第28話:悪夢
リニュアール作品ですが展開が大幅に変わっています。
第五海兵上陸軍団『ハリー・シュミット』中将率いる軍団の内容は“第二海兵師団”“第三海兵師団”、“第五海兵師団”で八万の兵力で構成されていて南方戦線で日本軍と死闘を繰り広げた精鋭であったが現在、串木野の地にて前進できない状況で大隊長を始めとする士官が集結して会議をしていた。
「ここ串木野から鹿屋航空基地まで直線的に近いが日本軍のゲリラ戦法によって一日に五十メートルしか進めないがこれを打破する手段を遠慮なく言って欲しい」
ハリー中将の言葉に各師団長や大隊長を始めとする会議参加者から色々な議論が出たがやはり共通しているのが毒ガス弾等で無差別殺戮しながら前進するのがいいとの事である。
「やはり結論はそうなるか! よろしい、明日は装備変更で進撃だ」
その瞬間に突然、爆風が天幕を襲って吹き飛ばす。
ハリー中将を始めとする幕僚達も風圧で数十メートル転がる。
「何事だ!? 何が起きたのだ? 誰か報告しろ」
腰を痛めたようで押さえながら叫ぶとハリー中将の元に一人の若い兵士が駆け付けてきて沖合の艦艇が謎の攻撃を受けたことを報告するが信じられなかった。
だが沖合を見ると海を埋め尽くしていた上陸用舟艇や揚陸艦及び上陸支援艦が粉々になって残骸のみが海面を漂っているのを見る。
得体のしれない恐怖感を覚えたがこのまま何もすることも無く呆けて居られないので至急、三方面司令官『クルーガー』大将に報告をしろとの命令を出すと無線の所に行くが直ぐに戻って来た。
その表情は真っ青で震える声で絞り出すように言う。
「大隅半島と宮崎海岸に上陸した我が軍団が潰滅したとの事で前線は崩壊して収拾がつかない状況だとのことです」
彼の報告にハリー中将は信じられない表情であり何か言おうとしたときに再び大爆発音が沖合から聞こえてそちらを振り向くと別地点にいた小艦艇の集団が粉々に吹き飛ぶのが見えた。
「ああ……神よ……」
ハリー中将が呟くが彼の意識はここまでであった。
爆散した駆逐艦の破片がハリー中将の頭を吹き飛ばしたのであった。
頭がない首から血が噴水のように吹き出す姿は正にホラー映画であった。
この一連の惨状を見た兵士達は恐怖に陥りそれは前線に伝わり崩壊していくのだったがまだそれは暫くの時間がかかる。
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「これで三方面の連合軍はほぼ壊滅状態ですね? コンピューターの計算では最低でも二十個師団は壊滅したとの事」
“さがみ”CICルーム内でオペレーターがキーボードを打ちながら答える。
その報告を艦長席に座っていた有泉艦長はコーヒーカップを傾けながら頷く。
「……さて、後は伊400の最大最終兵器である“荷電粒子砲”の発射実験だな! 私も楽しみだ」
有泉の言葉に真横で立っている柳本も頷く。
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その伊400艦内では予想外の大戦果に沸いて日下達も吉田技術長たちと握手をしていた。
「しかし十五センチMOAB砲弾があれほどの破壊力とは……。初期のMOAB弾は大きさがとてつもなく大きくてB―52爆撃機クラスで運ぶのが主だったのですが」
暫くの間、MOAB弾のことについて話していたが日下が吉田の方を見ると彼も頷くと手をパンパンと叩いてこれから大本命の実験を兼ねた攻撃をすると答える。
「荷電粒子砲ですね? 腕が鳴りますね? して、目標は?」
高倉の質問に日下は勿論、米国機動部隊だよと言うと直ちに発射準備をしろとの命令を出す。
「荷電粒子砲用意!」
格納庫前方の甲板が左右に開くと射出レールが収納されて代わりに独立した荷電粒子砲発射装置が現れる。
機関室ではエネルギー粒子の回路の切り替えを行い荷電粒子砲発射管に伝達させる操作を開始する。
「発射管の圧力を上げて非常弁を閉鎖だ」
「荷電粒子砲発射準備に入る! 今から五分後に生活用電気システムをオフにして非常灯LEDシステムに切り替わる故、各自準備態勢に移行」
荷電粒子砲発射には莫大な電力が必要なため、エアコン等といった航行や戦闘に必要ない電力は全てカットされてその浮いた電力が使用される。
最も常識外に増幅するので必要ないといえば必要ないのだがそれが普通になっていたのである。
「荷電粒子砲バイパス用意完了! 異常認めず」
「バイパス接続十秒前! カウント開始、……二秒前、一秒前、バイパス接続! エネルギー伝導管及び圧縮弁開放!」
中性粒子が発生すると同時に次々と圧縮弁を経由して粒子加速器に投入される。
加速器により膨大な粒子が発生して次々と途切れることなく圧縮されていく。
「エネルギー充填百パーセント! 百二十パーセントまで圧縮充填します」
「……エネルギー充填百二十パーセント! 荷電粒子砲射出口開放!」
「電力増幅装置起動開始! 十億メガワットまで増幅」
この時、圧縮伝導管室内は前代未聞の粒子が圧縮・収束されていて逃げ場を求めていた。
「照準を沖合に停泊している機動部隊に設定しました! この発射で前代未聞多数の艦を殲滅できます」
機関室では在塚大尉がPCモニターを凝視している。
PCモニターの数値が十億メガワットを表示した時に艦内無線で報告する。
「重力アンカー作動開始」
射出口の奥が光輝いてきてそれが段々と強くなっていく。
「発射カウントダウン、十秒前……七秒前……三秒前……一秒前……発射!!!」
CICルームに設置されているトリガーを徳田が引くとカチリと音がする。
この瞬間、限界値まで圧縮収束された中性粒子が一気に開放されて凄まじい速さで一直線で撃ちだされる。
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