第19話:上陸戦と伊400
海岸の蛸壺に潜んでいる日本軍をシラミ潰しに潰していきやっと海岸線を確保することが出来たがまだまだ頑強な抵抗が米軍を待ち受けていたのである。
海岸から宮崎市中心まで進撃していく途中で特に真夜中に空襲で崩れ落ちた廃屋や崩壊したビルの隙間から次々と爆弾を抱えた市民からなる挺身隊が米軍に飛び込んでいき被害を与え続ける。
しかも突っ込んでくるのは軍人だけではなく女・子供・老人をも含む非戦闘員が爆弾を抱いて飛び込んでくるのである。
この攻撃で精神を病んだ兵士も続出する。
「嫌だ、こんな土地で死ぬのは御免だ! 帰らせてくれ!」
最前線を進む兵士達の一部は睡眠不足による判断不足で自軍を敵と勘違いして同士討ちをする部隊も出て来るのである。
その隙を狙って正規な攻撃ではなく特攻のみで襲い掛かってくる日本軍に真剣に悩んでいたのである。
それは宮崎海岸だけではなく残りの二個所も同じであった。
各上陸集団の指揮官は非情な命令を出す。
「ジャップを見れば軍人とか関係なしに撃ち殺せと」
その命令で本当に降伏をしようと白旗を上げて来る非戦闘員の集団も問答無用で撃ち殺されていくのであった。
あまりにもの被害が続出するので何とかしろと志布志湾沖の総大将が乗艦する戦艦“ミズーリー”に陳情が毎時間ごとに届けられるのである。
『クルーガー』大将は、毎時間ごとに届けられる苦情の内容を見て怒りに震えてそれを叩きつける。
「イエローモンキーのジャップ共! よくも神に選ばれし我々白人を殺すとは! 正に蛮族の行いというものよ」
隣にいた“ミズーリー”艦長『ヘンリー』大佐がサイパンにいるカーチス・ルメイの爆撃隊に援助を求めてみては? と提案するとクルーガーは邪悪な笑みを浮かべるとその意見に同意する。
「大佐、素晴らしい提案だよ! 直ちにサイパンに連絡を送れ」
だが、サイパン・テニアン島からは永遠に援護が来なかったのである。
何が起きたかその時には何も分からなかったのである。
♦♦
サイパン島から南西二百二十キロ海上にて伊400は停止してレールガン発射準備を実施していた。
熱核融合炉から発電される電力がレールガンに注ぎ込まれていく。
「二億メガヘルツまで充填だ! 焦らず丁寧にしかし迅速に」
在塚機関長の言葉が機関制御室に響き渡ると機関科の全員が「よし!!」と声が発生する。
満足な表情で頷く在塚の元に日下からサイパンとテニアンの航空基地を跡形もなく破壊するから連続発射になるとの連絡が入る。
在塚は直ぐに無線マイクで大丈夫です! 荷電粒子砲も直ぐに撃てるエネルギーを生産しますよと。
発令所内のCIC担当席で徳田大尉が人工衛星から送られてくる映像と座標を照らし合わせて入力している。
後部十五センチ砲に“GBU-43 MOAB”が装填される。
砲雷科から砲塔にMOAB弾が自動装填されたことが徳田大尉に報告すると操作しているタッチパネルに表示される。
「いよいよですな、このサイパン・テニアン基地を破壊した後は九州方面へ行き総攻撃気を掛けるのですね?」
高倉先任将校の質問に日下は頷く。
「ちまちまと魚雷を撃つのは手間暇かかるから荷電粒子砲を使用してみようと思う」
日下の言葉に発令所にいた乗員が歓声を上げる。
海上自衛隊出身の航海科所属『鮫島康人』二等海尉が興奮しながら遂にSFの物語でもボルテージが上がる必殺兵器の発射シーンが見られると同期である新見に言うと彼も笑いながら頷く。
「徳田、発射までの時間はどれぐらいだ?」
「発射まで後、十秒です! 火器管制オールグリーン! カウント開始」
タッチパネル表示されているデジタルタイマーが0に近づいていくにつれて緊張する。
デジタル表示が0になった時、徳田は正面にある発射ボタンを押す。
物凄い轟音と振動が艦全体を震わせる。
「次弾装填! おおわし5号との連携を崩すなよ?」
次弾が自動的に装填されて六十秒後に再び轟音と振動と共に撃ちだされる。
「さて……と、カーチスルメイの御命を頂戴できれば万々歳だな」
♦♦
マリアナ諸島の各島々の飛行場に配備されているB29が滑走路を埋め尽くして出発合図を待っている。
昭和十九年六月に行われたマリアナ沖海戦に圧勝した米軍は各島に飛行場を建設して空の要塞B-29を配置していた。
今回の日本本土侵攻の為に千機のB-29とそれを守護するP-51戦闘機二千機が参加することになっていた。
最高司令官『カーチス・ルメイ』大将は滑走路に並んでいるB-29を見ながら悦に入っていた。
「ダウンフォール作戦、素晴らしくて良い響きだ! 黄色い猿共の国を草木一本残さず焼き払ってやる! そして一人残さず焼き尽くしてジャップの民族をこの地救上から一掃するのだ! これこそが神から与えられし神命である」
カーチス・ルメイの搭乗機が一番先に離陸した後、次々と長巨大爆撃機が滑走路を滑走し始めた時、水平線の方からキラリと光った瞬間、正にB-29が集結して離陸待ちのど真ん中で突如、閃光が起こる。
地上から僅か約二メートルの高さで……。




