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第29話:荷電粒子砲炸裂!

大隅半島、志布志湾方面の連合軍が上陸前に謎の攻撃を受けて壊滅した後、連合軍艦隊司令官『スプルアーンス』大将の元にハルゼー提督麾下の提督たちがやってきて陳情する。


「閣下、お願いがあります! 志布志湾の惨状は聞きましたが小官が思うに日本軍は我らが三方から上陸する事が予想していたと思われます。現状の今ならきっと日本軍は大勝の酔いに浮かれて油断していると断言できます! そこで閣下の麾下予備部隊艦船及びロケット砲揚陸艦を貸して頂きたいのです。それを以て油断している隙に一気に上陸して毒ガス弾を巻き散らして日本軍を叩き潰すのです」


 この陳情にスプルアーンスは少し考えるが結局、許可を与える事にしたのである。

 この時、彼の頭には焦りがあり深い洞察力が働かなかったのである。


 確かに机上以上の損害が出るのを覚悟していたがそれは数か月に及ぶ戦いで喪失したとする予想だったが僅か数日で約二十万人を喪失したとは予想外の事であった。


 序盤でここまでの損害を出たとあっては責任を取らされて予備役に左遷と言う事態が起こると考えて挽回しなければならないと考えていた。


「あのキンメル大将と同じ道を進むわけにはいかないのだ」

 スプルアーンスはエンタープライズの艦橋から外を眺めながら呟く。


 奇襲部隊の全容は戦艦四隻、護衛空母三隻、重巡四隻、軽巡七隻、駆逐艦十隻に上陸用支援艦艇二百隻に二万の兵士を満載した部隊が分離して南下する。


 沖縄方面に向かうと見せかけて日が暮れた夜間になった時、暗闇に紛れて一気に突入する作戦であった。


 戦艦“ニュージャージー” “アイオワ” “ミズーリー” “ウィスコンシン”の四十センチ主砲九門を積んだ最新鋭戦艦を先頭として威風堂々と航行している。


 その別働部隊を勿論、“おおわし”が探知していて詳細なデータを伊400と“さがみ”に転送していた。


 日下艦長はその別働部隊を荷電粒子砲を以て殲滅する事を決定したのである。

 そして、荷電粒子砲のエネルギーが放たれる。


♦♦


 戦艦“ニュージャージー”艦橋で分離部隊を率いている『ロバート・ミッチェル』大将は周囲にいる幕僚達と作戦の確認をしていた。


「現在、全艦に積んでいる砲弾は毒ガス弾だが風向きはどうかね?」

「海上から内陸部に風速十五メートルで吹いていますのでグッドタイミングかと? この風は後、数時間は吹く予定だと天気予報官が言っていました」


 ミッチェル大将は満足そうに頷くと海上を見る。

 夕焼けに染まった水面がキラキラと輝いていてこれが戦争中だとは思えなかった。


「よし、そろそろ転進を……うん、何だ……」


 水平線の彼方が光り輝いた瞬間、彼の意識は一瞬の内に狩り取られる。

 荷電粒子砲の光の束の柱は分離艦隊を呑み込んでいく。

 大爆発と同時に一片も残さず爆散して消滅する。


 数万トンもある戦艦が跡形間も無く融解して爆発と共に蒸発していき密集隊形で航行していた各種揚陸艦の殆どが荷電粒子砲の光に呑まれて消滅する。


 荷電粒子砲のエネルギーが尽きた時、元の情景に戻るが艦隊の八割が跡形もなく綺麗に破片一つ残さず消滅したのである。


 重巡洋艦“ハドソンⅡ”艦長『グランツ』大佐は何が起きたか分からず茫然としていたのである。


「何が……起きた? 右舷にいた“アイオワ”はどうしたのだ? 姿が見えないぞ」


 先程まで数キロ横に“アイオワ”が存在していたのだが姿かたちが一切、無かった。

 誰かが怯えた表情で震え声で叫ぶ。


「この海は魔の海だ!! リヴァイアサンやモビーディックが海底にいるのだ! 奴らは俺達を海の底に引きずり込んでいるのだ! 嫌だ、俺は未だ死にたくない!」


 一人の乗員の恐怖心はたちまち他の者に伝染してそれが残存艦隊全員に広がっていき最早、統制がとれなくなったのである。


 この時、一番落ち着かなければいけない艦長の殆どが同じくパニックになりあさっての方向に散りじりになっていく。


 この大戦果に当然、伊400内では歓声が沸き起こったが直ぐに問題点が発生して大わらわであったのである。


「伝導管、破損!!」

「バイパスが根元から溶けています!」

「圧縮容器の耐久度が限界点に達しています!」

「粒子格納容器、ヒビが入っています!」

「熱核融合炉の出力が安定しません! 臨界点には達する事はありませんが最大戦速航行は無理です」


 次々と入ってくる破損個所に吉田技術長は冷静に迅速に正確に記録しながら頷いている。


 その真剣な様子に日下達は邪魔してはいけないと思い通信室に移動して“さがみ”と連絡を取りTVモニターで有泉と会話する。


「衛星を通じて一部始終見ましたが凄まじい威力ですね? SFに出て来るような兵器が実際に見られるとは光栄です」


 有泉の言葉に日下も頷き現在の荷電粒子砲の状況を伝えると有泉は静かに頷いて修繕の為の基地も用意しているので来られたしと伝える。


「三十ノットで二日間の距離ですね? 了解しました、直ちにそこに向かいますが日本の状況はこれからどうなるのでしょうか?」


 日下の問いに有泉も暫く無言状態になるが柳本が横から答える。


「恐らくですが今回と同じ戦力を整えるには半年ぐらいは必要でしょう、それと正体不明の攻撃による精神的ダメージは遥かに大きい筈ですので来年の四月頃に再び動くと推測します。もしかしたら今度は直接、コロネット作戦を実施するかと」


 柳本の冷静な分析に有泉と日下は感心した。


「有泉さん、何とか本土の良識派と接触してあの逆賊政権を倒さないと最終的に日本を救うことは出来ません!」


 日下の言葉に頷く有泉だったが生憎とその手段が思い浮かばなかった。


「それはおいおいと考えましょう! それより日下さん、早く基地に帰投してください。早ければ早い程、出撃も早く出来ますので」


 日下は了解したと敬礼して通信を終えると発令所に戻る。


 艦長席に座ると吉田技術長がやってきて全てが想定内だったので基地に帰り次第、修繕に入りますと伝える。


「流石は吉田技術長、頼りにしていますよ! それでは私達の基地に帰投しよう! 未だ見ぬ我らの拠点へ! 潜航開始」


 伊400はゆっくりと潜航を開始していく。


 日下は船上カメラで陸地の方を見ると心の中で呟く。

「(必ず、帰ってくる!!)」


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