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第13話:地獄への道へ

 トルーマン大統領の命令を受けた太平洋方面軍司令官『ニミッツ』大将は日本本土決戦に参加している第三艦隊と第五艦隊から一部の戦力をパナマ方面哨戒活動に参加させるために差し出せとハルゼーとスプルアーンスに電文を送る。


 連合軍の中でもパナマ運河全壊の報は大きな話題になっていたが本土決戦の邪魔になるような事は一切、なかったのである。


「まあ、欧州からの援軍が期待できないがこれだけの戦力だから問題ないだろう」


 殆どの将兵達はそう思っていて明日に行われる上陸に備えて英気を養っている所であったがスプルアーンス大将のみ、別の思惑があった。


「本当にパナマ運河は自然の災害で崩壊したのだろうか? だが、今この状況でわざわざパナマ運河を攻撃しに行く余裕はないから日本ではなくて自然災害と見るべきか」


 そう思った時に参謀の『ミーク』少将がパナマ方面に割く艦船の内訳をどうるのかを聞いてきたのでスプルアーンスは、正規空母一隻と護衛空母一隻、戦艦二隻、重巡洋艦四隻、軽巡洋艦四隻、駆逐艦十隻を差し向ける事にする。


 その旨を伝えた時、第五艦隊司令官『ハルゼー』大将から正規空母一隻、護衛空母二隻、戦艦四隻、重巡洋艦二隻、軽巡洋艦四隻、駆逐艦十隻を割くことを言ってくる。


「ほう? 戦艦四隻か、真珠湾の亡霊艦隊か」


 両艦隊から出した戦力は今の日本なら主力機動部隊であるが連合軍艦隊から見ればほんの砂粒程度の戦力で大部分が旧式にあたる艦だったのだ。


 両提督が話し合った結果、真珠湾まで各個艦隊で向かうことが決定されて選ばれた艦は真珠湾へ舵を向ける。


「くそったれめ!! 折角の活躍場所が無くなったじゃないか!!」


 第三艦隊から分離した部隊を率いる『オルデン』少将は戦艦“サウスダコタ”艦橋で不貞腐れていた。


 彼が率いている大型艦船は、正規空母“エセックス”護衛空母“カサブランカ”戦艦“サウスダコタ”“ノースロカイナ”である。


「まあまあ、あの忌々しい神風の脅威がないだけでもましと考えましょう。戦いの恐れが無いのです、のんびりとバカンスのつもりで」


 “サウスダコタ”艦長『カリブ・フレンチ』大佐がコーヒーが満タンに入ったカップを渡すとオルデンドルフ少将は少しだけ怒気を落ち着けるとコーヒーカップに口をつけて一口飲む。


 苦味が効いていて美味いと呟く。

「……そういう風に捉えるか! 一応だが対潜哨戒もきちんと実施するように」


 そう言うとオルデンドルフ少将は風に当たってくるといって防空指揮所に行くために艦橋から出て行く。


 一方、ハルゼー艦隊から抽出された部隊を率いるのはハルゼーから嫌われている将官で彼もまた、清々していたのである。


「ふん、あの猪突猛進しか知らない暴れ馬め! まあ、天災のお陰で偵察と言うバカンスを楽しませてもらうか」


 『ドラン・オムス』少将が現在、大型艦船で率いているのは正規空母“ホーネットⅡ”護衛空母“サンガモン”“トリトン”戦艦“メリーランド”“ウエストヴァージニア”“テネシー”“ミシシッピー”で旗艦を戦艦”ウエストヴァージニア”にしていた。


「真珠湾まで十日か、まあのんびりとするか」


 こうして二個部隊は真珠湾へ向けて航行していく。

 だが、この二個部隊は常に宇宙から監視されていたのである。


 人工衛星“おおわし”から映像が“さがみ”と伊400に送られているのであった。


「ほう、思った通りだな! 奴らは一部だが艦船を分離したか」

 日下が映像モニターを見ながら呟くと高倉先任将校がにやりと笑って勿論、このまま真珠湾まで行かすつもりですかと尋ねる。


「いや、悪いが真珠湾手前で海底散歩に御招待させてあげるつもりだ。但し、大型艦のみだ。全滅させる事はないだろう、駆逐艦や巡洋艦なら十隻二十隻沈めても数日間で完成だろうからな」


 現在、米国全土では戦時体制に移行しており毎日毎日、膨大な弾薬が生産されると共に週刊護衛空母、月間正規空母というハチャメチャな生産であった。


「艦長、“さがみ”から入電です、二個艦隊の正確な座標を送るとの事です」


 無線室から連絡が入ると日下は頷くとCICの徳田少尉に連絡して座標と武器管制装置とリンクするように命令する。


 現在、伊400と“さがみ”はパナマ運河撃破後、別々の行動をしていたのである。


 当初の予定通り、大平洋の孤島で未だ誰にも見つかっていない島で大きさは周囲数キロ程度だが入り江もあり充分に港としての機能もあったのである。


 勿論、彼らの時代であれば人工衛星で易々と見つけられるが昭和二十年時には未だ見つかっていない場所であった。


 人工衛星“おおわし”はリアルタイムで二個艦隊の映像を贈ってくる。


 伊400は深度五十メートルを航行していてそのデータを受け取って処理していたのである。


「五十二式誘導魚雷の最大射程ギリギリまで後、四時間だな」


 スーパーコンピューターが弾き出した計算の結果を見て日下は呟くと徳田少尉にいつでも魚雷発射できるように準備せよと命令する。


「艦内の全乗員に九十分間づつ休憩を取るようにしよう!」

 この処置に対して乗員から喜びの声があがったのは勿論であった。


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