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公爵家の娘【長編版】  作者: なヲ
はじまりはじまり 六歳編
15/35

お茶会があるそうです


 昨日いきなりお茶会のことを聞き、正直かなり不安だった。

 作法を習ってすぐだから、あれはどうだっけとか寝ようにも寝れなくてお茶会のことが書いてあるページを眠くなるまで読んでいた。

 ちなみに、参加する子のリストは先に渡されたけど誰とも会ったことがないので見ても分からなかった。ただ自分と同い年ぐらいの子たちが来ることはわかった。


 同い年ぐらいの子に会えるというわくわくと、作法が大丈夫かの不安がぐちゃぐちゃになって馬車といっしょにわたしの心が揺れている。いつもよりもずっとキレイな服を着てるのもあって落ち着かない。


 わたしがよく着ているのは飾りの少ない暗い色の服で、今着ているのはふわふわしていて明るい色の服。こんな服が買われていたのは知らなかったし、朝起きたら用意されていて、初めて見るものだからびっくりした。かわいいとは思うんだけど、鏡を見たときになんだか違う…と首を捻ってしまった。侍女はよくお似合いですよと言っていたけど、おせじというものかもしれない。

そっとシワにならないように背もたれに寄りかかって、服がよく見えるようにしてみる。わたしの髪と合うように選ばれたのか、フリルがついている薄い黄色の服は白色の靴とよく似合っていたて、ふとこの間読んだ女の子が恋する小説を思い出した。確かその女の子は白色のワンピースを着て喜んでいた。思えばわたしが読んだ本のほとんどで女の子は明るい色の服を着ていた気がする。

そのことに心がなぜかもやっとしたけど、なぜかは分からなかった。


 「お嬢様、着きました」


 従者の声に背を伸ばす。ぼんやりと考えていたらさっきより楽になったかもしれない。




 お茶会の場所ではたくさんの子がいて楽しそうだ。わたしもみんなとおしゃべりしている…わけではなく、その様子を端っこのテーブルについて眺めている。

隣の席に座っている子はいないし、近くの席にも誰も座っていない。作法はあってるはずだけど、なぜか誰も来ない。もっと言うとお茶会が始まってから誰とも話していない。

 楽しげな女の子達を見ていたら、向こうの席で数人と話している子と目が合った。あ、と思ったらすぐに目を逸らされた。な、なぜ……


 テーブルの上にあった焼き菓子を食べながら考えてみたけど、なぜかは全く分からない。ただ、ここにいても仕方ないことは分かった。暇だったので食べているお菓子はこれで三個目でさすがにお腹がいっぱいになってくる。ちょっと周りを歩こうかな。

 明るい色がたくさんある会場を離れてわたしは庭の奥に入った。



 名前もしらない花をいくつも通りすぎて会場とは反対に進んでいく。

 歩いてわかったのは、この庭が公爵邸とほとんど同じ大きさであることと公爵邸よりも花の種類がたくさんあること。あと、どこを見ても飽きないこと。

 同じ大きさと言ってもわたしは公爵邸の庭を全部歩いたことはないので、なんとなくだけど。一度、全部見ようとしたら途中で自分がどこにいるのかわからなくなって、あっちこっち歩き回ってるうちに見慣れた場所に出た。だいぶ歩いていたとは思うけど、てきとうになってしまったのでどこまで見たのか覚えていなかった。


 他に会場を抜け出した子はいないらしく、右に行ったり左に行ったりふらふらしても誰とも会わない。せっかくこんな庭があるんだから、皆も来ればいいのにと思うけどあの子たちはおしゃべりの方が楽しいのだろう。


 「だれ?」


 右に曲がって木陰があるところに出たら女の子がいた。どうやら、わたし以外にもいたらしい。

 びっくりして固まっていると、声をかけてきた女の子はすっとわたしの目の前に来ていた。二人分はあった距離がいつの間にか縮まっていてすごく近い。


 「…アイリス」

 「わたし、セレナ、アイリスって呼んでいい?」

 「…いいよ」


 体がよろけたので一歩下がりながらさっきの質問に答えたら女の子も名前を言ってくれた。セレナ…今日の参加者のリストで見なかった気がする。なら参加者の姉妹かと思ったけど、わたしと同い年ぐらいだから多分違う。今回のお茶会に呼ばれる子だけど、参加していない。誰なんだろうかという疑問がぐるぐるしていてわたしは彼女から差し出された手に気付いてなかった。


 「よろしくね、アイリス」


 そう言ってセレナはわたしの手を取ってにっこり笑う。

 急に話しかけられたことと、手を握られたことの二つの驚きが大きすぎてわたしはただ小さな声で返事するしかなかった。


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