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第33話:逆クーデター

 昭和二十年十一月二十日午前0時0分、豪雨と共に雷鳴が閃く帝都東京にて数百人の武装兵が石原莞爾及麾下の陸軍部隊と小沢治三郎率いる陸戦部隊と共に一斉に逆クーデターを引き起こす。


 裕仁陛下を始めとする皇族が軟禁されている松代大本営基地には『樋口季一郎』中将率いる第五軍が突入する。


 通常であれば数百人程度で重要な施設等を制圧は出来ないが天照の加護を受けていた彼達は誰にも見つからずに動くことが出来たのである。


「いいな、阿南閣下を始めとする上層部は一人残らず捕えるのだ! 海軍省の方は小沢さんに任せている」


 石原莞爾が陸軍省と国会議事堂及び各国営施設に突入する部隊に厳命する。

 最も、度重なる空襲で施設とは名ばかりの粗末な建物であるが。


 この時、偶然の一致かそれとも必然かどうかわからないが陸軍省に阿南・梅津・杉山及び東条を始めとする九割方の幹部が雁首揃えて会議をしていたのである。


 議題内容は、今後の関東を始めとする本土決戦の為に大規模な国家総動員法を発令して未だ国民が所有しているありとあらゆる資産を差し押さえる話しをしていた。


「徴収した物質は帝都防衛軍に重点的に配備します。そして、本格的な本土決戦に備えて戦うことが出来ない病人や老人を強制的に処分する事を提案します。無駄な食糧を消費させない為にも。姥捨山作戦と名付けたいと思っています」


 上級幹部の一人がそれを提案すると他の参加者も手を挙げて賛成する。


「乳飲み子を始めとする戦力に何も貢献することが出来ない障害者や子供も同じく処分する事を提案します。乳飲み子とか幼児を抱えたままではお国の為に命を懸けて戦うことが出来ないので」


 正に正常な思考を持つ人が聞いたら真っ青になる言葉を彼らは平気で実行に移す事を考えていた。


 そんな考えを持つ狂気的な幹部の言葉に阿南を始めとする指導者達も常識を失っているかのようにその提案に頷く。


「うむ、乾坤一擲! この日本が滅びるか生き残るかの瀬戸際だ、国民も喜んで指示に従うだろう。もし、反対するような輩は非国民として容赦なく取り締まるのだ」


 その時、部屋の外側で銃声が聞こえたと同時に数十人の武装した兵が突入してくる。

 数人の幹部が銃を引き抜こうとしたときに彼らは容赦なくその幹部の額に銃弾を撃ち込んでいく。


「無礼者!! ここを何処だと思っているか? 恐れ多くもこの国の運命を決める神聖不可侵な聖域だぞ」


 一人の上級士官が叫んだ時にその士官の額に躊躇なく弾丸を打ち込む武装兵。


「何がこの国を憂いる神聖不可侵な聖域? 反吐がでるわ、亡国の無能が集まる場所ではないか?」


 そう喋りながらゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた陸軍中将の軍服を着た人物が入ってきたときに全員が驚く。


「い、石原莞爾!? 馬鹿な、貴様は郷里でいつ死んでもおかしくない重篤者だと聞いていたが?」


 石原莞爾と犬猿の仲である東条英機が驚愕した表情で叫ぶと阿南達も絶句しながら信じられない表情をしている。


「ふん、天照様の御神託を受けてこの国を亡ぼす奸賊を始末するために地獄の底から蘇ってきたのだよ」


 石原の部下達が阿南達を次々と拘束していく中、杉山が狼狽しながら発する。


「石原君、私達を拘束したとしても我らには陛下がいらっしゃる! 貴官達は直ぐに逆賊者として刑場の露と消えるのだ」


 杉山の言葉に石原は薄笑いを浮かべると口を開いてその内容を聞かせる。


「無駄だよ、既に陛下は奸賊の手からお救い申した。今頃は北部軍管区の樋口中将の庇護の元にいらっしゃる」


 石原の言葉に杉山達は信じられない表情をすると共に崩れ落ちる。


「ああ、今回のクーデター首謀者たる大竹中佐は拘禁した。陛下は今回の行動に今まで見たことがない怒りで問答無用で処分せよとの事。数日の内に裁判が開かれるであろう。覚悟しておくことだな」


 石原はそう言うと踵を返して部屋を出ていこうとすると阿南が真剣な表情をしながら尋ねる。


「一つだけ聞くが我々を拘禁したとしても最早、連合軍とは講和等不可能で関東侵攻は間違いなく行われるぞ? 貴様はそれに対抗する方法を持っているのかね?」


 阿南の言葉に石原は足を止めて数秒間、何かを考えていたが阿南の方に顔を向けると答える。


「確かに難しいですな、しかし正気を失った貴方達よりはまともな戦いを出来ると自負しています。それに……いや、やめておきましょう」


 石原はそう言うと部屋から出ていく。

 その姿を拘禁された幹部達は口々に罵るが問答無用とばかりに連行されていく。

 一方、海軍省でも偶然というか大西を始めとするクーデター関係者たちが一同勢揃いしている所に小沢率いる陸戦隊が突入して拘禁に成功する。


「小沢!! 貴様は何をしているのかわかっているのか? 恐れ多くも皇軍の将官に相応しくない行動をしているのが」


 大西の怒声に小沢は冷静な表情を心掛けていたが内心では憤怒であった。

 怒りを抑えながらゆっくりと大西の言葉に反論する。


「既に奸賊の手から陛下をお救いした。大西さん、ここからは我々がこの国が滅亡しないように貴方達に代わって戦い抜いていきます。御自身の進退は大西さんが決めてください、陛下の怒りは相当でこのままだと逆賊として永遠にこの国の歴史に残ることになりますよ?」


 こうして石原達の逆クーデターは見事に成功する。

 僅か一時間で達成したことは正に加護を受けていなければ可能ではなかった。

 だが、このクーデターが成功した翌日、驚愕な報告が飛び込んできたのである。

 それは、満州国境を越えて数百万のソ連機甲師団が雪崩れ込んできた事であった。


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