第55話:悪魔の出撃前夜
おはようございます、数日ぶりですが投稿します。
アメリカ合衆国首都“ワシントンD.C.”ホワイトハウス大統領執務室にてトルーマン大統領は欧州からの大部隊を移動するための各種書類の決裁をしている所である。
「むう、パナマ運河が破壊されたのが大きい……」
トルーマンは壁に貼られた地図を見ながら呟く。
現在、欧州からは続々と部隊を満載した輸送艦や大西洋艦隊が太平洋に向けて航行しているが南米マゼラン海峡とスエズ運河方面に分かれて移動している所である。
先行している『アイゼンハワー』元帥は既に米国のニューヨークに帰国していて都市をあげて彼の栄光を讃えている所であった。
そんな事はトルーマンにとってどうでもよくて早く欧州軍を展開して日本本土侵攻の為の兵力が欲しかったのである。
「……それまでは原子爆弾を大量に造って日本が未だ占領している所や本土に落とさなければならない」
その時、執務室に続く廊下を駆け足で駆けつけてくる秘書官が凄い形相で執務室内に駆け込んでくる。
「だ、大統領! 一大事です、ロスアラモス研究所で重大な事故が発生しました! 生存者無しの全滅という事です」
トルーマンは持っていたペンを落としたがそれに気づかないで秘書官に怒声な感じで喋る。
「どういうことだね? 生存者無しとのことだがスチムソン長官やテラー博士達はどうなのか?」
秘書官は、それについては未だ何も分からない状態であるが偵察機の報告では大会場があった場所付近は数百メートルのクレーターが出来ていてその周囲も全て更地になっていて何もない荒野と化しているという。
それと原子爆弾が爆発した時に出来るキノコ雲も先の二か所で発生したが今までとは桁が違う大きさであるとも報告する。
トルーマンは唸り声をあげたが直ぐに現地調査をしなければならないから州兵を始め陸軍に部隊を送り込ませるように命令する。
この時点で放射能の危険性は未だ十分に浸透していなくトルーマンは本土防衛部隊五個師団を派遣する事に決定する。
もし、この時にテラー博士がいれば放射能に対する防護方法を伝えた筈だがそれは永遠に叶わなくなったばかりか放射能汚染や放射線病の全貌を知るのはまだまだ先の事になる。
「ボブ秘書官、統合作戦本部に行き現在、太平洋上の基地に何発の原子爆弾があるか至急に確認して報告して欲しい」
ボブ秘書官は一礼をすると執務室を出て行き足早に大統領の命をこなしにいく。
それから三十分が経過した時にボブが戻ってきて報告するとトルーマンは唸り声をあげながら溜息に似た息を吐く。
「明後日に原子爆弾二個を積んだ輸送船がマニラ港に到着する予定だがそれしかないのか……(私の勘だが恐らく原子力兵器技術については数年間は停滞する筈だから使用しないで研究用に保管しておくのもいいが……)よし、一発だけB-29に搭載して日本本土の都市に落とそうか」
そこまで考えるとトルーマンは、未だ空襲を免れている日本の都市をピックアップする事にする。
「広島・長﨑・京都・奈良・小倉の五都市が未だ通常の街並みを残しているのか。ふむ、カーチス・ルメイにそのうちの一つだけ好きな場所に原爆を投下せよと命令するか」
トルーマンはそう呟くと別の秘書官を呼び出してマニラ空軍基地にこの文面の無電を送るようにと言う。
頷いた秘書官がその内容を持って統合作戦本部に持っていき大統領の命令が伝えられてそのままマニラに送られる。
「……最早、日本本土を焼き尽くして日本民族をこの地球から抹殺するまでこの戦争は終わらない……。これが神の我々白人に対する使命だから……」
逆クーデター政権によって東久邇宮の名の元、国体護持の保障があればポツダム宣言を受け入れる覚悟があると言ってきているがオリンピック作戦に参加した人員及び艦船の被害を考えるととてもこのまま戦争を終わらせることが出来ないのでトルーマンは頭を悩ませていた。
正直言うと彼はもう戦争にはうんざりでポツダム宣言を受け入れると言ってきている日本の提案に賛成だったのだが心の何処かにある黄色人種にここまでやられっぱなしと言う屈辱があった。
「……もし、欧州軍を始めとする全将兵三百万の派兵が失敗すれば……」
トルーマンはワシントンD.Cを覆いつくす雨雲を窓から眺めながら呟く。
♦♦
その頃、マニラ空軍基地の司令部ではカーチス・ルメイを始めとする各方面隊の基地司令をも含めた作戦会議が行われていて太平洋上に散らばっている現在直ぐに実戦に参加できる稼働機について話をしていた。
「明日の1200時にて太平洋上及び大陸の基地から掻き集めた稼働機が集結する! 実に三万機で爆撃機六千機・戦闘機一万一千機・艦上雷爆機九千機・輸送機二千機でその他支援機が各方面から掻き集めた兵力だ」
三万機という数字に各司令官は感嘆の声をあげてこれで一気に日本国内に残る残存航空機を殲滅して来年に実施されるコルネット作戦の露払いが出来ると喜びの声に溢れていた。
カーチス・ルメイも頷いて一気に攻勢をかけるべく三万機を六波に分けて出撃してその内の一機に明日、運ばれてくる原子爆弾を一発だが投下する事を話す。
「ジャップの未だ無傷の大都市である五都市に同時に進撃して一面焼け野原にして原子爆弾を投下だ! 京都や奈良が燃える景色は壮大だぞ?」
カーチス・ルメイの言葉に基地司令部は大歓声で包まれる。
「さあ、明日に備えて今日は眠るぞ!」
さあ、原子爆弾を積んだ爆撃隊が出撃しますが果たして何処が狙われるのか?
三万機の同時侵攻を迎撃できるのか?
次話もよろしくお願いいたします




