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第8話 クセ強い メイド登場 身の危険

 さて。次は何をしよう?

 ベッドの上で跳ねるのにも飽き、再び周りを見回す。


 目に留まったのは、ふたつのドア。

 ひとつは部屋の奥の窓際にあって、もうひとつは廊下側。



 もしかしたら、あのどちらかは……ウォークインクローゼットだったり?

 何着――ううん。きっと何十着ってドレスが、収納されているに違いないわ!



 好奇心に駆られてベッドから飛び降りると、まずは、廊下側のドアの前まで駆けて行く。

 両手で取っ手をつかみ、勢いよく開け放ったら……案の定。ロリータファッション好きの人達が泣いて喜びそうな、(きら)びやかなドレスが数十着(……いや。百着以上はあるかも)、色別に並べられていた。


「ひゃわー……。すっごい。ウォークインクローゼットってよりも、衣裳部屋かな? これだけあると、ワンシーズン毎日違う服着ても、まだ余っちゃいそう。……もったいないなぁ。子供なんて、どーせすぐに大きくなっちゃうのに。着回す服が数種類あれば、充分なんじゃない?」


 ブツクサぼやきながら、服と服の間を歩き回る。



 ……まあ、貴族様ともなると、服を着回すわけにも行かないのかもね。

 周りの目が厳しいとか、結構ありそうだし。



「でも……それにしたって、これは多過ぎでしょ」


 ピタリと立ち止まり、腰に両手を当てて、ウォークインクローゼット全体をもう一度見回すと、私は大きなため息をついた。

 すると、


「フローレッタ様あああああッ!!」


 耳をつんざく女の悲鳴――じゃない。呼び声が聞こえ、私はビクゥッと、その場で数センチほど跳ね上がった。


 何事かと思い、ドアの方を振り返ると、メイド服を着た女性が、部屋の入口付近に立っていた。

 そのメイドらしき女性は、何かを探すようにキョロキョロしていたんだけど、私と目が合ったとたん、


「フローレッタ様!! フローレッタ様フローレッタ様っ、フローレッタ様ぁああああーーーーーッ!!」


 名前を連呼しながら駆けて来て、呆然と突っ立っていた私に、ラグビーのタックルでもするみたいに抱きついてきた。


「ヒ――ッ!?」


 自分の1.5倍くらいの身長の女性に、力任せに抱きつかれたのだ。無事で済むはずがない。

 私は短い悲鳴を上げ、背中から床に倒れ込んだ。


 幸い、床には毛足の長いふかふかの絨毯(じゅうたん)が敷かれている。

 お陰で、頭と背中とお尻を思い切り打ちつけても、さほど痛みを感じずに済んだ。


「わぁああーーーっ!! ご無事でようございました、フローレッタ様ぁッ!! お倒れになられたとお聞きした時は、(わたくし)死ぬかと思いましたぁッ!! 心配で心配で、この三日というもの、ろくに眠れなかったんですよぉおおーーーっ!? ぅわぁああーーーんっ!!」


 メイドらしき女性は、私に(おお)いかぶさったまま、大声で泣き続けている。

 床と彼女に挟まれ、窒息(ちっそく)しそうだった私は、死に物狂いで彼女の背中を叩きまくった。


「わぁああーーーんっ、わぁああーーーんっ、わぁああーーーっ、…………ん?」


 泣き声が止み、彼女はハッとしたように私から離れ、後ずさった。


「もっ、申し訳ございません、フローレッタ様! 病み上がりでいらっしゃるのに、私ったらっ。ご無礼を働き、申し訳ございませんでしたぁっ!」


 今度は、まるで土下座するみたいに、深々と頭を下げる。


 ものすごい勢いで抱きつかれ、危うく窒息させられそうになった私は、大きく口を開けて深呼吸を繰り返した。そうすることで、バクバクと大暴れしていた心臓も次第に落ち着き、正常な状態に戻ったんだけど……。


 脳の方は、体より回復が遅かったらしい。

 何が起こったのか理解できず、しばらくは放心状態で、床で大の字になっていた。

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