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第16話:気力と体力

「ここは……? 地獄か天国か?」


 石原が呟いた時に背後に誰かの気配がしたので後ろを振り向くと海軍軍人らしき人物が困惑したように周辺を見渡していて彼と目が合った時、驚きの声と共に喋りかけてくる。


「失礼だが貴方は石原莞爾大将ですか?」


 海軍軍人の問いに石原は頷く。


「私は小沢治三郎です、現在は予備役に編入されていますが」


 小沢と聞いて石原は驚いて目を見開く。


「連合艦隊司令長官まで務めた方が予備役とは……! 聞いていますよ、逆賊政権に反抗したのですな? 素晴らしい気概をお持ちだ」


 石原の誉め言葉に小沢は苦笑いをして否定する。


「私は現実を言っただけですよ、大西さんも最早理性を失っています。精神論で圧倒的な米軍を本土決戦で撃退して有利な講和を結ぼうと考えていますが笑止! 日本民族の滅亡だ」


 鬼瓦と呼ばれた小沢が正に鬼も逃げ出すかのような表情をすると石原は笑みを浮かべるとともに小沢に対して親しみを覚える。


「所でここは何処なのでしょうか? 久しぶりに軍服を着てみたいと思い官舎で着替えていた時に白銀色の光に包まれて」


 二人が改めて顔を合わせて何か喋ろうとしたとき、上の方から女性の言葉が聞こえてきたので上を見ると古代服を着た美しい女性が笑みを浮かべながら立っている。

 その姿は、神々しい雰囲気をかも出している。

「私は高天原女王の天照と言います、以後お見知りおきを」


 天照と自己紹介した女性を見て二人は自然と平伏している。

 その二人を笑みを浮かべながら優しい言葉でとんでもない内容を喋ってくる。

 その内容に二人は驚愕する。


「恐れながら……何も権限も無い只の病人にそんな大役を仰せつかれても……」

 石原は冷汗を浮かべながら黙々と喋る。

 小沢も右に同じくという返事をする。

 そんな二人に天照は終始笑みを絶やさずに次の言葉を発する。


「貴方達に私の加護を授けます、石原莞爾よ! 貴方は良識派の陸軍を密かに集めるのです、貴方が認めた人物に対して私の祝福を授けましょう。小沢治三郎よ! 貴方も海軍の良識派を集めるのです! この日本の滅亡を救うためです。間違いなく実施される米軍主体の連合軍による本土上陸が行われます! しかも高千穂と呼ばれた天孫降臨の場所である宮崎の地が」


 天照の言葉に二人は思わず謝るが彼女は首を振りながら答える。


「いえ、お気になさらないように。貴方達は同志を集めて日本を滅亡へと導く者を排除しなさい、これは願いではなく命令です!」


 初めて笑みを引っ込めて声を発する天照に身が引き締まる二人であった。

 その時、石原は初めて自分の身体の調子がいいことを感じる。

 天照がこの未曽有の混乱を全て治めるまで二十代の体力を与えたとの事。

 それは小沢にも言える事だった。


「石原莞爾と小沢治三郎に告げる! いずれ『日下敏夫』という海軍中佐と邂逅するが彼こそ、そなた達が考える日本の未来を担う為の戦力となる人物なので忘れなく」


 そして気が付いた時はそれぞれ元いた場所であった。

 石原は自宅のベッドに上体を起こしたままである。


「……夢ではないか、信じられないが身体の奥深くから力が湧いてくる! ははは、天照様からの命令か! 光栄だ」


 石原はベッドから抜け出すと窓を開ける。

 正に生まれ変わったように感じる。

「よし、直ちに行動だ」

小沢も又、官舎で石原と同じく行動に移す。


♦♦


 昭和二十年十一月一日、遂にダウンフォール作戦が決行されて日本でも決号作戦が発動されて未曽有の戦いの幕が切って落とされた。


 だが、それと同時にスプルアーンス提督の元に凶報が入る。

 それは分離させた艦隊が潰滅したとの事である。


「何!? 敵の潜水艦らしき攻撃で戦艦と空母全てが撃沈されただと!? しかも一発で船体が真二つに折れて轟沈!? 冗談はよしてくれないかね?」


 スプルアーンスの声は海岸に向けての戦艦を始めとする全ての軍艦から放たれる艦砲射撃の音で掻き消される。


「もう一度、艦隊を分離させますか? 今度は対潜装備を充実させた艦船を出撃させるとか?」


 参謀の提案をスプルアーンスは即、却下する。

 各個撃破の恐れを指摘して取り敢えず、このまま上陸軍の援護射撃に専念する事を命令すると共にハワイ方面へ至急、電文を送れと命令する。


 参謀が艦橋から退出した後、スプルアーンスは艦橋の外に出て防空指揮所に上がると無数の砲弾やロケット弾が浜辺に吸い込まれていき爆発する。


「……とにかくこのオリンピック作戦は至急速やかに目的を達せねばならない! 恐らくニミッツ提督はサイパン・テニアン方面から爆撃機の援護を要請する筈」


 そう呟いた時、総旗艦“エンタープライズ”の右舷の方角に海面が盛り上がったと思うと残骸が多数、浮いてきたのである。


 それも数隻もの残骸であった。

「敵の特攻兵器か!」


 それは海中にずっと潜んでいた“海龍”五隻が奇襲攻撃を仕掛けようとしたときに駆逐艦に発見されて爆雷攻撃を受けたのであった。


「見張りを厳とせよ! 目と耳をかっぽじってソナーやレーダーに専念するのだ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 伏龍も出撃しそうですね。吸って吐いてで特訓した若人が潜水服装備して敵艦を底から突く特攻作戦です。 若人が突っ込む特攻は出来れば止めて欲しいですが、歴史の流れでは必須なのでしょうね。 次回か…
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