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VRアイドル殺し  作者: 菱川あいず
LAST DANCE
26/74

大切な約束

 なずなと横並びでベッドの上に座りながら、私は先ほどからずっと時計の針を気にしている。


 なずなの部屋の壁にある丸い掛け時計。


 単身と長針が最も高い位置で重なり合ってから、もうしばらくが経つ。


 なずなの家から、清澄白河の駅までは、徒歩5分くらい。

 

 ホームを移動する時間を考えると、もうそろそろ終電には間に合わない時間だ。



 なずなの手料理は、お世辞ではなく、美味しかった。

 手作りサングリアも然りである。


 そのせいもあり、また、そもそものスタートの時間が遅かったこともあり、また、ただでさえなずなと過ごす時間はあっという間に過ぎることもあり、もうこんな時間なのである。



 もうそろそろだ――



 長い針があと二、三周もしたら――



「かのちゃん、もしかして、さっきから終電を気にしてる?」


「……え!?」


 さすがに露骨に時計を見過ぎたようである。

 なずなの部屋は、私の部屋と違い、ごちゃごちゃと物が置いておらず、壁にポスターが貼ってあるということもなかった。


 ゆえに、私は視線の先を誤魔化すことができなかったのだ。



「かのちゃん、そろそろ家出ないと終電に間に合わないよ」


 なずなは、私の終電の時間も把握していたようだ。



「……そうだよね。……私、そろそろ帰ろうかなあ」


 なずなに指摘されてしまったら、仕方がない。


 妙な下心は捨てることにしよう。


 私は内心ガッカリしていることが伝わらないように、声のトーンを保つことに努める。



「なずなちゃん、それじゃあ……」


 徐に立ち上がろうとする私の腕を、なずなが若干力を入れて掴む。



「かのちゃん、帰らないで」


「……え!?」


「今夜はうちに泊まっていって」


 私はなずなの目を見る。


 お酒が入っているせいか、少し潤んでいる。


 とても愛おしい。


 心臓が波打つ。



「ね? 良いでしょ?」


 推しのお願いを断れるほど……



……いや、もうそんな関係でもないか。



 私は、力強く「うん」と頷く。



 私の腕を掴んでいたなずなの手が、私の背中に回る。


 私も、なずなの華奢な背中に手を回す。



 二人は、磁石が引き合うように、どちらからというわけではなく、口付けをした。



 口付けは、一度ではなく、お互いの感触と、お互いの気持ちを確かめるように、何度も交わされた。



 口付けの後、二人は大切な約束も交わした。



「かのちゃん、私と付き合ってくれる?」


「……もちろん。喜んで」


 断る理由などどこにもなかった。



「一緒にデートもしてくれる? ディズニーランドとかUSJとか……」


「うん。全部行こう」


 互いの指を絡め、ぎゅっと両手を繋ぐ。


 これで、私はなずなと恋人同士になった。



 もうアイラッシュのメンバーになんてなれなくて良い。


 私は、シオンのファンとして、なずなの恋人として、これからもアイラッシュを支えていきたい。



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― 新着の感想 ―
[一言] (≧∇≦) いやもう……感無量(≧∇≦)
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