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第12話:トルーマン大統領の憂鬱

「何だと!! パナマ運河が正体不明の敵に攻撃されて全壊だと!?」


 アメリカ合衆国首都ワシントンD・Cホワイトハウス大統領執務室内にてトルーマン大統領の大声が廊下にまで聞こえる叫びだった。


 報告に来た大統領補佐官が大統領が発した言葉を訂正する。

「正体不明の敵ではありません、レーダーにも探知されていなく突然、地響きと共に三つの関門が崩れ落ちたのです」


 補佐官の言葉に大統領は少しだけ落ち着いたが未だ信じられない様子でもっと詳細に報告しろと言うと補佐官は頷いて話を続ける。


 大統領秘書が冷たい水が入ったグラスを大統領の前に置くとそれを一気に飲み干して秘書にお礼を言う。


「補佐官、それでは地震による被害だと言うのかね? それにしてはおかしいのでは? 例え、震源地が運河であったとしても三つ同時に粉々になるのは不可能だ、本当に敵の姿を確認できなかったのだな?」


 トルーマンの念に念をいれた質問に補佐官は間違いありませんと断言する。

 大統領は溜息をつくが直ぐに閣僚を集めてこれからの対策をしなければいけないと判断して直ぐに主要閣僚を招集する命令を出すと共に太平洋方面最高司令部にパナマ運河が攻撃が天災か分からないが全壊した事を伝えるように命令する。


「……明日には南九州へ上陸するオリンピック作戦が発動すると言うのに何という日だ」

 それから一時間後には緊急に招集された面々が椅子に座っていた。


 トルーマンは片付いていない書類を処理する為に少しだけ遅れる事が出席者達に告げられると閣僚達は頷く。


「大統領が来るまで少しでも話を進めておきたいがパナマ運河が全壊したがこれに関する意見をお持ちかな?」


 進行役のスチムソン陸軍長官が問うとキング作戦部長が発言する。


「当初は日本の仕業ではないかと考えたが日本海軍には最早、外洋に出るだけの艦船は皆無なのは断定できる。パナマ運河の全壊は別の何かと考えるのがいいと私は思うが?」


 キング作戦部長の言葉に他の閣僚達も肯く。

 スチムソン長官は進行役なのであえて自分の意見を言わなかったがパナマ運河の件は日本が絡んでいると確信していたのである。


「(日本は、絶対ある筈がない真珠湾を攻撃した。神風という訳の分からない自爆特攻をしてくる民族だ、何かの方法でやったに違いない)」


 スチムソンがそこまで思った時に扉が開いてトルーマン大統領が入室してくる。

 全員が起立して礼をすると大統領が先に座り他の者にも着席の合図をする。


 着席したのを確認した大統領はパナマ運河の件について新たに報告を受けると共に念のために日本本土に向けた艦船の一部をパナマ方面に動かす事を提案する。


「その考えに賛成です、私は」

 スチムソン長官が答えると他の閣僚も次々と賛同する。


「大統領! 先程、ニミッツ提督から連絡がありましたが提督の意見としては艦隊の分離は反対との意見です。もし、それが日本の狙いなら各個撃破の恐れがあると」


 キング作戦部長の言葉に大統領は眉を潜めて少し考えると決心したかのようにニミッツ提督に命令として伝えるように言う。


「空母四隻、戦艦四隻、巡洋艦・駆逐艦合わせて二十隻程をパナマ方面哨戒行動に向かわせるのだ! これ以上あの方面を荒らされては困るからな」


 大統領命令は絶対なのでキング作戦部長は直ちにその旨を真珠湾に送る。


「しかし……七月のインディアナポリスが撃沈されたことは痛いな、原子爆弾二発が海の底に消えたのだからな。そのお陰でソ連が動かなかった」


 大統領は席を立つと窓辺の方に歩きカーテンを開ける。

 のどかな初冬の景色であった。


「我々がオリンピック作戦に続いてコロネット作戦を実施する時には漁夫の利を兼ねて恐らく北海道に上陸するつもりだと思います。それに関してはやむを得ないかもしれませんが?」


 スチムソン長官の言葉に大統領は肯くと皆の方に視線を向けて答える。


「最早、米国単独での占領統治は不可能になった! 日本本土を占領した暁には当初の予定通りに米国・英国・中国・ソ連・フランスによる統治を実施する事にする」


 大統領の苦渋な判断に閣僚は無言ながら頷くと起立して大統領の意見に賛成する事になった。


「マッカーサー提督は必ず心底、お怒りになりますな! ソ連大嫌いな人物ですから」


 スチムソンの言葉に大統領が肯くがそこは我慢してもらわないといけないと言った時に別の秘書官が慌てた様子で執務室にはいって来た。


「一大事です! 先のパナマ運河の崩壊によって我が軍の輸送船が沈没して原子爆弾三発が湖底深くに……」


 この知らせに他の閣僚達が驚愕した表情で大統領の方を向くと頭を抱えたトルーマンが椅子に座って暫く無言状態が続く。


「幸先が悪すぎるぞ? 念のためにサイパン方面に展開する戦略爆撃隊司令官『カーチス・ルメイ』大将に出撃準備を命じておきたまえ! 戦況次第では全力出撃になるであろうからな」


 その後、諸々の議題を終えた閣僚達は退室していくが大統領は一人で物思いにふけっていた。


「戦力的には充分だが、何か不安な要素があるのか? すっきりしない」


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