第95話:日本水雷戦隊
日々の仕事が終わって帰宅しても眠くて中々、進みませんが95話を投稿します。
よろしくお願いします。
大湊基地から出港した新生水雷戦隊群は一路、太平洋上を出て南下する方向で調整が為されており意気揚々と航行開始する。
第一水雷戦隊:利根・大淀・雪風・冬月・涼月・春月・宵月
第二水雷戦隊:青葉・北上・夏月・満月・花月・山月・浦月
第三水雷戦隊:妙高・酒匂・光月・冬雪・磯島・宵口・寒月
第四水雷戦隊:高雄・春雪・風日・菊花・薔薇・雛菊・小峰
だが、全く問題がないとは言えなく第一・第二水雷戦隊は“おおわし”とのリンクが鮮明であったが第三・第四水雷戦隊としては突貫工事でもあったのでスムーズに作動していなくて調整中である。
時間さえあれば十分にいけたのだが大湊を出て太平洋を出た時に重巡洋艦“利根”が“おおわし”とのリンクにより米艦隊哨戒隊と接触する確率が濃厚と出て各水雷戦隊の司令官がTVモニターでどうするかを話し合う。
第一水雷戦隊司令官『田中頼三』大将は今は大事な時であり何とかやり過ごすように提案するが第二水雷戦隊司令官『三川軍一』大将は米国海軍の探査能力を考えればこの艦隊もいずれ見つかるのがおちだから急速果敢に突入して叩き潰そうと言う。
第三・第四水雷戦隊司令官は最近、昇進した若葉マークの提督であった為、二人の重鎮の会話に割り込まなかった。
「“おおわし”からのリンク映像を見たかと思うが戦艦モンタナ級二隻が含まれている。知っての通り大和級に匹敵、いやそれ以上の性能で武装も50口径50cm3連装砲塔を4基12門、両用砲は新型の54口径12.7cm(5インチ)連装砲を10基20門を装備していると言う。まともに突っ込めばいくら装甲を硬くしたとしても撃沈されるのは確実といえるからここは慎重に行こうと思うが?」
田中の言葉に三川は少しだけ考えると事はこの局地戦だけではないので小沢海軍大臣か木村司令長官にお伺いを立てるのが筋だろうと言うと田中も頷く。
五分後に木村と小沢の連名で攻撃の許可を出すとの事で恐らく最後の水雷戦隊での戦いになるから思いきり暴れろとの命令を受信する。
そして最後にこう記されていた。
「有泉提督からの報告だが、日本本土一帯上空の電離層を搔き乱すので敵さんのレーダーシステムは一切、使用不可能になるから貴官達の伝統ある戦いの奮戦を期待する」
この報告を見た田中と三川はTVモニター上で苦笑いしながらも頷く。
正直言えば介入して欲しくないのだがマンモス戦艦相手はどう考えても分が悪いのは明らかで敵のレーダー射撃は精彩無比だということだから有泉の提案を受け入れる事にする。
「このまま行けば会敵まで後、五十分後か! 見張り員に見張りを厳とするように伝えるのだ」
日本艦隊は順調に南下して岩手沖に達すると快晴であった星空輝く夜から急に濃霧が発生してその霧は増々濃くなっていく。
「……天祐我にありか? この霧も例の未来から来た技術の賜物か?」
「さあ? だが、敵味方のレーダーが使えない以上は同じ土俵だったが我ら日本海軍水雷戦隊のお家芸を繰り広げれば勝利の美酒を味わえるな。敵は霧の中ではまともに動けないが俺達は充分に動ける」
三川の言葉に田中も力強く頷くがそれは他の艦でも同じであった。
駆逐艦“雪風”艦長の寺内と駆逐艦“涼月”艦長の工藤も水雷戦隊本来の戦いが出来るなと闘志あふれていたのである。
そして……重巡洋艦“利根”見張り員が人間離れした驚異の視力で米国艦隊を発見する。
「敵艦隊接近! 方位三三〇、距離八万八千! 交戦距離までおよそ十五分!」
「艦種識別、戦艦二、甲巡三、乙巡二、駆逐十 敵戦艦はモンタナ級の模様!」
「田中司令……どうなさいますか?」
「逃げるのは性に合わない! 勿論、戦うさ! 総員戦闘準備はいいか?」
田中の言葉に各艦からTVモニターを通じて了解の仕草が舞う。
この時、米国艦隊では日本艦隊の存在は一切、探知出来ていなかったというかそもそもこの海域にノコノコと出て来ることは一切ないと油断しきっていたのである。
戦艦“モンタナ”艦橋では『ルイス・バイデン』大佐がのんびりとコーヒーカップを手に持ちながら副艦長と話していた。
その他の艦でものんびりとしていてどの艦も警戒心が皆無でレーダーも全く使用出来なかったが天候の仕業だと言うことで天気図を取り寄せたりしていた。
そんな所に勇猛猛々しい日本水雷戦隊の艦が単縦陣で米国艦隊に急接近していたのである。
「全艦、統制雷撃で攻撃に移行せよ!」
米国艦隊と違って日本水雷戦隊各艦には“おおわし”から送られてくる正確な敵艦の座標をリアルタイムで受け取っていて各艦の魚雷発射管がゆっくりと回転していく。
駆逐艦“雪風”艦橋で寺内が魚雷発射管担当員から発射準備完了の連絡を受けていた。
田中の元に全艦艇から魚雷発射準備完了との連絡が入ると共に統制雷撃で一撃で敵艦全隻を仕留めることを誓う。
「敵は俺達を完全に舐めている! ヤンキー共の尻を思いきり蹴り上げてやれ! 全艦、統制雷撃開始!!」
田中の命令の元、各艦から四発の特殊魚雷が放たれる。
時速六〇〇キロという凄まじい高速で獲物に向って行き数分後、次々と大音響が周囲の海域を震え上がらす。
その瞬間、不思議なことに突然濃霧が嘘のように消え去る。
彼らは信じられない光景を見る。
米国艦隊全隻が火柱を上げて大火災に包まれていて少し時間が経った時に真っ二つに折れて轟沈していく様相が見られる。
「……モンタナが模型のようにいとも簡単に……真っ二つに折れていく……。他の艦も火災を上げながら急速に轟沈……俺達は夢でも見ているのか?」
この攻撃で米国艦隊の生存者は……無しであった。
田中と三川はいとも簡単にあっけなく米国艦隊を殲滅して唖然としていたがようやく我に返ると歓喜の嵐が艦隊を包み込んでいる実感が沸いてくる。
日本水雷艦隊は引き続き、隊列を組んで南下していく。
次話は久しぶりに伊400の出番です




