お嬢様に友達が出来たんですね―セレナ付きのメイド視点
タイトルにある通り、アイリス視点じゃないです。
色鮮やかな花が咲き誇る中、二人の少女はお互いに微笑み合い手を握り合っていた。その様はまるで天使が祝福しているかのようであり、見る者全てを癒すだろう―――
表現するとしたらこんな感じになるんでしょうかね。まあ、実態はもう少しわらえ…失礼、興味深いものですけれど。
あ、こんにちは。通りすがりの者です。ああ、怪しい人物ではないですよ?なんてったって、あそこにいらっしゃるお嬢様―セレナ様お付きのメイドですから。もし本当に通りすがりだったとしても、公爵家の庭に通りすがりとかどんな状況だよってそれはそれで面白いですけど。
そうそう、セレナ様と同じ公爵令嬢であるアイリス様のお話でしたね。お二人とも幼いのにその顔立ちは美しいというしかないですし、まあそんな方々が控えめに微笑まれていたら誰でも心の中が穏やかになりますよね。大人の女性ですら、ふんわりと笑うのに苦労しているというのにあのお二方ときたら見る限り、なんとなくでその方法を習得しているようです。
同じ女性でも私がああやって微笑むのとは周囲の印象が大違いですよ。
同僚なんか「悩みあるなら聞くよ」とか、「頼むから法を犯さないでくれ…」とか涙目で言ってくるんです。その時もむっとしましたが、今思い出しても失礼なことしか言われてないですね。おお、神よ…なぜなのですか…。
まあ茶番はおいておきましょう。脱線しすぎましたね。
さてさて、本題ですけどセレナ様をよく知る人物でなおかつ表情を読み取るのが上手い人はこの状況凄くわら…おもし…ニッコリするんですよ。
まずセレナ様ですが、微笑んではいるんですけど口角が若干上がっている程度で世間一般の微笑みとはだいぶ遠いものです。かろうじて細められた目で、ああ微笑んでるのねと分かる具合です。本人は相当喜んでいますよ、多分やったー!ぐらいの勢いはあるんじゃないかと。言ったら怒られそうですけど。
対するアイリスお嬢様ですが、目が泳いでますねー。ほんの少しですけど、注意深く見たらよく分かりますよ。
「いや、分からないでしょ。ここからどれだけ距離あると思ってるの」
脳内で同僚の声が聞こえた気がしましたが、無視するとしましょう。
ちなみに距離は我が公爵家の廊下半分ほどです。具体的に言うと、同僚なら本が落ちていても見えない程度の距離です。私は見えますけどね。ご子息達の悪戯、逃走を悉く防いできたので視力はばっちりです。
と、また脱線してしまいました。
アイリス様は…ああ、驚きと不安ですね。その様子から察するに今まであまり同年代と関わってこなかったのだと見受けられます。もしや、お友達が初めてなのでは…?まあ、それはセレナ様も同じですけど。
なにせ静かではない、所謂ひたすらお喋りする子が苦手でその子がどんなに友達になろうと言ってもならないの一刀両断ですっぱ抜く方ですから。そういう方を相手にすると元から動かない表情筋に加えて目まで光を失っていきます。初めて見たときは思わず俯いてしましました。バレないように必死に。
なんにせよ、お二人とも嫌がる素振りは見せておりませんし、程度の違いがあるとはいえど喜んでいるのは確実でしょうから。見る人が見ればその様子と、本人の思ってることの温度差が違い過ぎて笑えるのは確実ですが。
いいですねぇ、ご子息だとこんなにほんわかいきませんから。喧嘩からの親友になりましたという、驚きの展開がありますし。
それにしても、と生垣の隙間からお嬢様方の様子を見て思うのですがこの光景をセレナ様を知っている人が見たらどうなるんでしょうか。喜ぶのは間違いないですね。
いや、セレナ様の普段の表情筋の仕事放棄っぷりを見ていたら、恐らく喜び通り越して咽び泣くでしょうね。ええ、同僚とかやりそうです。
そもそもセレナ様はなんであんなに表情が変わらないんでしょうか。
猫かぶりではなさそうですし、思い当たるとしたらご子息であるお兄様方のあれこれに巻き込まれていたからですかね。先ほど言った通り、セレナ様のお兄様方は授業からの逃走はもちろんのこと、使用人に悪戯を仕掛けるなどなどたくさんやっています。そして、可愛がってるつもりなんでしょうけどその数々の行動にセレナ様を連れて行くんです。セレナ様はそれこそ首根っこを掴まれた猫のように、死んだ目で連れ回されています。救出は同僚が毎回してくれていますよ。
私ですか?私はそれをニコニコ見ていますよ。
おや、お二人がどこかに行くようですね。
「なんで、なんで時間になったときに声をかけなかったの!」
目の間では涙目で叫んで崩れ落ちる同僚が一人。
私がお二人の行動を見守るだけでなにもしなかったことに対して怒っているようです。その様子は怒りというよりも哀れの方があってる気がしますが、言ったらそれこそ怒られるので余計なことは言わないようにしておきましょう。
「セレナ様が珍しく楽しげにされていたから、邪魔するのは悪いかと思って」
「…本音は?」
「うわーなんか面白そう」
「だよね、知ってた!」
今回投稿できるのはこれだけです…すみません。
今まで頑張って普通のテンションで書いてきたんですけど、作者の通常はこちらなのでどうやってシリアスに持っていけるのかが今後の課題ですかね。
読んでくださった方、ありがとうございます。
それでは、また。