第102話:降伏か死か?
「何と!? 米海軍を殲滅して海上には我が軍の海軍しか存在しないのだな?」
松代大本営地下司令部にて『石原莞爾』が大声で叫ぶとTVモニターに映っている有泉は頷いて“おおわし”が撮影した記録映像を流すと大本営にいた全員が絶句する。
「……あの光線は一体、何か? SFの本を読んでいる気分だが」
「俺達の時代でもあんな指向性兵器は存在していないぞ?」
「何でもいいさ、これで海上艦隊はいなくなったのだ、後は俺達の出番だな、そして最終判断はアイゼンハワー元帥だが」
「玉砕覚悟で突撃してくるか降伏するかどちらかな?」
「どちらにしろ、彼らには選択肢が二つしかない! 早速、帝都を占領している米軍にビラを配り空中ホログラムという代物でこの映像を流そうと思う」
石原の言葉に幹部連中は全員、頷くと石原は引き続き全将官に命令する。
「大窪陸将補、陸上自衛隊の全兵力を投入して帝都のいる米軍を包囲攻撃できるように配置してくれないか?」
大窪は力強く頷いて直ちに全陸上自衛隊の兵力を動員する為に“おおわし”を通じて命令が発せられる。
その後、樋口季一郎に最新鋭戦車師団を陸上自衛隊の包囲態勢の弱い場所に配置を実施せよとの命令を出す。
樋口は既にパットン軍団を撃破した池田戦車大隊に自分の権限範囲内で配備命令を出したことをいう。
満足そうに頷いた石原は、引き続いて源田中将に日本全土に配備している稼働可能機全機に爆装させて待機させるように命令する。
「空からの攻撃は充分にいける。ちなみに……伊400からの連絡が入ったのだが晴嵐と言う艦載機がいつでも投入できると言っているが……どういう意味だろうか?」
樋口季一郎の不思議そうな言葉に有泉は困ったような表情を見せて今までの事を説明すると一部の者達以外は特に反応が無かったが陸上自衛隊関係の人物たちは絶句する。
「ドイツ空軍の歩く不死身の男、魔王閣下が……」
石原や小沢もほうという反応をしたがこちらにも彼に負けない撃墜王がわんさかいるぞと言うと皆が頷く。
「まあ、空軍の攻撃が実施されない事を祈りましょう! 地上にいる四十万将兵を皆殺しにしないといけないのですから」
♦♦
石原達による会議が終了した数時間後、東京二十三区を占領した米軍の頭上に数千万枚のビラが降り注いでくる。
そのビラには英語で書かれていて直ぐにアイゼンハワー元帥の手に渡りそれをじっくり読むと信じられない表情を見せる。
「ば、馬鹿な……既に我が海軍はこの世から一隻残らず撃沈されて百万将兵が海の底に沈んだという事だと!?」
手に持ったビラを握りつぶすと横にいた参謀が話す。
「元帥閣下、これは日本による謀略です!」
「そんなのは君に言われなくても分かっている! 明日、全軍で長野県松代へ進軍開始する! 最終目標は松代大本営だ、そこに退避している皇族を捕らえるか命を取るか未だ分からないがそこを制圧してこの本土決戦の終わりに繋がる」
アイゼンハワーがそこまで言った時に指令部のテントに兵士が飛び込んできて空中に映像が流れていますと血相を変えながら入ってくる。
司令部の皆が半信半疑で外に出ると帝都上空に巨大なスクリーンが投影されていてその映像も鮮明に映っている。
その映像に日本軍人が映っていて何かを喋ろうとしているのに感ずく。
「帝都に駐留する米軍の方々、お初にお目にかかります。私は日本国総理大臣兼陸軍大臣『石原莞爾』と言います。アイゼンハワー元帥、貴方の人間性及び戦略眼等の能力を私は大変、敬服しています。貴方方が置かれている状況ですが一見、帝都全体を占領していると思うでしょうがそれは真っ赤な間違いです。貴方達は袋の中の鼠同様で我々が貴方達の相殺を握っているのです。信じられないかもしれませんが今から見せる映像を参考にしてください。つい、先日まで海上に存在していた米国艦隊が全滅するまでの映像です」
そう言うとその空中に映し出されているスクリーンに鮮明な映像が流れる。
その映像には伊400の武御雷神の矛の破壊力や一発で真っ二つにする魚雷攻撃で一瞬で無数の艦船が撃沈される映像であった。
だが、彼らが絶句したのはやはり伊400の甲板に設置されている武御雷神の矛の発射までの映像であった。
伊400から放たれた光が艦船を呑み込むと同時に破片一つ残さず消滅させる様子であった。
それと同時に陸上自衛隊の圧倒的な破壊力の映像にアイゼンハワーを始めとする幹部は魂を抜かれた表情になる。
やはり彼らは陸軍一筋で生きて来たので常識外れの破壊力を誇る兵器をまじまじと見せつけられて放心状態になっていた。
「……パットンもあの攻撃なら……敗北はやむを得なかったか」
一連の映像が十分ほど流れてその映像は終わるがそれと同時に再び石原が現れてこれは映画でもない本物の映像で本時刻から二時間の猶予を与えるので答えを出して頂きたいという。
「全面降伏及び全武装解除か一兵残らず玉砕死するかどうかよくよくお考え下さい」
そう言うと石原は映像を終えると同時に空中に映し出されたスクリーンも消える




