第四幕 秘められた謎の力
「ーー・・・ーーー」
「...っ!!」
目が覚める。
瞼が開き視界がぼやける中、今の状況を掴もうと頭の整理をした。
「どこだ...ここ...」
辺りを見渡す。
さっきまで森の中にいた。間違いなく森の中に居たのだ。
だが、俺が今居るところはどうだろう?
荒れ果てた荒野、その地面には大きな亀裂が無数に生じ、そこを伝うようにマグマが広がっていた。
「...帝斗さんってそんな酷い人だったんですね」
少女の声が聞こえる。
その声に気付いた。
俺の手中にマシュマロの様な柔らかい物があることを。
「アスタリア...?」
「はい、今現在貴方に襲われているアスタリア=フローレです」
「あ...ご、ごめん!!これは違うんだ!!その、不可抗力って奴で...!!」
「と、兎に角早く退いてください!!」
そう言われて俺はすぐに立ち上がった。
そしてアスタリアがいる...と言うことは、どうやら転生した訳でも、そもそも死んだ訳でもなさそうだ。
だが一つ疑問を抱く。
「な、何があったんだ...?」
するとアスタリアは立ち上がりながら言った。
「覚えていらっしゃらないのですか?自分が何をしたのかを」
俺は腕を組んで記憶のタンスを片っ端から引っ張り出してみる。
だが、俺の記憶には彼女の上に覆い被さった以上の記憶はない。
「いや...ごめん。全く覚えていない」
「そうですか、辺りをよくみて下さい」
俺はアスタリアに促され、もう一度辺り一面の景観を見渡す。
「ん...?」
そこで俺はある一つの事に気が付いた。
大きな亀裂とマグマが広がる中、俺とアスタリアを囲うように無傷の地面があるのだ。
「こ...これって...?」
「『最上位魔法障壁【アイギス】』。貴方が使った魔法の名前です。因みにその前に使ったのは、『巨大隕石【メテオインパクト】』ですね」
すると、アスタリアは訝しげな顔をして俺を凝視し始める。
じーーーーー。
うっ...。
女の子に其処まで見つめられた事など俺の人生には唯の一度もない。
そんな俺からしてみれば、この状況は非常に気不味いのだ。
ただただ、黙って俺を見つめ続けるアスタリア。
やめてくれ...そんな目で俺を見ないでくれ...。
「でも、これはあり得ないんです。貴方があの魔法を使う事等、本来ならば絶対不可能なんですよ」
俺は目を丸くして彼女を見つめ返した。
「あり得ない?まぁ、色々とあり得ない状況にいるのは確かなんだが...」
「いえ、そう言うことじゃないんですけど...どちらにしろ転移者には最初に説明すべき事だったので今説明しますね」
そう言って彼女は軽く咳払いすると続けた。
「この世界には職業と能力が存在します。例えば先程の【メテオインパクト】を使うならば正規の手順を踏まないと発動出来ないんです。分かりやすく魔力板に表示してみますね」
彼女は右手の人差し指で空中をタッチするような仕草をして見せた。
すると、彼女の前に魔力板が生成され各職業群の名称がズラリと並べられている。
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戦士系
一次職、クルセイダー
二次職、パラディン
三次職、ロイヤルナイト
一次職、ナイト
二次職、ガーディアン
三次職、ヒーロー
一次職、ランサー
二次職、ロイヤルランサー
三次職、ドラゴニカ
魔法使い系
一次職、フレイムマジシャン
二次職、フレイムウィザード
三次職、フレイムディザスター
一次職、フローズンマジシャン
二次職、フローズンウィザード
三次職、フローズンディザスター
一次職、ウィンドマジシャン
二次職、ウィンドウィザード
三次職、ウィンドディザスター
一次職、ヒーラー
二次職、プリースト
三次職、ビショップ
盗賊系
一次職、アサシン
二次職、アサシンクロス
三次職、アヴェンジャー
一次職、シーフ
二次職、チェイサー
三次職、ファントム
弓使い系
一次職、アーチャー
二次職、ウィンドシューター
三次職、ボウマスター
一次職、ガンナー
二次職、トリックスター
三次職、トリガーハッピー
武道家系
一次職、インファイター
二次職、ストライカー
三次職、グラップラー
一次職、モンク
二次職、グラディエーター
三次職、バーサーカー
商人、製造系
一次職、アルケミスト
二次職、スミス
三次職、マスタースミス
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表を見る限りだと、どうやらクラスには一次転職、二次転職、三次転職とあるらしい。
「そして貴方が放った【メテオインパクト】は『フレイムディザスター』と呼称されるクラスになって初めて扱える大魔法の筈なんです。それを転移して来たばかりの貴方はいきなり放った。だからあり得ないって言ってるんですよ」
そんな彼女の説明を受けながら同時に考え込んでいた。
彼女曰く、未だ謎多き【アンノウン】の能力ーーー
現時点ではわかっている事などほとんど無いが、とりあえず暫くはこの能力を隠して行こうと思う。
あんな大魔法じみた物を人前で放った暁には人々から恐怖の対象として見られかねないからだ。
とりあえず今の現状に慣れようと深呼吸をした帝斗であった。