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転生幼女と使い魔王子 ~父は推し。母は元悪役令嬢。不運からの再出発を強いられたので、モフモフ使い魔召喚で癒されます~  作者: 咲来青


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第43話 満腹な 転生幼女 ソファごろり

(ああ……調子に乗って食べ過ぎちゃった)



 ヴァーベナさんが給仕を済ませて出て行った後、私はソファに座り込み、パンパンに張ったお腹をさすっていた。


 私の斜め前に立っているルシアンさんは、呆れたような冷めた目で、私をじっと見下ろしている。

 床では、ダリルとエルマーさんが、追いかけっこを再開させ、ぐるぐると部屋中を走り回っていた。


「うぅ~……。お願いだから、軽蔑(けいべつ)の視線を送らないで、ルシアンさん……」


 そんな目で見られなくたって、食べ過ぎは、嫌というほど自覚している。

 好物だらけと言っても過言ではない、幸せいっぱいのティータイムだったから、ついつい、夢中になってしまったのだ。



 ……そう。

 まさに、夢のようなティータイムだった。


 バターの香りがふんわりと鼻腔(びこう)をくすぐるスコーンは、側面にぱっくりと亀裂が入っていて、簡単に両手で割ることができた。(ちなみにこの亀裂、イギリスでは〝(おおかみ)の口〟と言われているらしい。※小鳥遊華(たかなしはな)の豆知識)


 割れ目にジャムとクロテッドクリームを乗せ、パクリとかぶりついた瞬間の、ほわぁ~っと体中に広がる幸福感と言ったら!

 外はカリっと香ばしく、中はフワっ、()つ、しっとりとした食感で、ジャムとクロテッドクリームのバランスも絶妙で……。


 も~~~うっ、いくつでも食べたくなっちゃう素晴らしさだったんだから!



 でもね。

 スコーンだけでお腹いっぱいにしちゃうのは、もったいなかったから、二個だけで我慢しておいたの。


 だって、クッキー類(ってゆーか、ショートブレッドとかジンジャーブレッド?)もヴィクトリアケーキもトライフルも、サンドウィッチもみーんな美味しそうだったし、実際、美味しかったんだもの!


 イギリス生まれのお菓子ばかりが勢ぞろいしてたのは、【清く華麗に恋せよ乙女!】が、イギリスの雰囲気をまとった作品だったからかしら?


 料理が美味しくないものだらけだって、不名誉なことが言われてる国だったりするけど……。

 比較的シンプルなデザート類は、私好みのものが多かったから、この点は嬉しい限りだったわ。



 ――ってことで、好物で満たされた胃袋は、全然後悔してないんだけど。

 ルシアンさんに冷たい視線を向けられ続けるのは、結構キツいものがあるのよね……。



 夢のようなティータイムの余韻(よいん)から、ようやく抜け出すことができた私は、再びチラリと、ルシアンさんの顔色を窺う。

 相変わらず冷ややかな、アメシストの瞳がそこにあった。


「だから、そんな冷たい目で見ないでってばぁ~~~。食べ過ぎて、みっともない状態だってのは、充分自覚してるんだから……もう、いい加減許してよぉ~~~」


 お腹をさすりながら訴える私から、一ミリも目をそらすことなく、


「私は、特に何も申してはおりませんが? ご自身が後ろめたく感じていらっしゃるから、そのような思い込みをなさるのではありませんか?」


 ルシアンさんは、一切感情のこもっていない声色で、淡々と告げる。



(うぅっ。後ろめたさかぁ……。確かに、それもあるだろうけど……。でも、〝目は口ほどに物を言う〟って、昔から言われてるじゃない。ルシアンさんの視線からは、そんな感情しか読み取れなかったんだもの~~~)



 まるで、『言いがかりはやめてください』って主張するみたいな、ルシアンさんのセリフに、私のダメージは更に大きくなった。

 ソファの背もたれからズリズリとすべり落ち、今や完全に横たわった状態だ。そのままの格好で、ダリルとエルマーを目で追う。


 彼らは『近寄るなっつってんだろ!』『まったまたぁ~。素直じゃないなぁ~』などと言い合いながら、部屋中をぐるぐると駆け回っていた。


 こうして見ると、猫が鼠を追いかけているみたいだ。

 あ、そうそう。アメリカのアニメの、○ムとジェ○ーって感じ。


 ダリルが、普通のポメラニアンくらいの大きさだったなら、○ムとジェ○ーを連想したりはしなかったんだろうけど。

 体長十センチちょいくらい(エルマーさんの半分以下)しかないから、犬よりも鼠の方に近いって印象になっちゃうんだろうなぁ……。



 つらつらとそんな事を考えていたら。

 改めて、『誰が二人を動物に変えちゃったんだろ?』という疑問が浮かんでくる。


 ルシアンさんは、この屋敷に召喚(?)されたんだから、魔法をかけた人とこの屋敷には、何らかの関わりがあるはずって、考えてるみたいだけど。


 でも、ダリルもエルマーさんも、魔界にいたんでしょう?

 魔界にいた人に、人間界側から魔法をかける……なんて離れ(わざ)、本当にできるものなのかな?



 疑問をそのままにしておけない私は、即座にルシアンさんに訊いてみることにした。


「ねえ、ルシアンさん。ダリルとエルマーさんって、魔界にいる時に魔法かけられたんでしょう? そんなこと、人間界にいる人にできるもんなの?」


「常識で考えれば、不可能でしょうね」


「わ。やっぱそーなんだ? じゃあ、魔法かけた人って、人間界にはいないんじゃない? ダリル以上に魔力持ってるのは、魔界でも数人くらいしかいないってことなら、その数人のうちの誰かが犯人……って考えた方が、一番納得できる気がするし」


「はい、確かに。そのように考えるのが、一番自然です。……しかし、ダリル様以上の魔力の持ち主数人は、すぐに思い浮かべることができますが……そのうちのどなたにも、ダリル様とエルマー様を()()()()()()()()()というものが、全く浮かんで参りません。そう考えますと――」


 そこで言葉を切り、ルシアンさんは意味ありげな視線を私に送る。

 きょとんとしつつ、彼が次に何を言うつもりなのか、無言のまま見守っていると、


「やはり、犯人は人間界にいるように思えるのです。私が推測するに、その犯人とは……フローレッタ嬢、あなた様である可能性が非常に高い」


 ルシアンさんは私の目をまっすぐ見据え、当たり前のことを告げるかのように言い切った。

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