第20話:サイパン・テニアン島攻撃!
“GBU-43 MOAB弾”はテニアン島基地のB-29が密集しているど真ん中で地上から約二メートルで爆発する。
MOAB弾は、地面に接触して爆発するのではなく核を含む大型爆弾の多くと同様に、地面に激突する直前にすさまじい爆発を起こす。
その威力は十一トンのTNT火薬に匹敵して「加圧力」によるものであり、爆弾が生み出す強烈な爆風のことで爆発地点から全方向に広がる強烈な爆風に見舞われれば、地下施設も地下道も、もちろん人間も木っ端微塵になり、何も残らない。
それを実証するかのように半径約八百メートル内にいる全てのB-29や護衛機P-51戦闘機、管制塔、掩体壕等が一瞬で破壊されて更地になる。
かろうじて一番初めに離陸した爆撃機と戦闘機は難を逃れたが僅か十機にも満たなかった。
「な、何が……起きたのだ!?」
先頭のB-29のコックピットで真っ青になったカーチル・ルメイが茫然としてテニアン飛行場を眺める。
その時、二回目の凄まじい轟音がしたかと思うと無数の破片が空中に舞い上がる。
サイパン島も攻撃を受けたようで凄まじい爆発音が聞こえたかと思うと飛行場が真っ赤に燃えている。
正体不明の攻撃は苛烈さを増していて数十回もの爆発音が機体を震わせる。
「……閣下、如何致しますか? どうやら謎の攻撃によってサイパン・テニアンの飛行場は潰滅かと……」
参謀が恐怖に満ちた表情をしながらカーチスルメイに言うと彼もまた、あまりにもの衝撃で思考停止していて参謀の言葉で我に返る。
既にサイパン島とテニアン島の大飛行場周辺では、大火災がおきていて消火活動も一切、していない状況でただ燃えているだけであった。
この時、両島の飛行場周辺は生存者0名でほぼ全員が一瞬で五体が千切れて跡形もなく吹き飛ばされたのである。
「俺は……悪夢を見ているのか? 千機のB-29と最新鋭戦闘機三千機が一瞬で灰だと? こんな馬鹿な事があるものか!」
コックピットで吠えていたカーチスルメイであったが頭を切り替えて取り敢えず、フィリピン方面に向かう事を決定して僅か七機のB-29と二機のP-51が日本本土に行くことなくフィリピンへ逃走したのであった。
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この状況を衛星を通じて見ていた日下達は改めてMOAB弾の凄まじい威力を思い知らされたのであった。
「十発程度だったが……サイパンとテニアンの飛行場としての機能は完全に破壊したと断定してもいいと思うが?」
日下の言葉にTVモニターで会話している有泉艦長と会話していた。
有泉は衛星を通じて送られてくる映像を分析した結果、各基地周辺はペンペン草も生えていない本当の更地になったことを確認した旨を伝える。
「カーチスルメイは取り逃がしたみたいだが恐らくはフィリピン方面に行くだろう。さて、私達はこのまま九州南沖に進出して荷電粒子砲を以て攻撃するつもりだ」
日下の言葉に有泉は笑みを浮かべながら頷くと幸運を祈ると言って通信が終わる。
そして伊400は、再び深く潜航して海面から姿を消す。
九州南方面へ針路を取り海中航行している時、日下は艦長席に座って荷電粒子砲の取り扱いやその内容、原理を読んでいた。
「おや、艦長? 荷電粒子砲について何かご質問があればどうぞ」
熱いお湯が入っているケトルを手に持っている吉田技術長が日下に尋ねると彼は頭を上げて頼んでいたお湯の御礼を言う。
そして、紙コップの中に粉末コーヒーを入れてケトルのお湯を注ぎながら吉田技術長に質問する。
「吉田さん、私が記憶している限りでは荷電粒子砲の発射テストはしていないがまさか実戦が実験だという事は……?」
日下の質問に吉田は頭を掻きながら艦長の言う通りで試験テストは実戦ですることを朝霧翁に進言してそれが受けいれられたことを話す。
吉田は怒られるか? と覚悟したが日下は少しだけ目を瞑り何かを考えていたが目を開けるとにっこりと笑みを浮かべて頷く。
「理由があるのだろう! 荷電粒子砲は未だ何処の時代の世界でも完成していない代物で試験テスト実施したとなれば注目度が半端ではないと思ったからでは?」
日下の言葉に吉田はその通りですと力強く言うと日下は笑いながら実戦でテストするのはいいが技術長は何かその点で心配事があるのですか? と聞くと吉田も真剣な表情になって頷く。
「十中・八・九ですが二発撃てばバイパスや伝導管、増幅容器にひびが入ります。そのひびがどれぐらいかは分からないので二発の荷電粒子砲を撃てば一旦、さがみと合流して修理しましょう」
吉田の言葉に日下は頷くがその二発で効率よく発射して上陸作戦を頓挫させるぐらいの被害を与えられることが出来るのなら万々歳なのだと思う。
「……俺達は何処までこの世界の日本を助けることが出来るのか? やはり本土の中に同志と言うか仲間が欲しいものだ」
日下は目を瞑り少し考え事をしていた時、不意にある軍人の姿が瞼に浮かんではっと目を開けたがその時には正確に思い出せなかったのである。
「……何処かで見た軍人であったが誰だっただろうか? あの軍服は陸軍の上級階級だったと思うが?」
日下敏夫と石原莞爾は未だ、出会うことは無いが縁と言う名の和が出来た瞬間でもあった。




