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第66話:石原莞爾の防衛作戦

遂に石原莞爾の防衛方法が明かされます。


「な、何ですと!? 首都機能を……移転する? 松代大本営に!?」


 石原莞爾の言葉に流石の他の将官が吃驚仰天して椅子から立ちあがるが石原は冷静な表情で淡々とその理由を説明する。


「首都移転だが別におかしいことは無い! 明治維新で京都から江戸に首都を移した事例があるし何も永久に東京を捨てることは無い。そして、一時的だが米軍に帝都及び関東地方を明け渡す」


 もう一つの爆弾発言に殆どの出席者が唖然とするが日下と有泉は石原の考えを見抜いたので何処かで援護射撃をしようとお互い、目配せするがその必要はなかったのである。


 今回、参加している者達は流石に冷静沈着で自制心を保てる人物であったがクーデター前の面々がいるときにそんなことを言えば間違いなくその場で斬られていたであろう。


 しかし、この石原の提案に噛みついたのが山下大将と今村大将・畑大将であった。


「……石原閣下? 小官の耳がおかしくなければ閣下はこの帝都及び関東を米軍に明け渡すと聞こえましたが?」


 三人の言葉に石原は表情を変えずに頷くとこの件は、裕仁陛下も承知していて万事この石原莞爾に全てを任せるとの勅命書も頂いていると言うと陛下の方に顔を向ける。


 全員が裕仁陛下の方に顔を向けると陛下は真剣な……表情で頷くと声を出す。


「朕は石原莞爾にこの日本の行く末を預けたのだ! 石原が敗れるときはこの私もこの国の一人として殉じる覚悟である! 朕の覚悟に異議を唱える者は遠慮なくここから出て行っても構わない」


 裕仁陛下の御言葉に石原の提案を反対していた三名も素直に引き下がると陛下の御心に臣民は従いますといい、石原に続きを促す。


 石原は再び関東侵攻戦について話す。

「敵は必ず、相模湾と九十九里浜に侵攻してくる! 恐らく地上軍全て上陸すると百万規模になるが何も一切抵抗しないで帝都を明け渡すという事はない。現在、多摩丘陵一帯に防衛線を建設していて印旛沼方面にも巨大な要塞平坦陣地を構築してそこで上陸軍を足止めするが時期を見て後退する」


 石原が関東地方の巨大な地図を会議室の机に広げる。

 そこには詳細な地名を地形及び配備軍団の規模等が記されている。


「……ふむ、閣下の作戦はこの両方の要塞陣地で敵の出血を出させて帝都を明け渡して兵糧攻めにするという事ですか?」


 地図を見ながら樋口季一郎が答えると石原は初めて笑みを浮かべる。

 他の者達もじっと地図を見つめていたが東條英機が石原に質問する。


「成程、閣下の作戦は意表をついていますが忘れてはならないのが海上部隊の存在ですよ? それを叩かねば……あっ!!」


 東條英機が何か思いついたようで日下達の方を見ると目が合った日下はゆっくりと頷くと起立する。


「そこからはこの小官が説明します。石原閣下、よろしいでしょうか?」


 石原は笑みを浮かべて頷く。


「ここからは私が説明させて頂きますが敵が上陸完了した時に、伊400及び残存日本海軍全ての艦艇で総攻撃をかけて一隻残らず撃沈します。伊400の性能なら十分に可能です! それと残存艦艇は駆逐艦や潜水艦が主ですが伊400に搭載しているAI誘導魚雷を全艦に搭載してもらいますのでアウトレンジ攻撃で連合軍の艦船を海底に速達で送ります」


 日下の言葉に有泉が引き継ぐと我々には“おおわし”という宇宙空間から人工衛星を以て全てを見通す力を持っていますので敵の兵士一人一人の位置でも正確に表示させることが出来ますので隠密作戦というものは連合軍には無理だと説明する。


「この関東防衛線の最大の要が伊400潜水艦だ! この伊400が無ければ間違いなく数週間で世界地図から日本と言う名前が消滅する。故にこの作戦において日下少将達の活躍が必須条件になる」


 その時、今まで黙っていた小沢が口を開いて懸念している事を答えると他の者達が石原の方に顔を向ける。


 小沢は現時点での米軍の目的はこの地球上から我々を含む黄色い猿と言う人種を抹殺する目的で攻めて来るのではと質問する。


 この質問に石原の答えは理にかなっていて小沢も納得する。


石原は、伊400がこの世界に来なければそうなっていただろうと思うが現在の世界情勢がそんな悠長な事をする暇がないと言う。


「現在、壊滅した太平洋方面軍の代わりに欧州派遣軍が続々とスエズ運河や喜望峰周りで太平洋に出撃しているがその欧州は現在、無防備状態と確認できた。そこで中野学校に命令をしてある工作をしてほしいと依頼して間も無く答えが出る」


 現時点での石原莞爾の目と表情は正に満州事変の立案や実行した時の雰囲気を思いきりだしていた。


「無防備状態になった欧州にソ連軍が雪崩れ込みたくなるような情報を意図的に流すと共に工作を仕掛けたから数日以内に連絡が入るだろう」


 この石原の言葉に東條・畑・山下の三名は満州事変の事を思い出す。

 その時、神大佐が失礼しますと言い入室してきて走り書きしたメモを出席者達に渡して部屋の端に移動する。


 その走り書きのメモを見た全員が息を呑む。

 その内容は、ソ連軍の一師団が突如、停戦ラインを突破してベルリン全土を支配すると共にそのまま西進する。


 それに引っ張れるようにソ連軍の部隊が続々と動き始める。

 その内容を見た石原莞爾は満足そうに頷く。


「欧州の大部分は赤化するだろうが英国や米国はそれを良しとしない筈! 建て直し中の艦船や航空機を全て日本に向ける事はないと断言できる」

 


次話もなるべく早くあげたいと思っています。

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