第22話:上陸戦③
これからますます、激しくなりますが伊400の暴れっぷりを楽しんでくださいませ。
「よし、ジャップの息の根を止めてやれ!」
沖合に集結している連合軍空母から千機の艦載機が発艦して悠々と宮崎県の各都市に侵攻して爆弾を落としていき約二百機が低空飛行しながら日本人を見れば機銃照射で次々と撃ち殺していく。
漁業で生計を立てていた徳田一家を始めとする海岸付近に住んでいた人達は米軍上陸数日前に高千穂山内部に避難していたが艦載機の大編隊は宮崎県全てを更地にする勢いで無差別に爆撃していく。
その勢いで天孫降臨の高千穂一帯が轟炎の海に巻き込まれる。
火炎の風が避難していた人たちを巻き込んでいき阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていく。
家長の『徳田一徳』は夜空を好き放題飛んで機銃照射を浴びせていく米戦闘機を忌々しそうに睨むと吐き出すように言う。
「幸弘よ、お前は妹達を連れて北の方に逃げるのだ! きっと高天原の神々はお前たちを護ってくれる」
一徳の言葉に次男である『幸弘』は幼い妹二名の手を握りながら頷く。
「お前の兄も今はお国の為に海軍に入って戦っている筈だ! 戦死報告がないということはまだまだ生きているという事だ。生きて生き抜くんだ」
父親の言葉に幸弘は頷くとべそをかいている妹達の手を引いて北の方に駆け足で去っていった。
それを見送った一徳は満足そうに頷くと妻の幸恵に謝る。
「すまないな、俺の義足は最早使い物にならない。幸恵をおぶることもできない、現実的に見てもここが終焉の地だよ」
一徳は山頂から下を眺めると周囲全てが炎の海で火炎風が山頂に向かってくる。
空からは戦闘機の銃撃と爆弾を積んだ艦爆から焼夷弾の雨が降ってくる。
周囲の木陰に等に潜んでいた人々は次々と断末魔のうめき声をあげて倒れていく。
幸恵が一徳の腕を握り微笑む。
「あなた、この四十年間楽しかったですよ。何故か分からないけど私達の子は全員無事だと断言できます。きっと、この戦争を生き抜いて幸せな人生を歩むと。今は地獄ですが」
一徳はじっと幸恵の言葉を聞いていたがゆっくりと頷く。
「そうだな! 幸恵、俺達は神道を信じているが仏教では輪廻転生というものがあるらしい。記憶は失うが魂は違う時代に生まれ変わるとのこと。もし生まれ変わればまた、幸恵と一緒になりたい」
一徳の言葉に幸恵は微笑みながら手を握り締めて頷く・
「私もですよ」
その言葉を言い終わったときに二人の頭上に焼夷弾が直撃する。
♦♦
パリーン!!
伊400でのCIC担当席に座っていた徳田少尉は台の上に載せてあった家族集合写真立てを置いていたのだが揺れた気配なく写真立てが落ちてガラスが割れる。
「!?」
徳田が慌てて写真立てを拾うと両親の所だけがヒビが入っていた。
日下艦長を始めとした発令所にいる者が徳田の方へ振り向く。
「徳田、何があった?」
徳田はじっと写真立てを見つめながらポツリと呟く。
「天へ……召されたようです」
その表情は今にも泣き叫ぶ寸前であったが耐え忍んでいた。
日下は直ぐにその意味をくみ取ると徳田に優しく声を掛ける。
「少し疲れただろ? 席を外してトイレにでもいってきたらどうかね?」
徳田は席から立ちあがると発令所から出て行く。
それを見送った日下は高倉の方に向いて話す。
「……荷電粒子砲発射前に残存魚雷全てを敵機動部隊、そうだな……英国機動部隊を葬ろうと思うのだが? どうかな、高倉先任将校?」
「英国機動部隊をですか? 確かにそちらを先に葬る方がいいですね。米国とは違い戦時体制であっても米国みたいな生産は出来ませんからね! 賛成です」
早速、日下は“さがみ”に連絡を取って有泉に相談すると彼もまた、諸手を挙げて賛成してくれる。
そして直ぐに英国機動部隊の位置を捜すとの事。
「空母と戦艦を全て撃沈する! 奴らの魂に恐怖と言う恐怖心を植え付けてやるのだ! 神風以上の……恐怖を」
伊400の船内には前部と中部そして後部に三つのトイレが設置されている。
トイレの広さと機能は同じだが部署ごとに使用している。
勿論、二十二世紀の最新鋭トイレであったのですこぶる快適である。
ちなみに艦長専用のトイレもあるがそこは貴賓な方専用にしていて日下艦長は士官と同じトイレを使用している。
その中部のトイレの個室に篭った徳田は、こらえていた涙が溢れて嗚咽する。
ちなみに真っ青な徳田の姿を見た他の乗員達は彼に起きた事を知り気遣ってそのトイレには一切、近づく事はなかった。
数分間だったが思いきり泣いたお陰で少しは楽になると共にこの仇は必ずとってやると顔を洗いながら決意する。
徳田がCIC席に戻ると日下達は敢えて普通に接する事を決めていて徳田に“おおわし”から送られてくる英国機動部隊の動向等の確認を命令する。
しっかりとした返答をした徳田は慣れた手つきでモニター操作をする。
「現在の英国機動部隊の所在地は……種子島南東沖二十キロの地点にいますね」
徳田の言葉に日下は頭の中で瞬時に距離と時間と魚雷の速度を計算してこの最大速度を維持したまま行けば八時間後に射程距離に入る事が分かる。
「新見航海士、深度五十メートルを最大速度で衛星とリンクしながらインプットした航路を自動運転で進んでくれ」
新見は日下の命令に了解ですと言うと機関室に連絡する。
その姿を見ていた日下は改めて戦争の悲惨さを思い知ることになった。
「一体、人類は……最終的には何処に辿り着くのだろうか?」
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