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第17話:クーデター参加者の会議

本日、18話・19話同時に投稿します。


三話分、六〇〇〇文字程度ですがお楽しみください。

 時を昭和二十年十月中旬に戻した陸軍省内大会議室内にて……

 阿南陸軍大将は大会議室でクーデターをした同志たちとこれからの事について会議をしていたのである。

 陸軍及び海軍でのクーデター参加者である。


『阿南惟幾』陸軍大臣

『梅津美治郎』陸軍大将

『東条英機』陸軍大将

『荒尾興功』陸軍大佐

『稲葉正夫』陸軍中佐

『井田正孝』陸軍中佐

『大竹雅彦』陸軍中佐(クーデターの立案・作成・実行部隊の指揮)

『椎崎二郎』陸軍中佐

『畑中健二』陸軍少佐

『大西滝次郎』海軍軍令部次長

『宇垣纏』海軍中将

『神重徳』海軍大佐


「間も無く、米軍が南九州に侵攻してくるがかねてから準備されていた“決号”作戦を発動することにする。それに関して皆の意見を聞きたい」


 阿南の言葉に一人の陸軍軍人が立ち上がる。


「では、これより米軍の予想侵攻ルートと我が軍の防衛体制を発表させて頂きます」

 参謀本部所属の『畑中健二』陸軍少佐である。

 畑中は、黒板に南九州の地図を張る。


「米軍は南九州に上陸するとはいえ九州北部までは侵攻しないと断言できます。関東侵攻の為の飛行場の建設及び確保の為でしょう。串木野と都農を結んだラインまで北進すると思います」


 畑中の言葉に阿南も頷く。


「そして上陸地点は三個所で“宮崎海岸”“吹上浜”“志布志湾”で無数の艦砲射撃と数千機の空襲が実施されると思います」


「それで……我が軍の防衛体制は? 海軍の方はどうなのかね?」

 阿南の横に座っている人物が畑中の方に顔を向ける。


「それはこの私が答えさせていただきます、阿南閣下」

 立ちあがったのは大西軍令部次長である。


「今回の作戦目的ですが本土決戦は本土での陸上戦が主体になると考えていますので我が海軍の作戦は敵上陸船団を攻撃目標として本土に襲来する連合国上陸部隊の戦力の低下および減滅の目的です。人事ですが連合艦隊司令長官は、豊田副武大将を任命しています」


 大西の言葉に阿南は不思議そうな表情をして尋ねる。

「小沢さんではないのですか?」


「ええ、この時局に弱気な発言をしたため、予備役に編入させましたが能力は私より上だと思っていますので近いうちに艦隊司令官の地位に戻そうと思っています」


 そう言うと再び話を戻す。


「現在の稼働艦艇ですが重巡洋艦以上の艦船は重油不足及び大破着底で最早沈まぬ砲台として運用予定です。駆逐艦は未だ四十隻、潜水艦も四十隻保有していてこの艦達は稼働可能です。特に潜水艦には“回天”を二隻搭載させていますので一撃必殺の特攻兵器として米軍艦艇に大被害をもたらせます。それとその他には特殊潜航艇・蛟龍・海龍・震洋を総動員します」


 大西の言葉に頷いた阿南は引き続き陸軍の体制について質問する。

 畑中が立ち上がり、説明に入る。


「米軍の上陸に対し我が陸軍は水際作戦で迎え撃つ作戦です」


 畑中の説明では三か所に同時上陸する敵に先ずは海軍と共に特攻を以て上陸部隊の半数を叩きつぶし残存兵力が各海岸に上陸した時、地形を利用して設置された各種砲台からの集中砲火を以て敵に大打撃を与えてそれでも奥地に進む場合は国民による挺身隊で一人一殺を以て敵を全滅させる作戦である。


「その為に動員した結果、二百万の兵力を確保出来ました。地元の強みを生かしてゲリラ戦を展開して敵を殲滅できます。上陸部隊が全滅すればいかなる艦船が無事であろうと本土を占領できるわけではないですから。敵にこの日本侵攻は兵力の無駄使いだと教えてやればいいのです」


 畑中の作戦に阿南以下の者達は成程と頷く。


「うむ、昔から言うではないか! 敵城を攻略する為には、籠城する兵力の三倍は必要だと。米軍は六百万の兵力を用意せねばならない」


 阿南の言葉に畑中が頷く。


「南九州制圧が失敗すれば米軍による関東上陸は諦めると思います。そこで講和を提案して締結すればよろしいのです」


 畑中が喋り終えたときに一人の陸軍軍人が立ち上がる。


「畑中少佐、君の考えは甘いと思いますよ? 米軍は絶対に講和はしないと小官は断言できます! 奴らは我々をイエローモンキーと呼んで軽蔑しています。それに敵の作戦名は“ダウンフォール”という事です、意味は殲滅や全滅という意味で我が日本民族を根絶やしにするまで戦うと」


 彼の言葉に畑中が何か言おうと口を開けかけたとき、阿南が制して彼に言う。


「大竹中佐、貴官はどのように考えているのか? 今回のクーデターの立案計画及び実行は見事であった。それと反乱分子の殆どは始末できた」


 阿南の言葉に大竹は感謝の言葉を述べる。


 『大竹正彦』中佐は、陸軍省軍務局の局長で本土決戦に反対する閣僚達を部下である『畑中健二』少佐達と共に自ら暗殺したのである。


 近衛文麿と東郷外相を一撃で斬殺したのは大竹中佐で鈴木首相と木戸侍従長を始めとする多々の侍従を射殺したのは畑中少佐であった。


 ちなみに米内光政を銃殺したのは畑中と仲が良かった『椎崎二郎』中佐であった。


「今回のクーデターで陛下を始めとする皇族の方々を保護出来ました。これから急いでやる事は、陛下の御心を惑わした奸臣による洗脳を解かねばなりません。米軍は九州侵攻以上の兵力を整えて関東に侵攻してきますので一刻も早く陛下を始めとする皇族の方々を松代大本営に移して我々もそこで指揮を執るべきだと思います」


 大竹の熱意の言葉に阿南達は首を縦に振って頷く。

「大竹中佐、貴官の言葉をそのまま借りるのなら落とし所はいつなのかな?」


 今まで黙っていた海軍出身の『神重徳』海軍大佐が立ちあがり大竹に問う。

 神の言葉に大竹は真剣な表情になって答える。


「敵が泣きを入れて詫びを乞うまでです!」

「そんな事をしていれば日本民族は滅亡するぞ? 恐れ多くも陛下を道連にするおつもりか? 忘れてはいけないがソ連の事も考えるべきだ!」


 神の言葉に大竹は笑みを浮かべて自信たっぷりに答える。


「松岡外相にソ連を通じて講和を締結できるように働きかけて頂いています! 不可侵条約を結んでいますのでそちらに期待しています。最もソ連の呼びかけに応じるような状況になるのは米軍の兵力が壊滅状態にならなければいけません。その為には日本国民一億人が一致団結して総特攻をかけるのです。沖縄で活躍した姫百合部隊みたいな愛国心を持つ青年・少女達を我々が導きお国の御楯としなければなりません」


 大竹の言葉に神はこのクーデターに参加したことを悔いてきたのである。


「(この狂った狂信者達は真に国の為を思っていない! 己の自己欲望を満たすだけにこのような暴挙を起こしたのだ。私も大馬鹿者だな、何とかしないといけないがどうしようもない。いや、一人だけ狂信者達に立ち向かえる方がおられるが重篤状態と聞いているから当てにならない。そうだ、一つだけこいつらから離れる事が出来る手段がある)」


 神は自らが戦地に行くことで彼らから逃れようと思い、阿南に自分の作戦を現地で発揮したいとのことを言うと大西軍令部次長も賛成してくれる。


 実は阿南以下の者達もインテリ風で変人と名高いじんの事を邪魔な存在と思っていたのである。

「では小官はこれより九州に赴任して米軍を撃退して見せます」


 そして会議が終わる頃、東條がふとある人物の事を尋ねる。

「石原莞爾は今、なにをしているのか?」


 石原莞爾の名が出て来たとき、他の出席者達が苦い表情になる。

「確か故郷の山形で療養中だと言うがもう数か月の命だという事だ! だから奴の邪魔は入らないだろう」


 あの石原莞爾が健在で現役なら絶対にクーデターに参加する所か鎮圧する為に自ら出動するであろうと皆は思う。


「念のために始末しますか?」

 大竹の言葉に阿南は拒否する。


「死ぬときぐらいはゆっくりとさせてやろうではないか!」


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