閑話③
この閑話の最後に出てくる内容ですが次作の長編物語の主役として考えています。
まあ、いまの段階では詳細な時代設定も考えていませんが。
西暦二〇××年二月二日、ここは朝霧コーポレーション本社七十階会長室。
朝霧グループ総勢十万人規模を誇る世界的な巨大会社である。
その世界的な大企業の総帥たる人物が『朝霧翁』と呼ばれる人物で御年不明な人物だが想像を絶するありとあらゆる分野の知識を得ていて人智を超えている。
その会長である朝霧は、定例のオンライン朝礼会議を終えた後、ゆっくりと椅子から立ちあがり窓の方へ歩いていき外を眺める。
眼下には呉軍港が広がっていて豆粒ほどの海上自衛隊の護衛艦多数が停泊しているのを見る。
「……ふむ、今日も何も変わらない日だがそれがいい、平和であることが何よりなのだが……な」
朝霧翁がTVを点けると現在、地球上で起きている紛争が放送されていた。
その内容は、ロシアがウクライナを始めとして最近、NATO(北大西洋条約機構)に加盟したフィンランドに攻め込んで事実上の第三次世界大戦前夜の様相が起こっていた。
「ふん、人類は何も変わっていないな……。人類誕生から戦争戦争、侵略侵略が幾度となく繰り返していた愚かな事」
朝霧はTVを消すと再び椅子に座ると大きく息を吐いて溜息をつく。
その時、入室希望を示す風鈴がチリンチリンと清らかな音を出すと朝霧はモニターホーンを押すと秘書の女性が映し出されて来訪者が来たことを報告する。
「朝霧エネルギープラントの『生瀬方信』主任がお見えです」
秘書からの報告を受けた朝霧は急に眼を輝かすと急いで案内してくれと言うと秘書は綺麗なお辞儀をして離れていく。
数分後、会長室の扉がノックされて一人の三十代の青年が入ってくる。
「早朝早く押しかけて申し訳ありません! しかしこの知らせをいち早く会長にお知らせしたく飛んできました」
生瀬の言葉に朝霧はうんうんと頷くと早速、内容を聞きたいと言うと生瀬は朝霧に勧められた椅子に座ると説明する。
「この度、我がエネルギープラント部門は遂に“フリーエネルギー”の生成と“永久機関”の開発に成功しました!!」
「おお!! 遂に完成したのか!! 人類の空極の夢を!」
「はい、フリーエネルギーは、地球全体の磁場を利用し電気振動と共鳴させることで空間からエネルギーを無限に得られる仕組みで資源(燃料)を全く使わない地球のパワーを利用した究極のエネルギーです。それを併用して永久機関も完成させました」
「……素晴らしい! よくぞここまで頑張ってくれたな、プロジェクトの全員に特別ボーナスを支給しようではないか! 一人につき二億円を本日中に振り込もう」
「有難うございます、皆も大いに喜ぶでしょう! ここ八年間、殆ど家に帰っていなく家族の絆をも犠牲にした結果ですので遠慮なく会長の褒美を受け取ります」
「フフフ、人類史上の夢の結果を出した結果だよ? 頑張った者にはそれ相応の報酬を与えるのは当たり前ではないか? まあ、その金で細君の機嫌をとればいいと思う」
「はい、会長の懐の広さの前には技術漏洩と言う言葉は一切、ありませんからね。他の企業のトップには真似できないでしょう」
「君も世辞がうまくなったな? ははは、それはともかく永久機関とフリーエネルギーを実際に展開するにはどれぐらいの時間がかかるのか? 私の構想だが最新鋭の軍艦を建造しようと思っているのだがその艦にのせたい」
朝霧の言葉をあらかじめ予想していた生瀬は実際に機関として搭載できるのは来年一月になることを言うと朝霧は満足そうに頷く。
「そうか、それなら朝霧造船所に発注をかけておくか。生瀬君を始めとする五十名には感謝してもしきれない、これからもよろしく頼むよ」
朝霧の言葉に生瀬は姿勢を正して日本式の見事なお辞儀をするとこれからも朝霧コーポレーションに忠誠を誓いますといい、会長室を出て行く。
それを見送った朝霧は先程とは違う機嫌が良い笑顔になり窓の方へ行き景色を眺めると目を瞑り呟く。
「彼達が後二年後に来れば……核融合炉ではなくフリーエネルギーと永久機関を利用した動力を提供できたのだがな……」
朝霧は五年前に別世界から来た旧日本海軍特型潜水艦“伊400”が『日下敏夫』艦長以下百五十名がこの世界に来たことを思い出す。
荷電粒子砲を搭載して防御機能が人知を超えるレベルに改造して元の世界に送り込んだことを。
「……吉田君は元気にやっているのであろうか? 日下艦長も……」
伊400が元の世界に戻る時に半数の乗員がこの世界に残り現在では各グループ企業で大活躍をしていて中には専務まで昇進した者もいたのである。
朝霧は再び椅子に座り机の上に設置されているスーパーコンピューターを立ち上げると極秘と書かれたフォルダーを開く。
そこにはこれから建造する新型艦船の詳細なスペックが記されていたのである。
「……旧日本海軍陽炎型駆逐艦を似せた“雪風”か、ふふ……完成が楽しみだな。人選もしなければいけないが……艦長は彼しかいないな」
そう呟くと横にある乗員の名前が付いたフォルダーを開くと候補に選んでいる五名の人物が出る。
その中の一人の名前をクリックするとその人物の詳細なデータがズラズラとスクロールしていく。
「艦長は……『富嶽武雄』、民間企業のしがない警備員だが……」
数分後、朝霧はフォルダーを閉じるとスーパーコンピューターの電源を切る。
そして足取り軽く会長室を出て行った……。
次作は水上艦です、機関は永久機関とフリーエネルギーです。
どんな性能になるのでしょうか?
それと素晴らしい事を成し遂げた人物には高額な褒章を与えるのは当たり前だと思います。
朝霧グループの歴史の中で技術漏洩や技術を売った事は一切、皆無です




