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公爵家の娘【長編版】  作者: なヲ
はじまりはじまり 六歳編
13/35

ひみつきち


 ぱたん、と本を閉じる。


 お父様の部屋から帰って、一時間ぐらいでわたしは読みかけの本を読み終えた。今回の本はとある国の王子とその仲間が色々な国を旅する話だった。途中で出会った女の子を好きになったり、迷子になったりしながら彼らは歩いていた。


 そうだ、庭に行こう。


 本を読んだあとになぜかワクワクして、外に行きたくなった。さっきお父様の部屋でたいくつしていたからかもしれない。どうしようもなく、冒険をしてみたかった。

 ベッドからぴょんと飛び降りて、ちょっと迷ったあとその本の次の巻を持っていくことにした。冒険にはなにか大事なものを一つ持っていくのがいいって旅人が言ってた。


 わたしはこの旅人が好きだ。いつもからかってくるけど、明るくて物知りで助けてくれる彼は一番わたしをワクワクさせてくれる。

 旅人は最初からいたわけじゃなくて、王子たちが迷子になったときにひょっこり出てきた人だ。こんなところで迷う奴は初めてだよ、と笑いながら道を案内してくれて旅に慣れてない王子たちのことをなんやかんや言いつつも手助けしてくれる、ちょっと不思議な人だ。わたしは彼の言ってることがあんまり分かんないけど、話し方や性格が好きなんだ。

 アニーに前その話をしたら、お嬢様がおんなたらし…?とかいう人に捕まらないか心配ですと言われた。


 廊下を歩いていたら女の人の声が聞こえた。

 とぎれとぎれでよく聞こえないけど、悲しい声がする。声のする方をみたら、お母様がいる部屋だった。お家でパーティーがあるときぐらいにしか会わないから顔がぼんやりとしか思い出せないけど。

 ま、いっか。


 階段をおりて、玄関からでて少し歩いたところに大きな庭がある。庭は迷路になってて冒険するのにぴったりな場所だった。

 迷っても数十分ぐらいしたらちゃんと出れるようにしてありますよ、といつかの庭師のお兄さんは言ってた。


 この迷路に入るのはこれで三回目。

 一回目は飛んでいった帽子を取ってすぐ戻ったし、二回目は時間が少なくてとちゅうで引き返した。実は子供しか入れない場所があるんですよねというお兄さんの言葉を思い出し、わたしはうきうきしながら迷路に入った。

 時刻はお昼過ぎで今日の午後は予定がなにもないのでやれるだけやれるのだ。




 迷路に入ってから少し、わたしは迷っていた。

 あれ、ここ同じ?あ、もしかしてちがうの?あれ?え?となっていたらよく分からない場所にたどり着いた。

 目の前は行き止まりで、来た道を戻るしかない。なかなかうまくいかないな、としょんぼりしていたとき右の垣根が気になった。他の部分は濃い緑なのに、なんとなくここだけ薄いというか色がちがうように見えた。なんだろ。

 手をそーっと近づけて押してみると、なんと動いた。もしかしてここがその場所なのかも。やった、見つけた!そう思ってわたしはそこを潜り抜けた。


 「きれい…」


 顔を上げると、そこにはたくさんの植物があって、色もたくさんあって凄くきれいだった。その場所は大きくないけど、わたしがのんびりするには十分な大きさだった。木陰のところにはテーブルと椅子が置いてあって本を読むのにぴったりな場所だった。


 「ここを、わたしのひみつきちとする!」


 嬉しくってそんな言葉を叫んだ。

 大人が入れなくて子供がワクワクする場所をひみつきちと言うのも、庭師のお兄さんが教えてくれた。子供しか入れない小さな出入り口と、ひっそりとした雰囲気。明日から暇なときはここに来よう。本を読んで、お昼寝して、お花を見るんだ。

 まだなにもしてないけど、そんなことを考えてその場でぴょんぴょんジャンプした。うまく言えないけどすごい嬉しかった。


 持ってきた本を広げてわたしは今までにないほどワクワクしながら本を読んだ。


 「新しい場所は怖いけど、それと同じ分だけ楽しいことがあるんじゃないかな」


 いつもはちょっと分かりにくかった旅人の言葉もすんなり分かったわたしは行きよりも楽しそうに帰った。

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