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転生幼女と使い魔王子 ~父は推し。母は元悪役令嬢。不運からの再出発を強いられたので、モフモフ使い魔召喚で癒されます~  作者: 咲来青


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エピローグ

 ダリル達が魔界に戻った後も、私の生活に大きな変化はなかった。


 毎日、だいたい決まった時間にヴァーベナさんが起こしに来てくれて、まずは洗顔、歯磨き、それから朝食。


 普段は、住み込みの家庭教師さんがいるみたいなんだけど。

 家の都合で、一~ニヶ月実家に戻っているらしい。


 家庭教師さんがいる場合は、朝食の後、読み書きとかピアノとか、初歩的なことを教わるって話だ。


 とりあえず、家庭教師さんが戻って来るまでは、自由にしていていいってことなっている。


 私は夏休みをもらった気分で、部屋でのんびりしたり、ヴァーベナさんの手が空いた時には、ついてきてもらって、庭を見て回ったりした。(本来、貴族の子女が出歩く時は、必ず誰かがついているものらしいのよね。……もう何度も、一人でウロウロしちゃってるけど)


 ちなみに、私が家庭教師の人に教わっている間、ヴァーベナさんは、屋敷の細々とした仕事を任されている。

 彼女の手が空くこと自体、あまりないようだったから、自然と私は、部屋や書庫で過ごすことが多くなっていた。



 そうして、ダリル達がいなくなってから、一ヶ月ほどが経った今日も。

 私は部屋のソファに座り、書庫からこっそり持ち出してきた動物図鑑を、膝の上に広げて見ていた。



 ――え?

 どうして動物図鑑なのかって?



 決まってるじゃない!

 使い魔召喚する時に、どんな動物がいいか、吟味(ぎんみ)するためよ。


 ダリル達の時は、なんとなく『こんな感じの使い魔がいいな~』なんて、うっすら思い浮かべてただけって気がするから。

 正真正銘(しょうしんしょうめい)の使い魔召喚に挑む時は、どんな使い魔がいいかくらい、明確にイメージしておいた方が、成功率高くなると思うのよね。



「フッフッフ。次はどんな子がいいかな~? べつに、動物じゃなくてもいいんだって、この前会った時にリオが言ってたけど。妖精とかって言われても、実際に見たことないんだから、うまくイメージできないもんね。やっぱりモフモフがいいに決まってるわよ~。あそれ、もっふもふ♪ あそれ、もっふもふ♪」


 機嫌良く、図鑑のページをめくっている時だった。


「なーにが『もっふもふ』だコノヤローッ! 中途半端なマネしやがってぇえええッ!」


 ボフンっと。

 頭頂部に()()が落ちてきて。


「痛ッ! 痛い痛い――っ、痛いってばッ!!」


 何事かと思ったら、その()()が、頭の上で飛び跳ね始めた。


「うるせー、知るかッ!! すぐ解ける魔法なんざかけやがってッ!! おかげで、一日も経たねーうちに戻っちまったじゃねーかッ!! どーしてくれるんだこんガキャァアアアーーーーーッ!!」


 ボフンボフンと、(まり)みたいに飛び跳ねる物体。

 聞き慣れた口調から、とっくに誰だかわかっていた私は、大声で訊ねる。


「ちょ――っ、ちょっとダリル! ダリルなんでしょっ? どーしてまた、ポメの体になっちゃってるの?」


「知るかぁッ!! 朝起きたら、またこーなっちまってたんだッ!!……ったく。一日も持たねー魔法なんざかけてくれやがってっ! この役立たずがっ、ボンクラがぁッ!!」


「ええええっ?……な、なによそれっ? 一日も持たないってどーゆーことっ? ダリル達が魔界に戻ってから、もう一ヶ月くらい経ってるわよっ?」


「うるせーうるせーっ! 魔界と人間界じゃー、時間の経過速度がちげーんだよッ!! ルシアンが言ってたこと忘れたのかッ!?」


「あ。……そっか。忘れてた」

「――って、んなこたぁどーでもいーんだよッ!! 早く元に戻せってんだッ、このこのこのこのッ!!」


 飛び跳ねる勢いが強まり、私は頭を抱えてうずくまった。


「痛いッ! だから痛いんだってば! いい加減頭から下りてよーーーッ!!」

「うるせーうるせーうるせーッ!! 戻せ戻せ戻せ戻せぇえええーーーーーッ!!」


 ダリルはボフンボフン飛び跳ね続け、私は『痛い痛い』と訴え続けた。



 どういう事情かは一応わかったけど、このままじゃ(らち)が明かない。

 私は頭上に両手を伸ばし、ダリルが頭に着地するタイミングを見計らって、むんずとつかんで動きを封じた。


 当然、ダリルは『何しやがるこんガキャァア! 離しやがれッ!』と暴れまくる。

 私は強引に、頭から胸の前までダリルを抱き下ろした。


「もう。とにかく、ちょっと落ち着いてよ。またポメになっちゃったのはわかったけど、戻せって言われても無理だってば。私だって、どうやって戻したかなんてわからないんだから」


「何ィイイッ!? 無理だとぉおおおッ!?」

「うん。無理」


 即答すると、ダリルはグルルルとうなりながら、目を三角にする。


 どんなににらまれたって、無理なものは無理だし、わからないものはわからないんだから、どうしようもない。

 私とダリルは()(すべ)もなく、しばらくの間にらみ合っていた。



 ――すると。


「やれやれ。またしても困ったことになりましたね」


「もーーーッ! またクロネコになっちゃったじゃないかぁーーーっ! どーしてくれるんだよホントにぃーーーッ!」


「ふざけるな小娘がッ!! 丸くて重い物体には、二度となりたくないと言っただろう!? 美しいオレに今すぐ戻せッ!!」


 ルシアンさんはふわりと。エルマーさんはボヨンと。ヒューゴさんはドッスンと。ほぼ同時に落ちてきて、三者三様の反応を示した。


「あ……やっぱり。ダリルだけじゃなく、エルマーさんもヒューゴさんも、またネコとパンダの姿に変わっちゃったんだ……?」


 気まずくて、アハハとごまかし笑いをする。


「アハハじゃないよ、もぉおおーーーッ!」

「のんきに笑っていられる立場かおまえはッ!?」


 瞬速でツッコまれ、私は『……ですよね』とうつむいた。


「でも、本当にどーしよーもないんだってば。元に戻す方法なんて、私にだってわからないんだもの」


 ションボリしたまま告げると、ルシアンさんは深々とため息をつく。


「……致し方ございませんね。やはり、フローレッタ様が魔法を習得なさるまでの間、こちらでお世話になるよりほかないでしょう」


「はあぁッ!? この姿のまま、こっちに居続けなきゃなんねーのか!?」


 ダリルの問いに、ルシアンさんは静かにうなずいた。

 エルマーさんは、本物のネコがするみたいに、顔を前足で数回撫でると、


「まあ、そうするしかないよね。魔法は、かけた本人にしか解けないんだから。……まったく、しょーがないなぁ。不本意ではあるけど、僕達を元に戻せる魔法を君が習得するまで、ここにいてあげるっ」


 そう言って、プイッと横を向く。

 そっけない態度ではあるけど、そこまで怒っている風にも見えなかった。


「ありがとう、エルマーさん」


 嬉しくて、思わず頰がほころんでしまう。

 それを見たダリルとヒューゴさんは、


「しょーがねーな……。俺様も不本意だが、ここにいてやるよ!」

「オレも大いに不本意だが、仕方あるまい。――その代わり、できるだけ早く魔法を習得しろよ? おまえの寿命が尽きるまでなどは、とうてい待てんぞ!」


 照れくさそうに主張した後、やはりプイッと横を向いた。


「ありがとう、ダリル。ありがとう、ヒューゴさん。……ルシアンさんも、ありがとうございます」


 私はソファから立ち上がり、みんなに向かってペコリと頭を下げる。



 ……不本意なことをさせてしまって、申し訳なく思ったけど……。


 その一方で。

 『またみんなと一緒にいられる』と、心が(おど)ったのも事実だった。



「これからまたよろしくね!……フフッ。みんな、だーい好きっ!」


 私は素早くダリルとエルマーさんを抱き上げ、突進するみたいにして、ヒューゴさんに抱きついた。


 私とヒューゴさんの間に挟まれ、ダリルとエルマーさんは、苦しそうにうめき声を上げる。

 ヒューゴさんはヒューゴさんで、迷惑げに声を上げたけど……。

 私は一人上機嫌で、ダリルとエルマーさんごと、ヒューゴさんに抱きつき続けた。



(フフフッ。……もっふもふ♪ あそれ、もっふもふ♪)



 その間。

 私は頭の中で『もっふもふ♪』と、バカの一つ覚えみたいに繰り返す。


 そんな私とダリル達を、ルシアンさんは、少し離れたところで、穏やかな笑みをたたえて見守っていた。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございました!


 私の中では、まだまだ序章――という感覚なのですが、ひとまず、ここで完結とさせていただきます。(書きたいエピソードはたくさんありますし、〝プロローグ・完〟とする方が、より近い気もしますが……)


 作者の頭の中では、この先、主人公の推しである【きよこい】の主人公、アンジェリカが登場し、彼女の悩みを解決する手助けをしたり、リオとマック兄弟の仲を、ちょっとだけ良くする手助けをしたり……と、いろいろあるのですが。


 これらを書いていたら、またかなり長ーーーいお話になってしまいます(フローレッタが十代になって、魔法学校に入学してからのお話まで、浮かんじゃったりしてますからね。マジでキリがなくなっちゃいます)ので、一応、ここで一区切りとさせていただこうかと。


 他にも、続きを書かなければいけない話が溜まってますので……。

 まずはそちらから、少しずつ片付けて行こうかと思っているのです。



 ……私、ダメなんですよ。

 エタらせるのって、どうしてもできなくて。


 ものすごく人気のある作品があるのでしたら、そちらを優先して書く――とかも、考えられたのかも知れませんが。

 残念ながら、私の力不足で、まだそこまで人気のある作品を発表できていませんので。……どれも底辺作品ばかりですので。


 新作に手を付けるとか、この作品の続きを書くことより以前に、すでに書き終わっている作品の修正&公開を、第一に考えようかと思いまして。



 以上の事情により、この作品は一度終わりにしますが、いつか機会がございましたら、続きを書くこともあるかもしれません。

 ……ないかもしれません。


 今の時点で明言することはできませんが、書きたい気持ちはある! ということだけは、お伝えしておこうと思います。



 まあ、私の作品は、どれもすごく評価していただけているわけではありませんし、エタらせても全然問題ないとは思うんですけどね。

 自分の性格として、書き始めちゃったものは、最後まで書かないと気が済まないもので。



 一ヶ月半ほどの投稿期間ではありましたが、最後までお読みくださった方々には、心より御礼申し上げます。


 ブクマや評価、いいねなどしてくださった方々も、ありがとうございました! とても励みになりました!(無反応だと悲しくなりますからね……『書いてる意味あるのか?』って、自問自答が始まりますし。←いや、でも、それでも書くことは書くんですけどね。それでもどーしても、『心の栄養が欲しい』って、やっぱり考えてしまうものなのですよ)


 完結後も、評価、ブクマ、感想、レビュー、いいねなど、いつでもいつまでも(笑)お待ちしておりますので、どうかよろしくお願いいたします!

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