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資産家令嬢に愛と執念の起死回生を  作者: 渡守うた
四章 ジョンソン男爵家の三男坊
25/44

25、ジョン・ジョンソン④

 

 普段は軽薄なジョンから出た本音だった。ジョンは離れて見守るビビアンをちらりと見遣り、言いにくそうに口を尖らせた。


「デューイはさぁ~……デューイには結局ビビアン嬢が居るじゃん」

「わたし?」


 ビビアンは急に話題に上がり戸惑う。ジョンは無造作に頭を掻きむしる。


「デューイは嫡男で将来領地を継ぐだろ? 子供の頃からビビアン嬢っていう婚約者が居てさ。オレ達の周りでデューイみたいに早くから婚約者が居る奴はいないよな」


 デューイは言われるまま頷く。


「お前さ、人生に不安持ったことないだろ」


 ジョンははっきりと言い切った。思ってもみなかった言葉にデューイもビビアンも目を丸くする。


「いや、違うな。なんて言うのかな、領主になることに納得してるじゃん」


 ジョンはデューイを見据えて続けた。


「でもオレは違う。三男で家も継げないし、どうやって生きていくか身の振り方を考えなきゃいけないだろ。結婚相手も自分で探さなきゃいけない」


 確かに、デューイとビビアンの婚約が決まったのは貴族の中でも早い方だった。両家が昔から付き合いがあり、他家に割り込まれないうちに早々に手を打ったからだ。

 それは互いの家にとって利益があるからではあるが、デューイがあらかじめ全て用意されていたのは事実だった。


「そういう奴の焦りとか不安はデューイには一生分からないよ」


 自分の特殊性を初めて指摘され、デューイはぐぅと黙り込んだ。もしかしたら今までずっと、自分はジョンに対して無神経だったかもしれない。そう思うと言葉が出なかった。

 焦れたのはビビアンである。二人の傍へ大股で近づくと、仁王立ちで見下ろす。

 そしてくすぶっている男たちへ声を張り上げた。


「ああもう、なんて面倒くさい殿方たちなの?!」


 ビビアンは突然の発言に呆けている男性たちを見つめる。


「わたし、デューイ様のお気持ちも知ってるし、ジョン様のお気持ちも分かるわ。だからどちらが正しいだとか決められないわ。大事なのは、その、」




 ──確かに、私は愚かにもお嬢様の言葉を信じないかもしれません。でも、私に信じさせるのを諦めないでくださいませ

 ──どうか、私にお嬢様を理解させてくださいませ


 過去に『戻って』きて、強盗事件を終えた日。マリーがビビアンに言ってくれたように伝えたい。ビビアンは必死に言葉を紡いだ。



「……理解できなくてもそれでも相手を理解したいって、寄り添いたいって思うことでしょう?」




 デューイは思わず瞬きをする。ジョンはまだ、もごもごと反論する。


「で、でも」

「なあに?! そんなに同じ立場の人が良いなら男爵家の三男同士、嫡男同士だけでお友達を作ったらいいじゃない!」

「ビビアン嬢だって貴族の女友達いねぇじゃん!」

「まあッ!? どうして正論をおっしゃるのよ!」


 ずばり言い返され、ビビアンは歯噛みする。『前回』の経験から見て、喧嘩別れしたらお互いに目も当てられない程落ち込むくせに、なんて物分かりの悪い人たちだろう。

 ビビアンは最初二人のために声を上げていたが、段々と自分の中で怒りが育つのを感じた。


「なによ、こんなことで仲違いするなら最初から友達にならなければ良かったじゃありませんか。ジョン様が何かにつけてデューイ様を連れて行くから、わたしは夜会だって寂しかったのに!」

「ゔっ」


 ジョンは鈍い声を上げた。思い当たる節があったためだ。


「デューイ様だって、簡単にジョン様を諦められるなら、最初からジョン様よりわたしを優先してくだされば良かったのに! デューイ様が居ない時に、わたしがどんなことを言われているか想像したことがあって?!」

「うう……」


 デューイが呻く。本当に痛い所を突かれた。

 ビビアンはそのまましゃがみ込んで顔を伏せた。


 デューイはジョンに視線をやる。ジョンも強張った顔で見返す。お互い無言で頷いた。


「えっと、ビビアン、ごめんな」

「うんうん、オレたちが悪かったよ~~?」


 デューイとジョンはビビアンをなだめる。ビビアンは顔を伏せたまま返す。


「仲直りします?」


 仲直りと言う響きがあまりにも子供っぽく、二人は顔が引き攣った。引き攣ったまま空元気な声を出す。


「なかなおり……、するする~! なぁデューイ」

「あ、ああ」


 二人の言葉にビビアンはゆるゆると顔を上げる。

 その口角はいたずらが成功したかのように、にんまりと上がっていた。


「おい──」

 

 気付いたデューイが声を上げようとしたが、後ろから掛けられた声に遮られた。



「まあまあ、こんな所で楽しそうにどうしたの?」


 朗らかな声の主はデューイの母、アークライト夫人だった。庭先で座り込んでいる息子たちに首を傾げる。


「あらまあビビアンちゃんにジョンくんまで。どうせお庭に居るならお茶にしましょう?」






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