094 ベールをたくし上げた聖女は、主を仰ぎ見た。
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《疾風ドリューの視点》
レリトニール公子様の従者の皆様は皆さん化け物揃いと言われていて本当だろうかと思っていたが、本当だった。
まさか聖女様がこれほどお強いとは意外だった。
ベールを深々と被ってらっしゃるので普段はお顔を拝することもままならないが、非常にお美しい方だとの噂だ。
レリトニール公子様の美しさにも負けるとも劣らずな美しさだともっぱらの噂だが真相はベールの底にだ。
ジェラート大商会の豪商サスティナ嬢も大概な美女で学内の人気を博されいる。何よりも実家が超お金持ちだ。金貨を武器にすると言う考えられない攻撃でくさんの魔物を葬っていた。
女忍のエーメラルダ嬢は、全体を見回して危ない人を助けたりしていた。神出鬼没で気配を自由に操るスキルを持っておられるようだ。
突然現れてスパッと切る凛々しい姿がとても素敵な美女だ。
皆本当に凄い。
こんなに美しい化け物たちがいるもんかと最初は思っていたけど化け物と言われるのも無理がないかも。
聖女様はベールを深々と被って下ばかり見ておられるのにどうして魔物を叩けるのか。とても不思議だ。なんだか見てると危なっかしいのだが杖は確実にヒットするし、凄い破壊力だ。
あの綺麗な杖をビュンビュン振ってあっという間に魔物を倒していく。
聖女様。一人でどんどん進んでいくけど大丈夫なのか?
あ。女忍エーメラルダ嬢が気付いて聖女様を阻まれた。
あゝ。ほっとした。
あんなに綺麗で清潔感の溢れていた服が魔物の返り血で大変なことになっているけど大丈夫なんだろうか?
これほどたくさん退治しているのに、見れば魔物の数は逆に増えてもう数えきれない程に膨れ上がっていた。
通路は魔物で溢れんばかり。しかもどんどん魔物の密度が増していくのが分かる。
我々はここに来た時、数が多いので二つに分かれてレベリングをすることとしたのだが。それが失敗だったのだろう。
ここに剣王様がいらっしゃったらまた違う展開になっただろうに。
剣王様は、魔女っ公女リージィー様。鍛治公女エカテリーナ様。それに亡国のメーラシア姫様と先に行かれ、暫くしてから我々が後を追うと言う段取りだった。
ところが待っているうちに魔物がどんどん現れたのだ。
まだ、一階層なので退却するのも簡単だろうからとそのまま剣王を持つことにしたが、この様子ではさすがに洒落にならない。
女忍エーメラルダ嬢にそろそろ退去した方がよいのではないだろうかと言おうとしたその時だ。
通路の入り口方向から、何かとても騒がしい音がしたのだ。
なんだろうと音のした方に注意を向ける暇もなく音の原因が俺たちの中に飛び込んできた。
最初は魔物が飛び込んで来たのかと思い身構得てしまったが、現れたのはレリトニール公子様と賢者リビエラ嬢ともう一人、初老の精悍そうな雰囲気の男の人の三人だった。
公子様は、いつものように明るい笑顔を振りまいて俺達に手を振ってくれた。こんな状況なのにその余裕の笑みをみると不思議な安堵感に強張ってた体から力が抜けていった。
公子様はそのまま俺の前を通り越して、聖女様と女忍エーメラルダ嬢のところまで行くと。
「リリー嬢。頑張ってたね」
満面の笑顔でそう仰られていた。
レリトニール公子様の声を聞いた聖女様の反応は劇的だった。
いつも深々と被っているベールを、バッ! とばかりに後ろに跳ね除けるた。
純白のベールが宙に舞い広かった。
ベールの中から噂なんて消し飛んでしまいそうな本物の美女が出てきた。
そして聖女様は形容できないような素敵な笑顔で公子様を仰ぎ見た。
あゝ。聖女様は心の底から公子様を愛しているのだと確信した瞬間だった。
公子様はあのように憧憬と崇拝の眼差しでいつも見つめられることに慣れておられるのだろう。
美女のこの劇的な変化にも関わらず、ふだんと変わらず笑顔のまま、聖女様の黄金色の頭を躊躇うこともなく撫でられた。
されるがまま。聖女様はとても嬉しそうに笑みを更に深くしていった。
なんとも微笑ましくも絵になるお二人だった。
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