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第7話 これは誰? 鏡の中に 美幼女が

(え…っ?……え? え? これ……私? この……天使みたいに可愛い女の子が? 世界中の〝キラキラ〟を集めて、ギュッと凝縮(ぎょうしゅく)して閉じ込めたかのような……素晴らしく可愛らしいこの子が、私? ホントに私なのっ!?)



 大きな鏡の前に立ち、真正面から、今の自分の姿を確認した瞬間。

 私は両目をまん丸く見開いたまま、動けなくなった。


 鏡に映っていたのは、


『とてつもなく腕の良い人形師が作ったアンティークドールが、魂を宿(やど)して生身の体を手に入れたとしたら、こんな感じになるのかしら?』


 なーんて思えてしまうくらい、美しい顔立ちの、五~六歳くらいの女の子だった。


 平凡な例えだけど、肌は雪みたいに真っ白で、きめ細かくて、柔らかそうなほっぺは、ほんのりとピンクに色づいている。


 クスミひとつないベビーピンクの唇は、大き過ぎず小さ過ぎず。上唇も下唇も形が整っていて、ふっくらツヤツヤ。とても柔らかそうだ。


 クッキリ二重の目は大きく、まつ毛は品の良い長さ。瞳の色は、綺麗な海をそっくりそのまま映したかのような、澄んだエメラルドグリーン。


 髪の色は、赤みがかった金。(確か、ローズブロンドだかストロベリーブロンドだか……そんなよーな呼ばれ方してる髪色だった気がする)

 背中の真ん中くらいまである豊かな髪は、波型にカーブを描いている。(確かこれ、〝波ウェーブパーマ〟とかってゆーんだっけ? その髪型に似てるかも)ふわっふわでつやっつやって感じ。


 着ているのは、淡いピンク地の……え~っと、ドレス風のパジャマ?……あ。ネグリジェってゆーんだっけ?

 こんなヒラヒラフワフワした服、寝返りしにくくないのかしら?……って、まあ、今までこれ着て眠ってたんだけど。


 とにかく、『こんな美少女(美幼女?)、今まで見たことない!』って衝撃受けちゃうくらい、素晴らしく可憐な女の子だった。

 少女漫画だったら、背中に大輪の花とか点描とかダイヤ型のキラキラとか、思いっきり描き込まれてそうなタイプとゆーか……まあ、そんな感じ。



「…………マジか」


 鏡の中の美幼女には、およそ似つかわしくない言葉を発してから。

 私はか~るく数分ほどは、口をぽかーんと開けたまま、固まっていたと思う。


 それからまた、しばらくの後。

 そろそろと両手を顔に近付け、左右の頬を同時につまんで、軽く引っ張ってみると――。



(あれ? 痛くない。……ああ、そっか。夢だもんね)



 やっぱりね~なんて思いながら、少し力を加えてつねってみる。


「で――ッ!?……イテテっ」


 今度は、すごく痛かった。

 慌ててつねるのをやめ、繰り返し頬をさする。――鏡の中の女の子も、痛そうに顔をゆがめていた。



 ……え、なんで?

 夢なら、痛くないはずじゃないの?

 なんか、めっちゃ痛いんですけど。



「痛みを感じる夢……ってのも、あるんだっけ?」


 つぶやきながら、さすさすと頬を撫で回す。

 そうしていると、もちもちスベスベの質感に、やはりうっとりしてしまって……。



(ハッ。――いけない! 触り心地がいいからって、いつまでも自分の頬を撫でてたって仕方ないわ。とにかく、これだけとびきりの美幼女になったんだから、夢から醒めないうちに何かしとかないと、もったいないわよね。……と言っても、何をすれば……)



 改めて、ぐるりと部屋の中を見回してみる。


 何度見ても、〝だだっ広くて豪華〟っていう印象は変わらない。

 更に、〝ロリータ系ファッションが好きって人に、すごく似合いそうな部屋〟って感想も付け加えておこう。



 ロリータ系でも、ゴスロリ(ゴシックロリータ)よりは、甘ロリ(甘めのロリータ)とクラロリ(クラシックロリータ)を足して二で割ったような……。

 甘ロリほど甘々でもないけど、クラロリほど落ち着いてはいない、ってゆーか。



 基調色はピンク&ホワイトでも、そこまでふんだんにレースやリボンが使われてるわけでもない、乙女系の部屋。

 うまく説明できないけど……とにかく、そんな感じかな?


 私は、もうちょっとシンプルな部屋の方が好みだけど。



 ……まあ、しょーがないよね。

 ここは〝フローレッタの部屋〟で、〝小鳥遊華(たかなしはな)の部屋〟ではないんだから。

 滅多に泊まれない高級ホテルにでも泊まってると思って、楽しんじゃうことにしよう。



「よーしっ。そうと決めたら――」


 回れ右して……よーい、ドン!

 ベッドめがけて駆け出すと、両手を広げてダイブ!



(わはっ。思ったとーり!)



 ベッドはほど良い弾力で、ふわふわふかふか。

 トランポリンほどではないにしても、軽く体が(はず)むくらい、作りはしっかりしていた。


「あははっ。寝返り打つたびミシミシってうるさい、うちのパイプベッドとは大違いー。やっぱ貴族様ってすごーい。すごーいすごーい。すっごーーーいっ!」


 行儀が悪いのは百も承知。ベッドの上で体勢を変えては、何度も体を弾ませてみる。

 生まれてからというもの、中流以下の生活しかしてこなかった私には、こんなことさえも、密かな憧れだったのだ。

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