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第1話:転移、新たな戦い!

 西暦1999年8月……広島県呉市の何処にでもある一軒家にて一人の老人が今正に命が尽きようとしていた。


 この時の日本全体での話題は有名なノストラダムスの大予言が話題No1を占めていたが、その老人は特に興味を示す事もなく間も無く命が尽きようとしていたのである。


「……長い、長い人生だった。やっと皆と逢える時が来たのだな」

 その言葉を言い終わった直後、静かに息を引き取る……筈だったが気が付くと白銀色の空間に立ったまま漂っていた。


 その老人が自分の容姿を確認すると何と現役時代の軍服姿であると共に若返っていたのである。


「こ、これは……? 俺は死んだ筈だが……これは夢か? いや、死者が夢を見るわけがない」


 周囲をキョロキョロしていると正面に光輝く玉が出現するとそれを触るようにと言う命令が頭の中に語られる。


 吃驚してまじまじとその玉を凝視していたが吸い込まれるように自然と手が伸びて玉に触ると凄まじい閃光が周囲を照らしたかと思うと直ぐに治まったが、その空間に若返った軍人の姿形はなかったのである。


 若返った人物が我に返ると昔見た景色が目の前に広がっているばかりか直ぐ目の前には忘れるはずがない物がそこにあった。


「これは……伊400じゃないか? そうだ、確かに伊400だ!」

 伊400、終戦間近に完成した航空機3機を搭載する世界初の潜水空母であった。


 あまりにもの懐かしさに自然と目から涙が溢れて来た。

「……懐かしいな、幻と言え最後の最後で再び出会えるとは……」

 感慨深く伊400を眺めていた時に突然、背後から呼びかけられる

「日下中佐、ここにおられましたか! 間も無く最終確認の報告が行われます。会議室までお越しください! 有泉司令官がお待ちです」


 この言葉に後ろを振り向いた日下と呼ばれた若者は、呼びかけた者にここは何年で何の最終確認? と尋ねるとその伝令は不思議そうな表情をしながら答えてくれる。


「今は昭和20年7月20日で大湊海軍基地ですが? パナマ運河攻撃に出撃されるとお聞きしましたが?」


 この若者の言葉に忘れていた記憶がナイアガラの滝のように脳に流れ込んでくる。


 だが、自分が生前? 体験した事と違うのに気が付く。

「おかしい、確かあの時はパナマ運河攻撃は中止になってウルシー環礁攻撃に向かうことになって結局は有泉さんは自決して私達はそのまま伊400と401を米国に引き渡して終わったはずなのだが?」


 『日下敏夫』中佐、大東亜戦争を潜水艦一筋で生きて来た生粋の潜水艦乗りで部下の信頼が厚かったが彼には逃れる事が出来ない罪があったのだ。


「……とにかく司令部に行ってみるか」

 日下中佐は、大湊司令部へ足を向けて歩いて行った。


 司令部に入った日下が会議室の部屋に入った時、既に四名の男がいて日下を見ると待っていたぞと笑顔で言ってくれて椅子を勧めてくれる。


 不意に懐かしさが込み上げてきて泣きそうになったがそこは気合を入れて涙を止めてばれずにすんだのである。


「有難うございます、有泉大佐」

 日下が椅子に座ったのを確認すると有泉大佐と呼ばれた男性が口を開く。

 その内容はやはりパナマ運河攻撃だった。


「これより我が第一潜水隊は伊13・14・400・401の四隻でパナマ運河ガツーン関門を破壊しに明日0800時に出港する」


 有泉の言葉に各艦長は頷くがその内の一人である伊401艦長『南部伸清』中佐が満足そうな表情で日下達に喋る。


「攻撃機の“晴嵐”も順調にテストが終了して本日の夕方、十機の晴嵐がやってくるから収容して歓迎会をしないといけない」


 南部の言葉に日下はまたしても引っ掛かっていた。

「(パナマ運河攻撃は晴嵐の整備が絶不調だったので延期になりウルシー環礁に変更になったのだが……この世界は少しだけずれている)」


 だが、日下にとってここにいる者達は戦友であるのは間違いないのでやり直しの人生を与えてくれたのなら全力で新たな人生を生きて行こうと誓った。


「さて、それでは解散してそれぞれの艦に戻って明日の準備をしないといけないな。それではこれにて解散だ」


 有泉司令官の締めくくりの言葉で解散となった。

 日下達が建物を出ると各艦の先任将校が迎えに来ていて、日下を見つけるとその先任将校がやってきて敬礼する。


「艦長、乗員全てが集合していますので何かお言葉を御願いします」

 先任将校『高倉順二』少佐が笑顔で日下に言うと日下は頷くと共に伊400の所まで歩いて行った。


「(高倉と言う先任将校は前の時にはいなかったが……まあ、いいか)」

 二人は、伊400が停泊している桟橋に行くと乗員百五十名が綺麗に整列していた。


 整列している人物の中で半数ほど、前の時に一緒だった面々がいたのである。


 日下が臨時に作られた台の上に立つと全員が真剣な目で日下の方を見つめていて改めて自分は再びこの百五十名の命を預かって出撃しないといけないと思うと共に必ず全員、再び本土に帰ってくる事を誓った。


「諸君、日頃の厳しい訓練を重ねて遂に出撃と相成った! 諸君達の半数はこの出撃が初陣になるわけだが私は約束しよう! 全員無事で再び本土の土を踏むことを」


 この言葉に整列していた百五十名の乗員が歓声を上げて一斉に敬礼する。

 日下も敬礼をすると解散命令を出す。


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