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無地のスカートへの嫉妬

作者: 青木幽鬼

無地のスカートの高校に入りたかった。綺麗な紺色のスカートの高校。皆は地味だと言うけれど、あの地味さは、誰よりも私に合っている。全国でも上位の学力の子たちが集まる高校。行きたかった。難しい勉強をしてみたかった。無地のスカートを、膝下までの長さのスカートを見せびらかして堂々と街を歩きたかった。 あと一歩で届かなかった。

試験が終わったあとは、緊張が解けたからか、みんなワイワイガヤガヤしていた。同じ教室の受験生は、同じ中学校の子達がほとんどだったが、私は誰とも話さず、無言で高校を出た。入試の日まで騒いで…馬鹿みたい。少しは、静かにしてほしい。そう思った。

合格発表の日、掲示板に乗る番号の中に私の番号は無かった。落ちたら泣くと思っていた。「いままで頑張ってきたのに」と。しかし、結果を見ても何も思わなかった。無心とはこの事かと思った。わざと泣こうと思っても涙は一滴も流れてこなかった。


その日の昼に、テレビで合格発表の様子が流れた。近所の中学の制服を着た女生徒が、笑顔でインタビューを受けていた。

「合格しました!今から制服合わせです!」と。落ちた私は、制服合わせに行ける訳もなく、家でゲームをしていた。そこでも無心だった。


得点を開示してみた。得意な数学で大幅に点数を落としていたが、ほかの教科は満点に近かった。数学…。数学があともう少し取れていたら。後悔しても仕方がない。滑り止めで受かった高校に行かなくては。ここでも涙は流れなかった。


滑り止めの高校は、制服が可愛いと評判だった。チェック柄のスカートが確かに可愛い。ただ、真新しい制服を着てみても、無地が良かった。無地のあの、スカート。どうしても後悔の念が残る。それでも涙は出てこなかった。

入学して、人と話すのが苦手な私も友達がたくさんできた。新入生のお泊まり会や、体育祭、文化祭で仲が深まった。周りの友達も私と同じく、「無地のスカートの高校」を落ちていた。「いま楽しいんだから、もういいじゃん。」彼女たちは、そう割り切っていた。私もそうだと思っていた。


街で無地のスカートの女生徒を見かけた。見たことある顔。中学の同級生で、私が少し苦手な子だ。楽しそうに、同じ制服を着た同級生と話している。ワイワイガヤガヤ。あの日、私が馬鹿みたいと思った張本人。馬鹿みたい…馬鹿みたい…。


あれ?私、どうして泣いてるの?自然と、涙がこぼれ落ちた。嫉妬は良くないよ。私が落ちたからってあの人には関係ない。あの人が受かっているからって私には、関係ない。私も今の高校楽しいんだから。楽しいんだから…。


馬鹿みたいなのは、私だ。



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