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099 ちょっとニュアンスが違うかな

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《亡国のメーラシア王女視点》


 わたくしは、武王こそ世界で一番強い方だと信じていた。


 どうやらそうではないのだとは今更か。武王サイラスはレリトニール公子様が剣王様の剣を片手で掴まれたのを見た時からあれはバケモンだって言ってたが、どうやら本当にそうらしい。


 わたくしも、何もかも失ってからは自分一人でも生きていけるようにと武王サイラスに武術を習い、そこそこの強さになったつもりだった。


 武王もわたくしは筋が良いとしきりに褒めてくれるのでその気にもなっていた。


 でも、あのレリトニール公子様よりも弱いと自称している剣王アイリス様は、しかし本当の強さを目の当たりにして初めて分かったが、その強さはわたくしの想像なんかよりもずっと遥かに上を行く強さだった。


 わたくし達三人を伴って、スタンピードによって溢れ出てくる魔物を次々に狩っていく。


 剣王様が剣を振うたびに数えきれない魔物が両断され絶命する。どのような技なのか。剣を鞘に入れたままピクリと動かれる。それだけで、アイリス様の前に群がる魔物が扇状に殲滅されるのだ。


 達人はどんな武術であっても究極は斬撃を飛ばすらしい。これは武王から教えてもらったが、斬撃を放てるようになるのは聖の字がつく称号を得てからだそうだ。


 剣聖、武聖、槍聖、弓聖などの称号を持つ達人達で大きな国でも数人しか存在しない達人だ。


 王はそれよりもランクの高い人達なのだ。世界に数えるくらいしか存在しないと言う。


 さすがに剣王様だ。王の称号に恥じないそれ以上の実力をお持ちだと思う。


「大丈夫? 付いて来れている?」


 剣王様が我々にむかって尋ねた。


「はい。なんとかわたくしは。ですがお二人には少々酷かと」


 わたくしは後ろを黙々と付いてくる魔女っ公女ジーリィー様と鍛治っ公女エカテリーナ様の二人を見て言った。二人はもう息も絶え絶えのご様子。


「なら、コレに捕まりなさい」


 そう言って剣王様は縄を投げてくれた。縄の先を見ると剣王様の腰に巻かれていた。


「手を擦りむくのでハンカチで手を覆ってから掴むのですよ」


 優しく剣王様が説明してくれた。


「ありがとうございます。ですが、わたくし達が掴まって引っ張ってしまうと剣王様の剣の技に支障があるのではありませんか?」


「ふふ。貴方達三人くらいぶら下がってくれてもなんの影響も感じないと思うわよ」


「さすがにぶら下がったりはしません」


 わたくしはまさかそんな迷惑をかけられないと思って言った。


「ふふ。この縄はもしかしたらって思って持ってきたの。実はわたくしもこれと同じような縄に随分助けられたの。『疲れたならこれに捕まる?』なんて公子様はあっけらかんとした雰囲気で言うのよ。ほんと。おんぶに抱っこ状態なのにこれ以上ご迷惑はかけられませんって言ったものよ。

 でもね。あの縄は地獄の中の救いだったわ。必死で掴まったわよ。ただただ必死で掴まった。

 でも何度も引きずらたわ。力尽きて意識を失うことも何度もあった。でもあの縄が公子様との繋がりだと思って必死で掴まったの。

 縄から落ちていても普通に助けてくださっていたけどね。わたくしが気付いたらいつも公子様の背中に抱えられていた。同じ縄で縛られてね。

 嘘寝で暫く公子様に背負われていたことも数えきれないわ」


 昔を懐かしむように剣王様は説得してくれた。


「でも公子様は、アイリス様に助けられていたといつも仰いますよね」


 なんか公子様の仰りようとニュアンスが違うように感じるのはわたくしだけだろうか。


「ふふふ。公子様はわたくしが態と公子様に修行させるために邪魔をしている。なんて勘違いされているような言い方をされるわよね。あれは公子様のご冗談だから気にしない方がいいわよ。

 わたくしは恐らく公子様によって過大評価されているのは間違いないけど。公子様が仰るほどの人間じゃないわ」


「剣王様。それはあまりにも謙遜が過ぎませんか?」


「ふふふ。ちょっとニュアンスが違うかな」

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