103 まだ大丈夫ですよ。まだね。
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《剣王アイリスの視点》
へ? どうして公子様がこんなところへ?
「やあ。アイリス嬢お疲れ様。先頭変わるよ。皆にバフをかけるぞ」
それだけ言うと公子様は、わたくしとわたくしが引っ張っていたお二人にバフを掛るや否や脱兎の如く駆け出されいた。
「あ、公子様。待ってください。そんなに早く走られては追いつけません!」
バフの効果が凄いはずなのに公子様はズンズン距離を開いていかれる。必死なって走っても追いつくことは無理そうだ。
これでは置いて行かれてしまう。仕方がないので目の前の縄を掴んだ。
「すみません。賢者リビエラスト様。ご一緒させてください」
「剣王アイリスか? 何だこれは。お前はこんな修行にいつも付き合っていたのか?」
「いえ。ここまで酷いのは。それにどうしてわたくしが連れていた魔女っ公女リージィー様を公子様が抱っこされているんです?」
「お前が落としたから公子様が拾ったんだ。しかしあんな速度で良くも走れたもんだ。
たくさんのバフを掛けてくださったのとこうして引っ張ってくれるのでどうにか付いていけるが、きついな」
「後ろの方々は?」
「いやあ。もう意識もないだろうな。可哀想なので浮遊魔法を掛けてやった」
「さすが賢者様。ですがあれでは経験値があまり入らないかも知れません。起こしましょうか?」
「剣王も鬼のような奴だな。せめて寝かせて置いてやれ。経験値も寝ていても少しくらい入るのだろう? 彼らにしてみると御の字だろうさ。しかし公子様の強制レベリングは凄まじいばかりの効果だな。さっきからずっとステータス画面を見ているんだが、もう15も上がった。強者によるレベリングはできないと言われているはずなんだが、しかし目の前で明らかにレベリングが行われているんだから疑いようもないな」
「いえいえ。賢者様。こんなのは序の口ですよ。恐らくこのまま最深部まで行っちゃうのではないかと」
「は? 最深部だと? この連中を連れてか?」
「公子様からすれば彼らと我々の差など誤差の内です」
「はあゝ。剣王アイリス。よく今まで公子様の修行に付き合ってこれたな。公子様に皆の修行をさせないようにしていた理由が初めて分かったよ。
だが、これはこれで我々の為になるのでは?」
「それはもちろんです。ですが賢者様。まだたったの二〇階層ですよ。公子様の修行は、最深部のボス部屋に付いてから始まるんですよ。その後で同じことを仰られたら尊敬します」
「何を馬鹿なことを言っている。こんな連中を連れて最深部のボスなんかと戦えるはずがないだろう」
「ふふふ」
「剣王。大丈夫か?」
「もちろんまだ大丈夫ですよ。まだね」
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