<続>ゴブリンに襲われている少女を助けたスナイパー
闇が深まる森の中
一人の少女が男と対面していた。
「立てるか?」
男は少女にそっと手を差し伸ばす。
「ええ、」
彼女はその手を取り、ゆっくりと立ち上がった。
「ありがとうございます」
「なに、たいしたことないさ。」
男は先ほど少女の命を救った。
彼女の側には棍棒を携えた緑の小人が倒れている。
その棍棒の先は彼女を向いていた。
「それよりも聞きたいのだが、ここはどこだ?」
「えっと、あの、ここは森の中です。」少女は不思議なことを聞かれた顔をしていた。
「ああ、そうだな。でもそうじゃない、ここの地名は知ってるか?」
「あっ、カンス村の近くの森です。名前は、、、わからないです。」
「そうか、ならこの生物は?」
男は足下に転がる、先ほど撃ち殺した緑の小人に視線を向けて尋ねた。
「えっと、ゴブリンですよね?」
「ゴブリン、、、」
男は怪訝な顔をしながら自慢の顎髭を撫でて考えた。
男の知るゴブリンという生物は空想上の存在であり、実在しなかったはずだ。
だが特徴が似ている。そして先ほどまで確かに生きていた。
より深く、熟考する。
(日本では滅多にみられない大木の生い茂る森、
空想上の生物、
木の葉の合間から差し込む赤と青の月明かり)
そして男はある可能性にたどり着いた。
(ここ、もしかして異世界?)
さらに思考が加速する。
(待て!これはまずい!)
男は焦った。先ほどは少女に”スナイパーさ”などとカッコつけて名乗ったがその実、男は平凡な猟師だった。
いかにも歴戦のスナイパーといった風貌としゃべり方をしているが趣味だ。
戦争に行ったことも、銃を人に向けたことも無い。
ただ、アメリカに行って本物の狙撃銃を撃てると興奮していた。
射撃場に居たはずが、気づくと森で迷子になっており、この地に立っていた。
男が普段使用していたのは散弾銃である。
ある程度近づけば撃てば当たる。命中精度は気にしたことが無い。
先ほどはたまたま当たっただけのまぐれだ。
(まずい!まずい!まずい!)
そしてここで男の思考は停止した。
今後もゴブリンのような生物が出てくる可能性のある森には居られない。
「お嬢さん、きみはどこから来たんだ?こんな夜中に。とりあえず村まで一緒に行くか?」
「あ、はい。お願いします。」
考え込んだと思ったら、少しまくし立てるように話しかけられ驚いたがひとりで森を抜けるよりずっと心強い。少女はすないぱーと一緒に行くことにした。
「では、道案内を頼む。最短ルートだ。」