第70話:進撃の日本特殊部隊
東京軍事裁判で刑に付せられた人物は何故か殆ど陸軍に多いですが何故でしょう?
巷で言われている陸軍悪玉、海軍善玉と言う設定を見直さないといけないのかもしれないと思う日々です。
伊400は無事に黄海に侵入して現在、大連市沖十キロ水深五十メートル地点で停止していて後方から来る輸送船団到着まで待機していた。
「船団到着まで後三時間強ですね、それまで“おおわし”から送られてくる旅順近郊の映像でも見ましょう」
日下と石原と小沢は第一会議室に移り、スクリーンを展開する。
間も無く日没になるが旅順から大連までの細長い半島にはソ連軍の戦闘車両を始めとする人員を載せた輸送車が満ち溢れていた。
「旅順港を拡大しましょう!」
日下がCIC徳田に命令すると直ぐに返答があり映像が拡大して間近にいるような風景が映し出される。
石原と小沢はあまりにもの鮮明な映像に度肝を抜かれていた。
「……何という代物だ! こんな衛星が未来の世界中の国が所持していると言うのか」
「偵察という概念が崩れてきますね?」
二人が感嘆している横で日下はジューコフ大将が司令部を置いている二百三高地に切り替えるとソ連国旗が無数に立っていた。
「先ずは伊400からMOAB弾を放ち旅順港付近の防衛施設を破壊します。全弾使用して旅順近郊を更地にする感じで徹底的に軍事関係の区域を破壊します。敵の反撃能力を壊滅させたのを確認して輸送艦を旅順港に突入して全軍を揚陸します。後は、ジューコフの所まで一気に進撃です」
日下の説明に石原達は強く頷くと板垣の武運を祈る。
そしてそれから数時間ばかり色々な話をしている内に輸送船団が伊400真上を通過したとの連絡が入る。
「……それでは作戦に移りましょう! メインタンクブロー! 浮上開始!」
日下の命令にて伊400はゆっくりと浮上していき海面に静かに無音浮上する。
丁度2100時で新月状態の真っ暗だったが各輸送艦や駆逐艦に小型誘導装置を貸与しているので各船は順調に旅順港に向かって行く。
「攻撃開始から十分後に港に突入ですね、徳田! 準備は良いか?」
「はい、既にMOAB弾を装填しています! 目標ですが座標K2P1地点直上で爆発させます。そこには大規模武器弾薬置き場になっていますので爆発の衝撃でそれも誘爆するかもしれません」
徳田の言葉に日下が頷いて腕時計を見る。
「発射カウントダウン十秒前だ!」
日下は腕時計の秒針を見つめている。
石原と小沢も息を呑んでスクリーンモニターを凝視している。
秒針が十二時を指した時、命令を出す。
「撃ち方~始め!!」
その瞬間、轟音をあげて十五センチ砲からMOAB弾が放たれる。
凄い振動が伊400船体を震わすが日下達にとって心地よい振動であった。
「続けて第二弾・第三弾装填して発射だ! 初弾命中まで三秒!」
その瞬間、旅順港奥にある燃料・弾薬が集積されている場所の真上で爆発する。
巨大な火柱が立ちあがると共に凄まじい爆風が周囲を薙ぎ倒していく。
重戦車といえども木の葉が吹き飛ぶように飛ばされていく。
巨大なエネルギーは地面を抉り取りクレーターが出来る。
続けて第二弾・第三弾が次々と別区域に真上で爆発する。
関東軍を全滅させた後に重防御陣地を構築していて通常ならば制圧するのは難しいがMOAB弾の発するエネルギーは想像を絶するばかりか地面に建っているありとあらゆる構築物を吹き飛ばして更地にしていく。
悲惨なのは防御手段がない生身の軍人達で一瞬にて身が引き裂かれるがこれは身分の関係なしに全て平等であった。
僅か数分で旅順港を起点とした半径数キロ地点は更地になりその近くにある二〇三高地麓の施設まで破壊される。
一瞬で更地になった旅順港周囲を見た石原と小沢は思考停止していた。
その時、大連方向から敵機接近中との報告が入る。
「敵機は百十五機です!」
「よし、MOAB弾を敵編隊の上空で爆発させるのだ!」
日下の命令で徳田はコンピューターで弾き出された地点を入力してMOAB弾を放つと同時に敵編隊の上空真上で爆発したMOAB弾によって一瞬で粉々になり跡形もなく消し飛ぶ。
旅順近郊の軍団は壊滅状態になり大パニック状態に陥いっている所に輸送艦が旅順港に突入して続々と元関東軍精鋭百名が上陸すると同時に“90式戦車”五両が重厚なキャタピラ音を響かせて進撃する。
スクリーンモニターでそれを確認した日下は大連港及びその周辺の軍事基地を破壊する事を決定してMOAB弾の発射を命じる。
旅順港沖合から轟音を上げて放たれる悪魔の爆弾ミサイルは大連港の施設を木端微塵にすると同時にその付近に建設されて駐機していた航空隊も一瞬で粉々になって更地状態になる。
大連方面司令部も壊滅して全員が爆風によってバラバラに引き裂かれて絶命する。
この様子を二百三高地頂上から見ていたソ連軍満州侵攻総司令官ジューコフ大将は茫然というか何が起きたのか? という事も忘れていた。
「……何が起きた? 天災か? ツングースカ大爆発みたいに隕石が爆発したのか?」
ジューコフの眼前と言うか頂上から見た旅順港周辺は跡形もない更地状態になっていてほんの数十分前に見た煌びやかな旅順港要塞が更地になったのをみて信じられなかった。
その二百三高地の麓から凄まじいスピードで重厚な音を立てて進撃してくる戦車の認識を失念していて思考が元に戻ると急いで迎撃命令を出すが先ほどのジューコフの状態は他の兵士達も同じであったので反応が遅れた。
“90式戦車”は二百三高地の防御陣地を易々と破壊しながら登ってくる。
かつて日露戦争の時に名将乃木希典大将を散々に悩ませた二百三高地の鉄条網やコンクリート製のトーチカも90式戦車の百二十ミリ砲の前には砂の城状態であった。
板垣征四郎は凄まじい性能の90式に感動すると共に歓声を上げてその後に続く。
この時のジューコフに逃走と言う言葉が思いつかなくてそれは他の幕僚達も同じであった。
あまりにもの凄まじい爆発で旅順港一帯が更地になったのだから……。
90式戦車が暴れている隙間を狙って板垣率いる関東軍がジューコフの司令部に突入するとジューコフ以下の幕僚達がやっと逃走しようとしていたが直ぐに観念して両手を上げて降伏の意思を示す。
板垣はソ連の名将中の名将に敬意を表して敬礼すると自分の名前を言うと貴方達の身柄を拘束して捕虜としますというとジューコフは力なく頷く。
「さあ、長居は無用だ! 急いで二百三高地を駆け下りて撤退する! 時間の勝負だ」
板垣の命令の元、百名の部隊はジューコフ将軍以下十名の高級幕僚を捕虜として急いで元来た道を掛け下る。
殿として90式戦車が後方を守護していてくれたので容易に旅順港まで戻ることが出来ると同時に輸送艦に乗り込んでいく。
その後から90式戦車も来て再び輸送艦に収納される。
二等輸送艦の一隻の内の船長が艦橋の窓から叫ぶ。
「全員、乗ったか? 露助野郎の戦闘機数百機がこちらに向かってきているぞ! 直ちに出港する」
四隻の輸送艦が後進を始めて離れていく。
遥か水平線から爆音が聞こえてくると同時に突如、遥か彼方の上空で耳がつんざく程の爆発音が聞こえたかと思うと爆音は消えたのである。
伊400発令所で輸送船団に向かっていた二百機のソ連空軍機を吹き飛ばしたのを確認すると日下は頷く。
「よし、これで暫くは輸送船団が襲われる海域から出る時間は稼げたであろう」
この一連の凄まじい出来事に石原と小沢は終始、魂が抜けた表情で茫然と少しも動かないでスクリーンモニターを眺めていたが日下からの報告で我に返る。
「石原閣下と小沢閣下に報告致します! 板垣閣下率いる精鋭部隊は何とジューコフ以下十名の高級幕僚を捕虜として無事に輸送艦に乗り込んで転進中です」
日下の報告にやっと石原は頷くと共にあまりにもの戦果に唖然とする。
「……まさか……あのジューコフ将軍を捕虜にした……信じられない」
石原の言葉に小沢も信じられない様子で頷くが事実なのだからこれからどうするかを考えないといけませんね? と石原に言うと彼も頷く。
「……ふっ、板垣征四郎……ここ一番の大手柄じゃないか! これは関東防衛戦の布陣の一部を変えないといけないかもな」
かつて満州事変を共に行動して見事に成功させた相棒の活躍に石原は素直に喝采を送る。
そして日下は自分達の世界ではA級戦犯として処刑された板垣征四郎と言う軍人がこの世界では栄光を掴んだことに心で喝采と拍手を送る。
「さて、輸送船団が無事に舞鶴まで帰港するまでこの伊400で迎撃しますか」
この攻撃でソ連軍の被害は甚大で戦死者七万名、喪失車両は五千両にも及び数年分の備蓄食料や燃料弾薬が喪失して施設は粉々に破壊されて更地状態になったので最早、大連と旅順の港湾機能と地上部隊が駐留する意味がなくなったのである。
ちなみに大連港と旅順港は伊400によって完全に跡形もなく破壊されてしまい復興するのに百年はかかるぐらいの被害を残したのである。
あのジューコフを捕虜にしましたが扱いはどうするのでしょうか?
この後の後始末の展開は私も予想していなかったので思案しないと^^;
思いつくまま打ち込んだので。
あ~><明日はチョコの日ですが私には一切、何も関係ありませんが仕事終わりにチョコケーキを買って独りで食べる予定ですW(泣)




