105ー1 怒らせてはならない
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《リールセラート王国の千人将軍の視点》
本国からの指示を俺は少々軽く考えていたようだ。
俺はリールセラート王国の千人将軍の地位を持つ情報工作員だ。ラッシート王国内での破壊工作の責任者だ。
ラッシートの陰湿だが天才的な破壊工作の計画を暴いて直ぐに我国ではその計画が実行されては国が崩壊しかねないとの結論に至った。
本国から起死回生の博打のような作戦を提示された。その作戦を実行するかそれとも我国が滅ぶのかの二択を迫られている気分だった。なんとも酷いめちゃくちゃな作戦だ。
ラッシート王国の中でも最も危険と言われている迷宮でスタンピードを起こさせると言うのだ。
作戦を実行するためラッシートに散らばっていた同胞が呼び集められるとともに、本国からも凄腕の工作員が集められた。その数はなんと百四十名にもなった。
これはもはや工作員なんてレベルではなく軍事作戦だと思った。
目指すは迷宮『嘆きの壁』だった。
今回集まった破壊工作員達はAクラス級の達人ばかりだった。
しかし目的の五十階層にまで辿り着けたのは僅かに百十五名だけだった。この時点で35名もの尊い命が作成に捧げられたのだ。
この迷宮が『嘆きの壁』などと呼ばれる理由を肌で感じさせられた。本当にやばい迷宮もあったものだ。
五十階層のボスをボス部屋から追い出し階上に追いやった。
スタンピードが起こった場合、魔物の波は上に上に広がるはずであり、我々は一旦階下に逃れ、スタンピードが収まってからバラバラになって逃げる手筈である。
今回の作戦の目的はテンシラーオン大公爵家の領都エベンガルトに復興の目処がたたいないほどの大被害を与えること。ひいてはラッシート王国が現在企てているというリールセラート王国への陰謀を実行させないことだ。
軍部によるスタンピードの人為的発生は辺境のダンジョンにて実験を繰り返し、ノウハウはほぼ確立していたはずだ。
しかし今回は想定されていたようには行かなかった。
一旦、五十階層から上に向かって始まったスタンピードだったが、ある時点から魔物の進む方向が逆転し下に向かって暴走しはじめたのだ。
何か恐ろしい魔物から逃げているかのような桁外れの暴走に、我々ではどのように対処してよいか分からなくなってしまった。
この結果は、迷宮の禁忌を破って軍事行動した我らへのダンジョンからの報いなのかと周囲の惨状を見て思った。
この『嘆きの壁』はやはり普通のダンジョンでは無く触れてはならない存在だったのかもしれない。
我々は、直ぐに魔物に囲まれた。リールセラート王国でも指折りの剣聖、拳聖、武聖などを筆頭に最大戦力で取り組んだ工作も明らかに失敗のようだ。
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