105ー4 怒らせてはならない4
本日四話目です。
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《リールセラート王国の千人将軍の視点の続き》
ケルベロスがもう一度咆哮を上げた。
するとどうだろう。魔物の群がザザーと波が引くように我々から離れていく。
あいつが命令を発したのだ。
直ぐにケルベロスが我々に攻撃してくるのかと身が凍る気分になった。
たがしかし、ケルベロスは我々になど目もくれていなかったのだ。
今は魔物がいなくなっため魔物を弾丸にして攻撃していたその人物の姿がほぼ見えるようになった。
かなりの距離があるため顔まで分からない。あんなめちゃくちゃな攻撃をしていたので大男を想像していたが、なんか逆に小柄で細身なことが分かった。
ギャーオーーーーウン!!!!
ケルベロスがもう一度吠えた。
明らかにその咆哮は、我々にではなくその小柄で細身の人物に向けて放たれたものだった。
小柄な彼の後ろには大きな男もいる。長い槍を担いでいる者もいる。先程から爆炎魔法を連発していた魔導士もいるはずだ。
彼等は高位の冒険者パーティーなのだろう。男が6人。女性が7人。総勢13名のようだ。
醸し出す雰囲気だけでも相当に高位の冒険者だと分かる。
一匹と13名のパーティーが対峙していた。
今まさに戦いが始まろうとしているようだ。
ギャーオーーーーウン!!!!
ケルベロスが咆哮を上げた。
次の瞬間だった。
小柄で細身の先頭の男が爆発したのだ。
ケルベロスの攻撃を受けたのか? 俺はそう錯覚したような爆発だった。
俺は彼の身を案じて目を凝らした。
たがそれが誤りと直ぐに分かった。彼は地面を蹴ってケルベロスに向かって跳躍したのだった。
あまりにも地面を蹴る力が強かったため地面が弾けて爆発したように見えたのだ。
目にも止まらない速度で彼はケルベロスに突進し、いやもう空中を飛んで行ってケルベロスの一つの頭を蹴り飛ばしたようだ。
あまりにも早過ぎてほとんど一瞬の攻撃だった。
これほど距離があるからこそその全貌が見て取れるが、あれは人間技なのか?
人間が地面を蹴って弾丸のように飛ぶなんてことがあるのだろうか?
しかもあれほど巨大な魔物の頭が蹴り飛ばせれた瞬間に爆ぜたようになって消し飛んでしまうなんてことが起こるのだろうか?
ケルベロスは驚愕と痛みによる絶叫のような声を張り上げている。
あ。
小柄で細身の男性は蹴った勢いを利用して遥かな高さを誇るダンジョンの天井にまで飛んで行くと今度は天井が弾けてしまうほどの衝撃のある蹴りをかましてケルベロスに向けて勢いをつけて飛び降りてきた。
あ。
二つになった一方の首が弾け飛んだ。
あ。その勢いで身体を凄い勢いで回して先後に残った頭を蹴り飛ばした。
あゝ。最後の頭も消し飛んでしまった。
ほとんど瞬殺じゃん。なぶり殺しって言った方が良いんじゃね?
魔物を素手で投げ殺していた凶悪な男はやはりこの小柄で細身な彼だったのだ。
信じられない。
素手と蹴りだけでケルベロスを瞬殺してしまった。
遠巻きから様子を伺っていた迷宮の魔物の群れもあまりもの圧倒的で一方的な殺戮行為に鎮まり帰っていた。
我々リールセラートの工作軍も誰一人話す者もいなかった。
そんな状況のせいか、かなりの距離があったが小柄で細身の彼の呟きが俺の耳にまで届いた。
『うるせぇんだよ』
どうやら何度も咆哮していたのでうるさかったらしい。
この人物を怒らせてはならないと俺は肝に命じたのであった。
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