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閑話①

悩みましたが投稿します。

 西暦20××年11月10日、陸上自衛隊北部方面隊“第5旅団”帯広駐屯地内にある旅団司令部に陸将補の肩章をつけた男性が一人でやってくる。


 毎日の日課である駐屯地内の様子を兼ねた散歩の帰りである。


 司令部入口にて歩哨警戒していた者がそれに気づいて敬礼をするとその男性もまた、敬礼で返すと彼に声を掛ける。


「大変な勤務だが司令部の安全を護ると言う重要な職務だ、引き続き励んでくれ」


 そう言うとその男性は司令部の中に入って行った。

 その姿を見ながら歩哨警戒の交代しに来た隊員が声を掛けて来る。


「交代だぞ、それにしてもいつ見ても『大窪道彦』陸将補は威厳があるばかりか俺達一兵卒にでも丁寧な言葉で気さくに声を掛けてこられる」


 彼の言葉にその隊員も頷くと共に申し送りをして再度、敬礼して別れたが交代した隊員が何やら意味不明な言葉を呟くのが聞こえたが特に彼は気にしなかった。


「……遂に時は熟した! 間も無く“第5旅団”全体が時を超えてあの世界に漂流するのだ。池田連隊長、待っていてください! 必ず強力なこの軍団を連れて戻ります」


一方、司令部の一画にある旅団長執務室の扉の前で『永原塔屋』一等陸佐が大窪の帰りを待っていて彼の姿を見ると敬礼して東京から重要と言うか奇妙な報告が入っていますと言うと大窪も首を傾げたが何も分からないのでとにかく部屋に入って詳しく聞かせてくれと言い、執務室に入る。


 永原もまた、大窪の後に続いて部屋に入る。

 大窪が椅子に座ると永原は東京から来た内容を纏めた十枚にも及ぶ資料を渡す。


「こんなにあるのか? どれどれ……」


 暫くの間、じっと資料を熟読して読み終わると静かにその資料を机の上に置くと腕を組みながら難しい表情をする。


 その表情を見た永原はやはりおかしい内容ですねと尋ねると大窪も頷く。


「人員配置転換をこの時期にやるとは変だがその配置転換の内容が信じられない。先ずは“鹿追駐屯地”の第五戦車大隊の一〇式戦車から二〇式戦車に入れ替えると言うが百両だぞ? 第7機甲師団と匹敵する戦力……しかもだ、未だ配備されていないレールガン搭載の超最新機密の塊である二〇式戦車を第五旅団の管轄下に置くというが……しかも各普通科連隊の人員入れ替えを実施するも新たに配置される人員が国際派遣部隊から帰国した部隊丸ごとを入れ替えると言う。その他にも色々あるが極めつけはこの“万能濾過タンク”だ、一台が1兆円はするというタンク車を五台配備すると言う」


 大窪の呆れた言葉の続きを永原が答える。


「いかなる水質の水、例え放射能や毒素に侵された液体を完全に濾過すると共に無害にする機能を持つ。ウイルスや細菌も濾過するという優れものと言うか伝説に相応しい車両を第五化学防護隊に配備ですか……」


「第五旅団の兵力は約三千六百名だが九割の人員を国際派遣部隊の人員と入れ替えるとの事でしかも全員が独身及び次男・三男のみだ。何処に喧嘩を仕掛けに行くのか? まさかロシアとかに?」


 大窪の言葉に永原はまさかという表情をしながらも完全に否定できなくとにかく東京からの要請を粛々と受け入れる事が先決だと言うと大窪も頷く。


「もしかしたら北方領土絡みかもしれないがもし、敵がこの地にやってきたとしても私は一人でも戦い抜く覚悟だ! 御先祖様に顔向けできないからな」


「そういえば大窪旅団長のご先祖様は確か……占守島の戦いで池田連隊長率いる戦車部隊の一員で壮絶な戦死を遂げられたと?」


「ああ、私もこの地が生まれ育った故郷だからね?」


 大窪陸将補の実家は釧路港を拠点とする漁師である。

 防衛大学時に故郷を離れただけで殆ど故郷の地で防衛に努めているのであった。


「閣下、今しがた東京から極秘暗号無線を受電しました! 今、解読中で二十分後にはこちらに持ってくるそうです」


 伝令員の言葉に大窪は増々、訳が分からなくなっていたが一つ言えるのは戦場に出陣するという事だろうと思った。


 暗号無線を解読した通信班から清書された内容が送られてくる。

 大窪がそれを受け取って永原と読むと見る見るうちに真剣な表情になっていき読み終わった時には無言状態であった。


「……冗談で言っているわけないよな? 来栖幕僚長からの直々の命令だと言うが正気なのか!? 第五旅団の戦力を以て平行世界の日本をソ連軍から守護しろと? 今から数日後に第五旅団傘下の全駐屯地と一緒に転移する?」


 大窪の言葉に永原は本当の話かもしれませんという。


「閣下も学生のころ、なろう系小説やラノベを読んだ世代では? 実は私もそうなのですが周囲には誰もいませんでしたが」


 永原の言葉に大窪は溜息をつくと窓辺に行き外を眺める。


 凍りつくような寒風が吹いていてこの格好で出れば間違いなく数分で凍死するであろうと言うレベルの寒さである。


「まあ、私達は日本国土及び日本国民を護るための自衛隊だ! 本音を言うとこの生温い世界に嫌気がしていたのだよ、幸いにも独身貴族で恋人もいないしね? 親ももうこの世にはいないから気兼ねなしに生きることが出来る」


 永原もまた、頷く。

 彼もまた、大窪と同じ境遇でしかも彼の両親は二十年前に起きたロシア海軍による不法侵入したとして漁船ごと拿捕されて牢獄の中で病死したのである。


 この時の両親の船は完全に日本の水域であったにも関わらず……。

「嘘か本当か分かりませんがこのままロシアに攻めろと言われたらいかがしますか?」

 永原の言葉に大窪はゆっくりと振り向くと頷く。


「行くさ、戦いに……ね? 恐らく国際派遣部隊も覚悟をしているのだろう。構成されているのは全員が身寄りもいなく知人も皆無という者達で構成されている部隊だからな」


 大窪はもしかしたら池田連隊長や樋口季一郎と出会えるのではと思う。


ソ連と米軍を相手にする予定?

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