第24話:英国機動部隊の悪夢
それは突然、発生した。
英空母“イラストリアス”艦橋で南九州地帯の地図を幕僚達と机を囲んで開き議論していた時に突然、大音響が響く。
戦艦“キングジョージ5世”の巨大な船体が持ち上がると同時に第二砲塔付近から閃光が閃いたかと思うと巨大な火柱を上げて一瞬で船体がバラバラになり沈んでいく。
「な、何が起きた!?」
その瞬間、立て続けに地響きと同時に他の空母と戦艦が同時に海面から一瞬、飛び上がったと思ったら船体中央部がポッキリと折れて火柱を上げて沈んでいく。
悲惨なのは戦艦で狙ったかのように弾火薬庫に命中して爆発したので一瞬で誘爆して爆沈する。
勿論、そういう最重要な所は重防御と装甲で囲っていたのだが伊400から発射した魚雷には通用しなかった。
それとこの魚雷の特徴は通常魚雷は舷側に命中して爆発するのだがこの魚雷は船底で爆発して船体を構成している竜骨を破壊する目的であったのでこれが破壊されれば船体は真二つに折れて沈んでいく。
それが上部は重装甲で覆われていようとこの魚雷の前には蟷螂の斧状態であったのである。
前触れもなく突如、地響きと同時に火柱を上げて真二つに折れて沈んでいく大型空母や戦艦を見た各艦の乗員達は真っ青な表情となると共にパニックに陥る。
特に空母では多数の乗員が甲板上を走り回っている時に船底から真二つに折れてハの字になりながら轟沈していく時に巻き込まれて脱出する間もなく絶命する。
艦載機は九州方面を爆撃しに行くために全体の九割が出撃していた。
ロドニー提督の元に次々と報告が届くが全て悲鳴に似た報告であった。
「空母“フォーミダブル” “ヴィクトリアス” “ユニコーン” “インドミタブル”! 戦艦は“キング・ジョージ五世” “デューク・オブ・ヨーク” “アンソン” “ハウ”轟沈! 生存者……皆無!!」
「何だと!? 生存者はいないのか? せ……戦艦が全隻轟沈……」
「は……はい、退避する間も無く……轟沈です……」
「この“イラストリアス” と残りの空母“インプラカブル” “インディファティガブル”を直ちに退避させろ!! 一刻も早くこの海域から!」
ロドニーの言葉が発せられた瞬間、装甲空母“イラストリアス”が直下型地震に似た地響きと同時にロドニー達は吹き飛ばされて全身をしこたま障害物に激突して体全体の骨がバキバキと音がして折れるのを感じる。
激痛と共に意識朦朧のロドニーがいる艦橋に海水が怒涛の如く雪崩れ込んでいくと同時に彼の肺の中に海水が雪崩れ込んでいき苦悶の表情をしながら意識が薄れていくが最後に少しだけ呟く。
「……リヴァイアサン……モビーディック…………」
これが彼の最後の言葉だった。
“イラストリアス”は全乗員と共に海中に沈んでいった。
残りの空母である“インプラカブル” “インディファティガブル”も死神の鎌によって海底に引きずりこまれていった。
この惨状を見た英国艦隊の残存艦隊と乗員達は文字通りパニック状態になって統制が崩壊して各艦バラバラになり蜘蛛の子を散らすように……この魔の海域から逃げるように散って行くが無情にも大型巡洋艦や軽巡洋艦が海面から浮き上がると同時に凄まじい爆発と震動後にバラバラになって爆散していく。
この凄まじい情景を宇宙空間に浮かぶ“おおわし5号”が鮮明に色々な角度から一部始終を録画していた。
勿論、リアルタイムで見ていた“さがみ”・伊400内では歓声があがると共にあまりにもの凄まじさに息を呑む。
「艦長、これで……英国機動部隊は事実上、潰滅でしょうね」
高倉先任将校の問いに日下艦長は静かに頷く。
「まあ本土防衛艦隊H部隊はこないだろうからな、よし! ここからが本番だ。これより当艦は再び前進してMOAB弾射程距離まで陸地に近づいて発射する」
日下艦長の言葉に乗員達の気合が入った声が上がると共に伊400は再び潜航してMOAB弾発射地点まで航行する。
一方、“さがみ”では“おおわし”を駆使して三か所に上陸している連合軍の戦力を映像から解析していた。
「やはり志布志湾方面は防御が高く未だ攻めあぐねていますね? まあそれも明日には全滅して上陸するでしょうが」
「他の方面はどうかね?」
「宮崎方面は海岸一帯が制圧されて橋頭堡が築かれて宮崎市に向けて進撃中か。薩摩半島では上陸を許して鹿屋航空基地に進撃中……ふむ、攻撃するとしたらやはり明日に雪崩れ込むように上陸を掛ける大隅半島、志布志湾方面の敵だな」
有泉の言葉に柳本も頷くと早速、この情報を伊400に送りますと言い通信室に向かう為に艦橋を出て行く。
それを見送りながら有泉は再び情報を収集する為に詳細な映像を確認していく。
“さがみ”からその情報を受け取った伊400では日下艦長が発令所にいる乗員に説明する。
「……と言う訳で今から三時間後、明日にでも大隅半島に上陸する敵揚陸舟艇や戦車揚陸艦をMOAB弾にて殲滅に近い被害を出させる。この攻撃時は空母や戦艦を狙うのは二の次だ! 先ずは上陸部隊を殲滅する、大隅半島上陸を阻止すれば次は宮崎海岸一帯を制圧している敵部隊を殲滅する! 余裕があれば薩摩半島にも攻撃をかけるが異論のある者はいるか?」
日下の質問に誰も異論を唱える者はいなく決定する。




