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第31話:転換点

 大日本帝国帝都“東京”

 伊400が上陸部隊を叩き潰した五日後……。


 度重なる空襲においても無事な国会議事堂地下会議室に政治の舵を握る人物たちが集結していた。


 『阿南惟幾』、『梅津美治郎』、『杉山元』、『大西滝次郎』、『大竹正彦』中佐の五人であった。


「大竹君、松代大本営にいらっしゃる陛下の御様子はどうかね?」


 杉山の質問に大竹は困惑の表情を出しながら侍従長等自分が信頼していた人物を暗殺したことで激怒していらっしゃるというと杉山は溜息をつく。


「困ったものだ! 陛下を欺く奸賊を排除しただけなのに」

「陛下は奸賊に洗脳されているのです、我々が早くその洗脳を解いて二千年の歴史を誇る神の国の導き手として目を覚まして差し上げなければ! これは臣下の責務です」


 大竹の言葉に皆は同意する。


「陛下を奪還する事を考えている国賊がまだまだこの国内に潜んでいるのは確かだ! 特高警察や憲兵隊に厳命して松代大本営に近づく怪しいものは問答無用に射殺して捕える事が出来ればどんな拷問もしていいから聞き出すのだ」


 梅津の言葉に大竹は立ち上がって敬礼する。

 そして大竹が椅子に座ったのを確認した阿南は現在の状況について話をする。


「聞けば九州に上陸した敵は壊滅状態で全軍が逃走したみたいだ」


 阿南の言葉に大西は無言で頷く。


「この大戦果は放送で日本全国に流しています。我が国の国民はこの大戦果に我々も後に続けと各地で声が上がっています」


「それはとても良い傾向だ。南九州に上陸した米軍は僅か三日間で二十万以上の人員を喪失しました。陸上部隊の殆どです」


「米軍、恐れるに足らず! 敵に必ず勝つという大和魂があれば例え何百万の敵兵が上陸しても一億人総特攻の精神でいけば最終的に勝利を手にするのは我々だ」


「大竹君、確認だが我が皇軍の中に不穏分子たる非国民は確認できていないのかな?」


 杉山の言葉に大竹は自信満々にその件については大丈夫ですと答える。


 クーデターの立案及び実行の全てを彼の手で行ったので反対する者は次々と粛清したのである。


「しかしまだまだ安心できない部分があります。国家総動員法の意味をわかっていない馬鹿達がまだまだいますがそこは見つけ次第、粛清していきます」


「うむ、所で大西軍令部次長! 海軍の再編成はどうかね? 関東侵攻時に艦艇もろとも敵艦に突撃して敵空母をしとめるという大和魂を発揮する為に」


「既に小沢中将を予備役から戻して艦艇の編成を任せています。考えが変わったようで我々に積極的に動いています」


「よろしい、九十九里浜にて敵上陸部隊を水際で阻止する計画だが陣地の建設は順調なのかな?」


 阿南の言葉に杉山が自信満々に頷く。


「そこは心配しなくてもいい、それと満洲や中国からも兵を引き上げて関東方面に配備する事を決定した。最終的には三百万は集められるだろう。それに勇敢果敢な国民も一人一殺の精神で戦ってくれる。国民義勇軍として約三千万人が」


「それだけ戦力があれば必ず敵兵は一人残らず倒せますね、所で武器はどうかね?」


「竹槍や鍬・鋤・鎌等身近にある物で戦うように国民に流布していますので何の心配もありません」


「そうか、所で九州に赴任した神君は元気にしているのかね?」


「残念ですが十一月三日、偵察機にて海上に出たところを撃ち落とされて戦死したようです」


 その言葉を聞いて梅津は少しだけ残念そうに呟く。

「そうか、優秀な人物だったのだが」


 その梅津の言葉が終わったときに阿南が答える。


「今日、ここにいない我が同胞に今回の内容を伝えよう! ご苦労であった」


 阿南の言葉で会議を終わる。


 その一部始終の会話を床下で聞いていた人物は心の中で狂気の沙汰だと呟いて静かに去っていった。


 そしてその人物は廃墟になっていた築地の廃屋に入っていく。

 そこに一人の人物が座っていた。


「閣下、只今戻りましたが直ぐにお聞きになられますか?」


 閣下と呼ばれたその人物は頷きその人物が話す内容を聞き終わると鬼のような形相になる。


「愚か者というか陛下を拉致するだけでは飽き足らずこの日本を滅亡に追い込んでいるではないか! 奴らは狂気に支配されている……」


 そう言うと閣下はゆっくりと立ち上がり、廃屋の外に歩いていき更地になっている周辺を見渡す。


 数か月前に起きた東京大空襲で殆どが焼け野原になったがその後も幾度となく東京にB-29の大編隊が爆弾や焼夷弾の雨をふらせていた。


 最早、壊れる物も焼かれるものもない更地を見ながら閣下は知らずのうちに涙が出てくる。


 その閣下の背後から人の気配がして閣下が振り向くと二人の若い軍人が笑みを浮かべながら立っていた。


「石原莞爾閣下! お初にお目にかかります。北部軍管区司令官『樋口季一郎』中将です、高名な閣下に声をかけて頂き有難うございます」


「お久しぶりです、石原閣下!」


 右手に包帯を巻いた若い軍人が石原に敬礼する。

「無事でよかったよ、神大佐! そしてよく来て頂いた。樋口中将」


 三人は固い握手をすると石原が声を発する。


「では陛下奪還と国賊を排除する為に動くとするか。私の作戦に同意してくれる同志の所に行こう」


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