣を打ってください」
この方は、大変な財力のある方なので心強い。
もちろん豪商サスティナ様のご実家のジェラート商会に比べたら些細な商いですけど、この方の商いは、小さなわたくしの国ベール王国にとっては大きな財政の柱となっているほどなのだ。
テンシラーオン大公爵家は世界で最も裕福な貴族として名高く、ジェラート商会がその屋台骨を支えているは周知のことだが、ベーベンダール商会と我がベーベンダール公家がテンシラーオン大公爵家に関わり合えたらとの思惑でわたくしは公子様のご入学に合わせて留学させられたのだ。
でもわたくしの真意はあのお美しい方の血を分けて頂くことだ。
きっととても美しい子供ができるはず。はぁ!
「お嬢様。急にお顔が赤くなられましたが、お体の具合でも?」
な。おじ様にとんでもない顔を見せてしまったわ。
「ごめんなさい。少し頬がほてったの。疲れているのかしら」
「ほほほ。お嬢様も少し見ぬうちにお美しく、立派な淑女になられましたな。
立派なお方の扶助を得て良い子をたくさんお産みくださいませ」
なんとも古臭い考えを押し付けてくるが、おじ様は善意で仰っておられるので笑ってごまかす。
わたくしは血を分けてくださればそれで良いの。結婚なんてしてくださるか分からないし。
その時、カランカランとお店のドアが開き、数人の男の子が入ってきた。
見ると学園の制服を着ていらっしゃる。
「やあ。エカテリーナ嬢。良いところで会えたよ。あ、ここはベーベンダール商会だからいてもおかしくないのか」
え? え? このお声は。
あ。レリトニール公子様だ。
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