表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/110

第3話:急転!?

 七月二十四日、0300時に伊400と伊401が潜望鏡で海面を監視していた時に遥か右の方向から一隻の艦船が航行しているのを現認する。


「……あの形状なら間違いない、確かに“インディアナポリス”だ」


 日下が潜望鏡で確認して高倉に変わると高倉も潜望鏡を覗いて確かにそうですねと言い潜望鏡から目を話すと不思議そうに質問する。


「何故、あの艦の名前が分かったのですか? 我々は訓練で暗闇の中でも分かりますが艦名まで分かりません」


 高倉の言葉に日下は一言だけ呟く。

「勘だよ、何故か冴えているみたいだ」


 日下の言葉に高倉はこれ以上、何を聞いても無駄であろうから日下に問うことは止めて代わりに魚雷発射室に確認を取る。


「藪連管長、魚雷の調子はいかがですか?」

 高倉の言葉に藪と呼ばれた連管長は絶好調ですと返事が返ってくる。


 日下は再び潜望鏡を覗くとインディアナポリスは伊400に全く気付いていなくて速度十七ノットで航行している。


 日下は頭の中でこの海域の潮の流れと魚雷速度と敵艦の速度を計算すると二分後に発射すれば命中判定に辿り着く。


「二分後に一番から四番まで発射だ! それと同時に伊401からも発射される」

 二艦共、既に魚雷発射口を開放してボタン一つで発射できるように準備していた。

 日下はストップウオッチを手にして秒針を見つめて長針が目的の位置に辿り着いた時に命令する。


「発射!!」

 圧縮されて一気に放たれる必殺必中の酸素魚雷四本が押し出される。

 それが合図で伊401からも八本の酸素魚雷が放たれる。


 日下はストップウオッチを再び見つめていて発令所にいる乗員に聞こえるように言う。

「命中まで二分三十秒!」


 伊401でも南部艦長がストップウオッチで計測しながら日下と同じ判断をする。

「命中まで三秒、二秒、一秒、命中です!」


 その言葉通り爆発音が八回聞こえる。

 大歓声が艦内に響き渡ると日下も高倉と握手しながら再度潜望鏡を覗くと既に艦の姿はなく辺り一面に残骸と死体が浮いていただけであった。


「一瞬で轟沈だったようですね、幸先がいいかと」

 高倉の言葉に日下も笑みを浮かべて頷くと伊401のいる方角に潜望鏡を向けると発光信号を送り再び潜航して先に行っている伊13と14との会合地点に向かうと送ると了解との意味である発行信号が送られる。


 二隻の潜水空母は何事もなかったようにゆっくりと潜航していく。

 発令所では日下が満足そうな表情で頷く。


「(これで広島と長崎に投下される原子爆弾は海底に消えたのだ! 日本は救われたのだ)」


 日下はこれで日本は救われたと思ったがそれは間違いでこの撃沈の結果、それ以上の災厄が日本を襲うことになるがそれはまだ先の話である。


 それから順調に航行を続けた第一潜水隊は八月十四日、米国西海岸都市のひとつであるサンディエゴ沖合を通過するがそこでとんでもない無線内容を受電したのである。


 その内容はそれぞれ驚愕する内容で秘匿とかそんな事はどうでもいいという感じで高出力通信塔から電波が流れ出していた、号外と言う名の元で。


先日、東京で軍部によるクーデターが発生して数百人の閣僚や実業家を始めとする戦争終結を企んだ者達を粛清したとの事でその中には親米と言われる井上中将・米内中将や敏腕と名高い東郷外相、天皇の厚き信頼を誇る木戸侍従長が真っ先に惨殺されると共に裕仁天皇が監禁されて何処かに連れ出されてしまい現在、東京では戒厳令が敷かれているとのこと。


「……信じられない、(俺がいた世界では前日にクーデター未遂が発生したが結局、決起はなく、玉音放送を以て戦争は終わったのに?)」


 この放送を他の艦でも受信したようで潜望鏡深度まで浮上して発行信号でやりとりをしたが結果的にこのまま作戦続行に決定する。


「本国がどんな状態になっていようとも作戦中止命令が出ていない以上、このまま遂行するのが正しい」


 有泉司令の言葉で全艦一致してこのまま南下することにする。

 だが、艦内ではそのクーデターの事について色々と会話が出ていた。


「パナマ運河を破壊すれば戦争終結に結ぶと思ったのだが違うか」

「恐れ多くも陛下を拉致するとは……首謀者は誰なのだろう?」

「このまま行けばやはりアメ公達は本土に侵攻するのだろうな?」


 乗員の一人が本土決戦の名を出した時、日下は背筋がぞっとして冷汗が大量に流れ込む。


 蒼ざめた表情の日下に気付いた高倉は心配して少しお休みなれば? との助言を受けてそれを艦内に放送して艦長室に戻っていったが艦長室に入ると同時に崩れ落ちるように寝台に横になる。


「……もしかしてインディアナポリスを撃沈したのは失敗だったのか? 前の世界で原子爆弾が落されたお陰で終戦が早まったと言われていたが……いや、そんな筈はない! 原爆が落とされる前に既にポツダム宣言を受け入れが決まっていたと」


 日下はそれから色々と考えている時に急に艦が思いきり揺れたのを感知する。

 高倉が艦長室をノックすると日下は直ぐに飛び上がって扉を開ける。


「どうした? 敵に発見されたのか?」

 日下の言葉に高倉は否定すると想像もつかない答えが返って来たのである。


「この付近で海底火山が噴火したようです! ここから至急、退避しろとの連絡です」

 その瞬間、凄まじい振動が伊400全体に広がり電気が消えて日下達は意識を手放したのである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ