春
静かな森の
静かな湖よ
湖に朧月が反射して
緩やかに風が立つ
水面に写る月は
湖に御礼を告げる
疲れた体を癒すみたいに
風に遊ばれ
波が踊り始める
ぼけた二つの月の
ぼけ方は違う
されど同じ力で
辺りを照らす
風に遊ばれ、調子に乗るのは
波だけじゃない
森が音を立てて
恥ずかしそうにはしゃぎ始める
しゃかしゃか、しゃかしゃか
木と木を
葉と葉を
枝と枝を
ぶつけて楽しんでいる
左右にゆったりと揺れながら
春の風を楽しむように
新たな誕生を嬉しむように
光り輝く黄土色
輪郭を持たず
闇にひっそりと現れる
よく頑張ったと言うように
背中をさすってくれる
私たちも頑張っている
命を続けていくために
だからあなたも頑張って
命を回していくために
静かな森の
静かな湖よ
はしゃぎ疲れたものたちは
もう眠りにつく頃
朧月が闇から帰るとき
次の命が始まる
内に隠す命を
全力を持って知らしめる
花は咲き誇り
動物たちは辺りを駆け、
楽しみ、吠える
命を虫たちが運び
木々はそれを待っている
何をしようか
何が出来ようか
命を目の前に
我々は貰ってばかりいる
懸命の昼に
生命は叫び
感謝の夜に
生命ははしゃぐ
人はため息を漏らす
それを月が励まし
太陽は道を示す
これ以上何を望もうか
何を出来ようか
今日とて森は騒ぎ始める
終わり